キヤノンEOS Rシステムの世界

高梨遼平|ボケ描写を自在にコントロールできるRFマクロレンズ

今年4月にキヤノンから発表された中望遠単焦点レンズ RF100mm F2.8 L MACRO IS USM。最大1.4倍の撮影倍率によって表現領域を拡大し、SAコントロールリングによって、ユーザーの好みに合わせてボケ描写のコントロールが可能だ。さらにR5装着時は、最大8.0段の手ブレ補正効果を発揮する。7月15日の発売に先駆けて、高梨遼平氏にRFマクロレンズの高画質、機能を試してもらった。

eosr_20210728_01.jpg 水晶玉+炭酸 水槽に水晶玉を置き、炭酸水を入れて撮影。手前側は光を反射するブルーのサテンの布を配置している。


eosr_20210728_02.jpg 猫+鏡 猫の周囲に薄いミラーを設置し、歪みをつけて撮影。


──RF100mm F2.8 L MACRO IS USMで撮り下ろしていただきました。

高梨 マクロレンズレンズならではの表現を意識して撮影しました。マクロレンズの面白さの一つは、肉眼では見られない世界を得られることだと思います。

水晶玉と炭酸水、ろうそく立てとシャボン玉など異色な物を組み合わせることで生まれる化学反応が、RF100mm F2.8 L MACRO IS USMを使うことで、良い違和感と共に迫力のある写真へと昇華されました。

eosr_20210728_03.jpgeosr_20210728_07.jpgろうそく立て+シャボン玉 爪楊枝ほどのサイズのろうそく立てにシャボン玉をくっつけて撮影している。








──RF100mm F2.8 L MACRO IS USMは、最大撮影倍率1.4倍です。水晶玉がSF映画の宇宙船に見えたり、ろうそく立てが異星の地のように見えますね。

高梨 実際は小さなモチーフを被写体にしているので、セットの規模も狭いのですが、レンズを通すと壮大なスケールの宇宙空間のように見えて、面白かったです。水中の泡の立体感や、ろうそく立ての灰などの質感もよく出ている。解像力が非常に高いレンズだと思います。

僕は仕事でもR5とRFレンズを使っていて、普段からRシステムの進化を実感しているのですが、このRF100mm F2.8 L MACRO IS USMは進化の方向が特に面白い。表現の幅が広がるレンズだと感じます。レンズって、それぞれ個性やクセがあって、シャープに撮れる絞り値が違います。

僕の感覚では、だいたい開放から2段絞って、F11くらいまでがシャープに写り、F16からはだんだん甘くなっていく。レンズによってはF8しかシャープに写らないこともあります。

でもこのRF100mm F2.8 L MACRO IS USMはとても優秀で、開放のF2.8から、F32までシャープに、綺麗に写してくれる。

eosr_20210728_05.jpgeosr_20210728_06.jpgプリズム+化石/花火+バイクミラー

解像力と遊び心が同居したレンズ


高梨 特に面白いと思ったのが、SAコントロールリングです。レンズ 側でボケアシを調整できることがその本質ではあると思いますが、それに付随する描写の調子が面白い。解像力が高いレンズなのに、オールドレンズの様な溶けた表情を出すんです。掴みどころのない甘い描写といったら良いのでしょうか。

SAコントロールリングを回すことで、レンズの性格が豹変するような。真面目さと遊び心が一本のレンズに同居している感覚でした。そんなレンズは、今までなかったと思います。

掲載作品の中では、ススキの穂につけた水滴の撮影でSAコントロールリングを使いました。マイナス側にフルに回して、前ボケを硬くしています。手前ボケを意図して硬くする表現は既存のレンズではできなかったし、奥の世界が独特な滲み方をしてくれるので、1枚の写真にその緩急が心地よく存在してくれています。相容れない二つの性格が仲良く共同作業をしてくれた結果だと思います。

eosr_20210728_04.jpgeosr_20210728_08.jpgススキの穂+水滴 ススキの穂に水滴を付けて撮影。SAコントロールリングを使用。








──EOS Rシステムカメラとの組み合わせで、最大8.0段分の手ブレ補正効果が得られます。

高梨 テスト撮影では長時間露光で0.8秒までは手持ちで撮影できました。今までの感覚でいうと0.8秒って現実的じゃない数値だと思います。撮影中はシチュエーション問わず、手持ちで自分から動いてアングルを探りながらパシャパシャ撮りたいんですよね。その方がいい写真が生まれやすい。RFでは三脚から開放されて撮影の縛りがかなり軽減されますね。RFレンズは逃したくない一瞬を確実に捕らえてくれる、撮り手としても攻めの姿勢で撮影に挑める頼もしい存在だと思います。



高梨遼平(たかなし・りょうへい)
1984年東京生まれ。2008年多摩美術大学グラフィックデ ザイン学科卒。2021年アマナを退社、独立。

eosr_20210728_09.jpg

RF100mm F2.8 L MACRO IS USM
RFマウントの特長であるショートバックフォーカスを活かし、13群17枚のレンズ構成におけるフォーカスレンズ群とフローティングレンズ群の可動域を最大化。最大撮影倍率1.4倍、最短撮影距離0.26mのマクロ撮影を実現した。ボディ内手ブレ補正を持つEOS R5装着時は、静止画撮影時に8.0段の手ブレ補正効果を実現している。


製品の詳細:https://cweb.canon.jp/eos/your-eos/product/lens/rf100-f28/

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EOS R5
約4500万画素35mmフルサイズCMOSセンサーと映像エンジンDIGIC Xを搭載。静止画での常用ISO感度は100〜51200を達成した。デュアルピクセルCMOS AF IIによってAF性能が大幅に向上。人物の瞳・顔に加え、頭部検出も可能に。映像エンジンDIGIC Xにより、最高約20コマ/秒の高速連続撮影(電子シャッター時)やカメラとレンズの協調により、最高8.0段の手ブレ補正効果を実現。


製品の詳細:https://cweb.canon.jp/eos/your-eos/product/eosr/r5/

※この記事はコマーシャル・フォト2021年8月号から転載しています。


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