吉田尚記のあさっての話

AI(人工知能)は万能ですか?|出澤純一

撮影:浜村多恵 まとめ:粟野亜美

TVで特集が組まれるなど、ブームが来ているAIの世界。今回、よっぴーさんが対談するのは、前回に引き続きリバネスの長谷川和宏さんの紹介する、AIの専門家、株式会社エイシングの出澤純一さんだ。AIによって「あらゆるものがスマートになっていく時代」とはどんなものなのか? また出澤さんが警鐘を鳴らす「ブームによるAIへの期待過信」とは?

知られざる「材料」の世界

img_special_asatte_03_01.jpg吉田尚記

吉田 最初にズバッと聞いてしまいますが、「AI」、つまり「人工知能」とはなんですか?

img_special_asatte_03_02.jpg出澤純一

出澤 簡単に言ってしまえば、統計をより複雑に表しているものが人工知能です。機械学習というのはあくまでもデータに基づいて、その法則性を洗い出すということに長けているんです。

吉田 ただ、世の中にはすでに「統計」というものが存在するじゃないですか? だけど、人工知能は人間の思考等のレベルでは到達できないほど複雑にデータを洗い出すことができるということですか?

出澤 そうですね。AIのアルゴリズムの中で、深層型の多層型学習っていうのが複雑に表現できるようになってきた。つまり計算性能が追い付いてきて、そういうのもできるようになったわけです。それが今のAIブームの根幹と言うか、土台になっている部分だと思います。

吉田 人間からすると100の結果と100のファクターがあったらどれとどれがつながっているかわからない。イメージでいうと、ごちゃごちゃにからまっている毛糸の玉みたいなのがあって。これをキレイに解きほぐせと言っても人間には難しいけれど、コンピューターならまるでルービックキューブを解くように、冷静に考えて、からまった紐をするっと解くことができると。

出澤 そうです。ただ、AIにおいてはデータと課題が非常に大事。それが根本にあります。

ひとつ、AIの話を語る上で面白い話がありまして。北関東で花粉が飛散すると、翌日の海外旅行の売り上げが上がるという事実があるんです。実は国内にいると花粉症の人がツラいから「海外行きたいなぁ」と思うようになるからで。それだけのことではあるんですが、そういうデータがないとAIも学習のしようがないという根本的な問題があってですね。機械学習自体がそもそもデータありき。データがあって初めて傾向をつかんだり、それを法則化するものなので。

統計手法とかディープラーニングでもそうなんですけど、何が重要なファクターかまでは今の技術で洗い出せます。ただ、そこから何の法則があるか、法則を体言するためにAIという機械学習にかけているっていうのが正しい。花粉のように「花粉の飛散量と翌日の海外旅行の売上が関連がある」というファクターがAIから出てきたとして、そこから何がどう関係してそうなるのかを考えるのは人間の仕事なんですよね。

AIのある未来

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AIによって
世界の最適化の効率は
格段に上がる

吉田 昔から面白いなと思っていることがあって、それが「特異日」なんです。ビールは気温が数度違ってくると売上も変わってくる。だから、気温に合わせて生産調整していると。それは特異日の初歩中の初歩。でも、それと同じように「みんながお好み焼きを食べ出す日」みたいなこともあるらしいんです。それをAIに対して「お好み焼きが食べられる日はなあに?」という課題を与えれば、そこに関連するファクターは出てくるわけですよね?

出澤 ビッグデータの中からお好み焼きの売上というのが出てきて。その上で、年齢、性別、出身、年収などのデータの中からお好み焼きが伸びているファクターは何かというのを洗い出す。そうすると、気温と天気が関係しているとか、関連のあるファクターが出てきてそこから推測ができます。

吉田 そうなると、それが可能になれば明日は絶対にお客さんくるはずだから仕込みを多めにしようとか、その逆もしかりで。つまり、AIによって世界の最適化の効率が格段に進むってことですよね?

出澤 それは間違いない。実際、人がなんとなくやっていたことや、なんだかわからないけど、うまく記述ができなかった部分を法則化していけるでしょうね。

吉田 例えば、AI搭載の炊飯器とかはどんどんできていくわけですよね。ユーザーの好み等を学習する、成長する炊飯器。

出澤 それはありますね。地図と連動してGPSでユーザが何分前にここにいるから炊き始めようとか、その日の歩数と連動させて「今日はたくさん歩いて疲れているから炊く量は多めに」とか。炊飯器の例は個々人のカルキュレーション(予測)ですけど、ビッグデータに関しては社会知(社会の知)がどんどん生まれていくでしょうね。

ブームの懸念点

出澤 一方で懸念すべきこともあって。現在、AIはブームにのりすぎていたずらに煽られているというか、ある意味行き過ぎてしまったところが多少あるように思うんです。

AIは万能なわけではなくて。私たちAI屋というのは、あくまでも道具屋であり、レストランではない。つまり、AIという包丁を作ったのと一緒。魚や肉や野菜というデータがいろいろある。でも、その魚や肉をどんな風に切るのか、ひと口大なのか、輪切りなのか、乱切りなのか、レシピは様々あるわけです。

私たちができるのは「道具を作るまで」であって、それぞれのレシピのノウハウをAI屋が把握しているかと言えばそうでもない。包丁を使ってどんなレシピでどう捌くかはお客様の方の責任というか、エンドユーザーさんの方で考えてから使っていただく必要があるのかなと最近、感じています。

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AIは必ずしも
万能ではない。
その認識を持つべき

出澤 でも、ブームによってAIに興味を持つ方が増えていて、これまでだいたい半年ぐらいで500社ぐらいの方とお会いしてきたんですけど、話を聞いてみると「それはAIでなく、統計解析に出しちゃったほうがいいレベルでは? わざわざ大きな予算をかけてやる必要があるんですか?」ということが意外と多い。ざっくり言ってみれば、AIリテラシーというのか、総じてまだそこが高くない。AIならなんでもできるという認識を持っている人も多いし、まずは「AIだから全部できるわけではない」ということを認識する必要があるのかなと。

吉田 ふむ。人間って新しいテクノロジーには必ずそういう夢というか、幻想を抱いてしまう。AIができることはすごい。でも、それは磁石ができることもすごいというのと同義。磁石が万能なわけではないということですね。つまりは、AIの特性を使って何をどうさせるか、そこが重要ってことですね。

でも、お話しを伺っているとものすごい可能性を秘めているのは間違いない。つまり、今後は“バカとハサミとAIは使いよう”ってことになりますね(笑)。ありがとうございました!

よしだ・ひさのり
1975年12月12日東京生まれ。ニッポン放送アナウンサー。第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞授賞。「マンガ大賞」発起人。2021年4月から『ミューコミVR』(日曜23時30分から生放送)、『辛坊治郎ズーム』の留守番パーソナリティを担当。最新刊『元コミュ障アナウンサーが考案した会話がしんどい人のための話し方、聞き方の教科書』(アスコム)ほか著書多数。

いでさわ・じゅんいち
1982年4月12日茨城生まれ。株式会社エイシング(AISing Ltd.)代表取締役CEO。専攻はロボット工学、人工知能理論。「第一回ワセダベンチャーゲート」最優秀賞受賞、「未来2017」日本総研賞、起業家万博2018 総務大臣賞、大学発ベンチャー表彰2018 経済産業大臣賞を受賞。独自制御用AIアルゴリズムAiiR(AI in Real-time)で事業展開中。


※この記事は、コマーシャル・フォト2017年10月号から転載しています。


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