アメリカ付記

震災を写した写真家

サンフランシスコ市上空から被害の全貌を記録

かつて起こったアメリカの震災の中で、1906年に起こったサンフランシスコ地震は、ハリケーン・カトリーナなどと並ぶ、アメリカ史上最も被害の大きい自然災害の一つと言われています。日本からもこの日露戦争の翌年の震災に対して、2005年時点換算で約600億円の見舞い・援助金がサンフランシスコ市に、約60億円がサンフランシスコ在住の邦人に贈られました。

さて、このサンフランシスコ地震の映像や写真は、その被害の大きさや状況を知る非常に重要な記録ですが、この撮影者たちの中に、アメリカの写真史上、忘れてはならない写真家の名前があります。彼の名は、ジョージ・R・ローレンス。イリノイ州、オタワの出身です。

ローレンスは、地震で被害にあったサンフランシスコの街を、地上からではなく上空からその全貌を捉えたい、と考えました。そこで、彼はカイト(凧)にカメラを備え付け、無人で上空から撮影する方法を編み出します。

早速、その上空からの写真をお目にかけましょう。こちらです。

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ローレンスは重量22キロの160度パノラマ・カメラをカイトに装着し、17×48インチ(48.18×121.92センチ)のシングル・フィルムを使用し、600メートルの高さから撮影に成功しています。

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そして、この空中からの撮影以前に、彼がよく知られていたのは未だに人々を驚愕させる4.5×8フィート(137.16×243.84センチ)のガラスネガティブを使用した世界最大のカメラです。これは、イリノイ州シカゴとアルトンの町を結ぶシカゴ・アルトン鉄道の撮影をアルトン・リミテッドから依頼された際、作ったものです。

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今でも、震災の写真といえば彼の名を上げる人も多く、この巨大なカメラとともに、彼の写真は人々の印象に強く残っています。

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安友志乃 Shino Yasutomo

文筆家。著書に「撮る人へ」「写真家へ」「あなたの写真を拝見します」(窓社刊)、「写真のはじまり物語 ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ」(雷鳥社刊)がある。アメリカ在住。

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