そうだったのか!デジタルフォトの色

第7回 色を見るときは、色温度だけではなく演色性にも気をつけよう

解説:BOCO塚本

これまでの連載を読んでもらえば、モニターで正しい色を見るには、モニターのキャリブレーションだけでなく、環境光の色温度と照度の管理が大切であることを理解してもらえると思います。では、プリントを見るときはどうでしょうか。実は、環境光はモニターだけではなく、プリントや印刷の色の見え方にも影響します。

皆さんは、イメージ通りに仕上がったプリントを後日人に見せたり、色見本プリントをクライアントに提示する時に、プリント時と印象が変わって見えたことがないでしょうか? それは主に、プリントする時の光源と、見るときの光源が違うことが原因です。光源の色温度が変わればプリントや印刷の色味が変わってしまうことは簡単にイメージできますね。ところが、プリントや印刷の色の見え方に影響するのは、光源の色温度や色合いだけではないのです。

プリントや印刷物だけを単独で見る場合には、多少光源が変わっても人の目がある程度自動でホワイトバランスをとってしまうので、それほど印象は変わりません。では、プリントや印刷物を並べて見くらべる時はどうかというと、どちらも同じ観察用光源の影響を受けるわけですから、いくらか光源の色味が変わってもやはり同じように見えるはずです。にもかかわらず実際には、ある光源の下ではプリントや印刷物が同じように見えるけれど、別の光源では同じに見えないということが起こるのです。光源によって色の見え方が変わるこの現象は、条件等色〈メタメリズム〉と言って、実はデジタルフォトが登場する以前から存在します。


条件等色〈メタメリズム〉の実証実験のために3種類のプリンタで写真を出力した。上から顔料系インクジェット、染料系インクジェット、銀塩プリント

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 色評価用蛍光灯(上)と白色蛍光灯(下)の比較。光源が変わるとどれも見た目の色が変化するが、染料系インクジェットの変化がもっとも顕著。


条件等色〈メタメリズム〉の実証のために、同じデータから3種類のプリンタで出力し、それぞれ光源を変えてライティングをして、デジタルカメラで複写してみました。複写時に写し込んだマクベスチャートを使って、複写画像のホワイトバランスだけを合わせています。使用したプリンタは、顔料インクのインクジェットプリンタ、染料インクのインクジェットプリンタ、銀塩デジタルプリンタ。光源は、自然光に近い色評価用蛍光灯と、一般的な照明に多く使われている白色蛍光灯の2種類を使用しています。部分拡大した肌の色味を見ると、光源による変化は染料インクが一番大きく、銀塩プリントも少し変化しているのが分かります。

光の三原色は、R(赤) G(緑) B(青)です。液晶モニターはこの三原色の強弱で約1670万色のフルカラーを表示していますが、太陽光線には紫外線と赤外線の間にある全ての色が含まれていて、それぞれの色の反射によって物の色が見えるのです。三角プリズムで太陽光スペクトルに分けるとよくわかるでしょう。

この光の色の強弱をグラフにしたものが分光分布図です。自然光の分光分布は均一な状態ですが、室内照明に使われる白色蛍光灯の分布にはムラがあります。分光分布図でグラフが低くなっているところの光が弱くなるため、部分的に色の見え方が変わってしまうことがあるのです。この変化は、色素の種類によっても差があるので、プリント・出力方法ごとに変化が違います。


太陽光を三角プリズムでスペクトルにわけたもの

自然光は実際には、紫外線や赤外線まで含んでいる

光の3原色(RGB)の近辺にピークがあるが、それ以外の色は弱い

グリーンからイエローにかけて極端に強い

評価用蛍光灯はブルーからシアン・レッドまでカバーしている

フィラメント式の電球は演色性が良いが、色温度が低い

ここでもう一度、自然光・白色蛍光灯・三波長昼白色蛍光灯・色評価用蛍光灯(D50)の違いを見てください。それぞれデジタルカメラでRaw撮影し、ホワイトバランスだけを合わせました。デジタルカメラはRGB三原色フィルターを利用して色情報を得ているために肉眼ほど差は感じませんが、詳しく見ていくと、ところどころに違いが出ています。

自然光
三波長昼光色蛍光灯
白色蛍光灯
色評価用蛍光灯
部分 1:マクベスチャート

チャートのグレー部分でホワイトバランスをとった。無彩色チャートに色の差はない
部分 2:銀塩デジタルプリント

三波長・白色共に背景の濃いグレーがブルーに発色している。白色蛍光灯は、ブルーの商品の色味も違う
部分 3:プロセス4色印刷

背景の緑はほとんど変わらないが、白色蛍光灯だけ衣装の色が違って見える

このように一般的な出力方法では、多かれ少なかれ条件等色〈メタメリズム〉の影響が出てしまいます。比較的影響が少ないと言われる顔料インクを使ったインクジェットプリンタも同様です。現状では、プリント出力の方法で条件等色〈メタメリズム〉を完全に抑えることはできません。一番の解決策は、プリント時の光源と観察用の光源を変えないことです。

この場合の標準光源となるのは、やはり自然光です。といっても、太陽光は時刻や天候状態による変動が大きく写真の確認には向かないので、自然光に近い分光分布の光源を使用します。自然光との発色の違いを演色性と言い、差が少ない光源は「演色性が良い」と言われます。

「色評価用蛍光灯」は演色性が良い光源の一つです。カラー写真の展示が多いカメラメーカーやフィルムメーカーのギャラリーでは、この色評価用蛍光灯が照明に使用されています。蛍光灯のカタログなどには「昼白色・演色AAA・色温度5000K・平均演色評価数Ra99」のように、蛍光灯の性能が表記されています。このうち「平均演色評価数Ra」が演色性を表していて、自然光を100とした数値で表記されます。(注:平均演色評価数は、自然光に対する指数であって光源の性能を表す物ではありません)

プリントや印刷物の色を確認する際には、光源の色温度と演色性の両方が大切になります。色評価用蛍光灯以外の光源はどうかというと、たとえばタングステンライトの平均演色評価数はRa100ですが、色温度が2900K程度と赤みが強いので、色を確認するのには適していません。いっぽう昼白色3波長蛍光灯は色温度が5000K前後ですが、平均演色評価数Ra85前後と演色性が低くなっているので、これまた色の確認には適していません。

冒頭に述べた、プリントや印刷物の色が違って見えるという現象は、演色性が良くない光源の下で起こります。光源の演色性を簡単にチェックできるカードも販売されているので、いちど自分の環境をこのカードでチェックしてみてください。プリンタとモニターはたいてい同じ場所に設置してあるので、プリントのための環境を整えることで、おのずとモニター環境も向上するでしょう。

一般の蛍光灯

ナチュラル色の需要が増えたおかげで色温度5000Kの蛍光灯を手に入れやすくなったが、一般の蛍光灯では、厳密にプリント・印刷の色を見るには不十分
色評価用蛍光灯

たとえ一般企業のオフィスでも、色を扱う部署では色評価用蛍光灯が導入されており、商品の色を決める際にはこの蛍光灯下で検討される
カラープランニングセンターが製作・販売する「光源の演色性検査カード」。一般的にプリントの評価には、D50の光源が使用される。カラープランニングセンター  http://www.colorplanning.net/

写真:BOCO塚本

BOCO塚本 BOCO Tsukamoto

1961年生まれ。1994年フリーランス、2004年ニューヨークSOHOにてART GALA出展、2007年個展「融和」、ほかグループ展、執筆多数。公益社団法人日本広告写真家協会(APA)理事、京都光華女子大学非常勤講師。

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