アメリカ付記

保守的なアメリカの一面 Blue Law

植民地時代から規制されていた日曜日の娯楽や飲酒

アメリカは自由の国でありながら、その実、とても保守的な一面があります。それがよく現れているものの1つにブルー・ロー(Blue Law)があります。

この法律は植民地時代、New England地方のピューリタン(キリスト教のプロテスタントであるカルヴァン派の大きなグループで市民革命の担い手となった。 清潔、潔白などを表すPurityに由来する。Puritanで厳格な人、潔癖な人を指すこともある。)の人々の中で守られていた、日曜日の買い物を含む娯楽、飲酒、労働を規制する法律で、アメリカそしてカナダにもその名残があります。

ブルー・ロー(青の法律)という呼び名は、1656年この法律がイギリスからアメリカに持ち込まれた際、青い紙に印刷されニューヘブン(コネチカット州)のピューリタンの世帯に配付されたことにちなんでいますが、ブルー・ローの基になるものは、先立つ1650年ニューヘブンのピューリタンの人々の中にはすでにありました。つまり、このことから、当時のコネティカット州ニューヘブンのピューリタン達がいかに厳格な宗教的生活を重んじていたかがわかります。

現代アメリカに存在し続けるブルー・ロー

そして、現代でもこのブルー・ローはしっかり存在しており、昔は食料品店と薬屋以外は日曜は閉まっていました。現代でも日曜日に休みになるお店も多く、特にお酒に関しては州によって、さらには郡によって約束事がことなり、お酒を販売してはいけない郡(ドライ・カウンティー)が今でもたくさん存在すれば、同じビールでも州によってアルコール度が異なったりします。お酒好きの人は予め、訪問先の郡がお酒が買える、つまりはウエット・カウンティーかどうか確かめたほうがいいかもしれませんね。と言うのも、ドライ・カウンティーではプライベートな会員制のところ以外、レストランでもお酒はありません

ただし、抜け道もあります。お隣りの郡がウエット・カウンティーであれば、そこまで車を飛ばして行けばいいのです(頑張ってください。車で1時間かかったりします)。なぜならこの法律、売ってはいけないだけで、飲んではいけない、とは言っていない、つまりプライベートな持ち込みは処罰の対象にならないのです。

アルコール以外にもある禁止事項

さらに、ウエット・カウンティーでも約束はあります。販売時間がまちまちです。ちなみに、私の住んでいる州は、度数の強いアルコールは日曜日は販売できません。戦没者の日、独立記念日、勤労感謝の日、サンクスギビング、クリスマスは全てのアルコールは販売してません。そして、なぜだか分かりませんが、車の販売も日曜はダメです(これは他の州にもあります)。しかし、一方、日曜日のカジノは開いてます。この州にはアメリカ全土から先住民族であったインディアンを集めた歴史があり、インディアンの人達に対する有益な法的措置が多くあります。カジノの多くはこの有益な法の特典を背景にオーナーの多くがインディアンの人たちで、ピューリタンのブルー・ロー順守の対象外、となっているため日曜日も営業できるのです。

お隣りのテキサス州は、特別なディーラー以外、土日のいずれかが車の販売がダメ。度数の高いアルコールの販売が日曜はダメ。イリノイ州は自動車の販売と地方自治体が許可した以外の競馬は日曜は禁止。メイン州は日曜日の狩猟は禁止。そして1990年まで日曜日にデパートは開いていませんでした。ミシシッピ州は州のほぼ半分が酒の販売が禁止。販売のできるところでも日曜日の販売は禁止。ウエストバージニア州は55の郡のうち、41郡が日曜の狩猟は禁止。

その他にも多くの州でアルコールの販売に時間の制限があったり、特に日曜日が販売禁止だったり、狩猟の禁止や制限があります。お酒好きな人は日本のほうがずっと天国かもしれません。

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