2011年08月29日
サンフランシスコ市上空から被害の全貌を記録
かつて起こったアメリカの震災の中で、1906年に起こったサンフランシスコ地震は、ハリケーン・カトリーナなどと並ぶ、アメリカ史上最も被害の大きい自然災害の一つと言われています。日本からもこの日露戦争の翌年の震災に対して、2005年時点換算で約600億円の見舞い・援助金がサンフランシスコ市に、約60億円がサンフランシスコ在住の邦人に贈られました。
さて、このサンフランシスコ地震の映像や写真は、その被害の大きさや状況を知る非常に重要な記録ですが、この撮影者たちの中に、アメリカの写真史上、忘れてはならない写真家の名前があります。彼の名は、ジョージ・R・ローレンス。イリノイ州、オタワの出身です。
ローレンスは、地震で被害にあったサンフランシスコの街を、地上からではなく上空からその全貌を捉えたい、と考えました。そこで、彼はカイト(凧)にカメラを備え付け、無人で上空から撮影する方法を編み出します。
早速、その上空からの写真をお目にかけましょう。こちらです。
ローレンスは重量22キロの160度パノラマ・カメラをカイトに装着し、17×48インチ(48.18×121.92センチ)のシングル・フィルムを使用し、600メートルの高さから撮影に成功しています。
そして、この空中からの撮影以前に、彼がよく知られていたのは未だに人々を驚愕させる4.5×8フィート(137.16×243.84センチ)のガラスネガティブを使用した世界最大のカメラです。これは、イリノイ州シカゴとアルトンの町を結ぶシカゴ・アルトン鉄道の撮影をアルトン・リミテッドから依頼された際、作ったものです。
今でも、震災の写真といえば彼の名を上げる人も多く、この巨大なカメラとともに、彼の写真は人々の印象に強く残っています。
写真のはじまり物語ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ
アメリカの初期の写真、ダゲレオタイプ、アンブロタイプ、ティンタイプを、当時の人々の暮らしぶりと重ね合わせながら巡って行きます。写真はどのように広まったのでしょう。古い写真とみずみずしいイラストとともにめぐる類書の少ない写真文化史的一冊です。写真を深く知りたい人に。
安友志乃 著 定価1,890円(税込) 雷鳥社 刊