2007年12月28日
新機能「バリデーション機能」を使う
STEP7:バリデーション機能を使う
ColorNavigator 5.0から追加された機能に「バリデーション機能」がある。作成したプロファイルとカラーパッチを比較して検証する機能だ。うまく使いこなしてほしい。
測定が終了すると測定結果画面が現れる。目標値とそれに対する調整結果が示される。左側、ガモット図下にあるボタンが「バリデーション機能」のボタンだ。ここをクリックするともう一度センサーを初期化してから、プロファイルの検証が始まる。
「検証開始」ボタン
プロファイルの検証が終了すると、再度測定結果画面が現れる。すると、ガモット図下のボタンが「検証開始」から「検証結果」に変わっているはずだ。そして、「検証結果」ボタンをクリックすると検証結果が表示される。
「検証結果」ボタン | 検証結果の表示 |
検証結果画面上部のプルダウンメニューから、基準にすべき色差式を選ぶことができる。より人間の視覚特性が加味されている「CIE2000」を選択するのが妥当だ。
検証結果の数値についてだが、色差が「0」になることはまずあり得ない。センサーの公差、ビデオボードの公差、モニターの公差、CMMの精度などが複雑に絡み合った結果だ。マッチングの結果からすれば、この程度の色差は全く問題のないレベルである。ColorNavigator 5.0の「バリデーション機能」では、ΔE4以上の色差がある場合には、数値が黄色く表示される。黄色表示がついていなければ、数値そのものは、気にしなくて良い。どのパッチであるかにもよるが、黄色く表示された箇所が複数箇所あるようであれば、再度キャリブレーションをしてみる。その程度に考えてよい。ただし、時おり思ってもみない数字が出ることがある。その場合、ほとんどの原因はセンサーの初期化の失敗である。
この画面を閉じて、「保存」をクリックすればまずは第一段階が終了だ。
本当に大事なTips その5 カラーマッチングの許容範囲を数値で表すと |
ワンランク上のキャリブレーション ①
STEP8:キャリブレーション終了!ではない
手順を追ってひとしきりのモニターキャリブレーションが終わったが、本稿の「ワンランク上のキャリブレーション」はまだまだ終わらない。ここからがワンランク上へのステップである。とは言っても、特別難しいことをして欲しいわけではない。設定を少しずつ変えながらSTEP4からSTEP7をあと4回繰り返して欲しいのである。変えるべき設定は「ガンマ」のみである。その他の設定は変えてはいけない。
まずはガンマ1.8でキャリブレーションが終わったので「ガンマ」を0.1ずつあげて2.2までキャリブレーションするのである。一回ずつ、検証と保存をして1.8から2.2まで、0.1刻みで5つのモニタープロファイルを作って欲しい。これは、このあとターゲットと比較をして、適切な「ガンマ」を割り出すためである。この繰り返し作業が済むと初期画面から5つのプロファイルを切り替えて使用できるようになる。
ガンマ1.8から2.2まで0.1刻みでプロファイルを作る | 初期画面でプロファイルを切り替えて使用できる |
本当に大事なTips その6 ガンマとは一体何か |
STEP9:ターゲットの準備
モニターキャリブレーションはモニター単体のキャリブレーションだけで終わってもよいのであるが、何らかのターゲットとカラーマッチングすることが目的である。そこで今回は以下のような画像を用意し、エプソンPX-5800でプリントした。用紙はエプソン純正「写真用紙光沢」である。
モデル:村乃みか | この画像は、プリンタプロファイルに対して色域外を含む、Adobe RGB画像である。画像は本来で言えば複数の画像を用意することが望ましい。 使用するプリンタに関して言えば、すべてのプリンタでカラーマッチングできるわけではない。染料系は概ねマッチングが難しい。モニターとのカラーマッチングを目指すなら顔料系を使用すべきである。なかでも、エプソンPX-5500以上のK3インク使用の機種は、大変マッチングしやすい。印刷を考慮して、DDCPとのマッチングをはかる際にも、モニター、プリント、DDCPの3者間でのマッチングもとりやすいのである。ただし、これも個人的な見解であることをお含みいただきたい。 |
プリントは、「Photoshopによるカラー管理」を基準とする。ご存知のことと思うが、Photoshop CS3によるプリントをここで復習してみよう。まず、ファイルメニューから「プリント」を選ぶとプリント画面が表示される。ここでの重要なチェックポイントは4つ。写真下の赤枠で囲んだ部分を、上から順番に解説すると、
1.「カラー処理」は「Photoshopによるカラー管理」を選択
2.「プリンタプロファイル」は使用するプリンタと用紙種類の適切な組み合せを選ぶ。ここでは、PX-5800とエプソン純正「写真用紙 光沢」との組合わせである「PX5800 Photo Paper(G)」を選んだ。
3.「マッチング方法」は「相対的な色域を維持」を選ぶ。「知覚的な色域を維持」が推奨されることが多いが、色域外や色域周辺部で色相の変化が少ないのは「相対的」である。全体のマッチングを考えるなら「相対的」がお勧めである。いずれにせよ、「プリンタプロファイル」と「マッチング方法」を変更すると左側のプレビューウインドウに表示される色も変化し、プリントした色をシミュレーションするので、適切と思われる組み合わせを探すことができる。
4.「黒点の補正」チェックボックスにチェックを入れてオンにする。基本的にはオンにするのだが、プリンタによってはオフをデフォルトとして推奨しているものもあるので、それぞれのプリンタの説明書で確認して欲しい。
以上の設定がOKなら「プリント」ボタンをクリック。
Mac OS Xのプリント画面の「印刷設定」 | 「プリンタのカラー調整」で「オフ」を選択 |
ここで、OS側のプリント画面に切り替わる。ここでの設定ポイントは3箇所。
まず、上から3段目の設定プルダウンメニューで「印刷設定」を選ぶ。
1.「用紙種類」をプルダウンメニューで選ぶ。光沢紙は「EPSON写真用紙」でよい。
2.「カラー」が「カラー」であることをチェック。
次に、上から3段目の設定プルダウンメニューで「プリンタのカラー調整」に移動。
3.ここで選ぶべきは「オフ(色補正なし)」である。
あとは「プリント」してターゲットの完成だ。
本当に大事なTips その7 モニターとプリンタのマッチングは出力して1時間は必要 |
本当に大事なTips その8 印刷でのカラーマッチングはDDCPをターゲットにする |
ワンランク上のキャリブレーション ②
STEP10:最後の仕上げ
ターゲットのプリントができたら、いよいよモニターキャリブレーションも最後の詰めだ。先に用意してある、ガンマを変更して作った5つのモニタープロファイルとターゲットを比較して、使用するモニタープロファイルを決定する。“三人よれば文殊の知恵” ではないが、この大詰めは複数の観測者で行なうべきである。今回は、印刷会社プリンティングディレクター、画像ソフトウェア開発者、そして私の3人で行なった。
モニターとプリントのカラーマッチングの検証環境 | 今回の検証環境である。モニターの設置場所は約14畳の白壁の部屋。色評価用蛍光灯AAA 40Wを一本天井吊りにし、環境光源としている。モニター面で実測4700K、約60 lx、演色指数95。 プリント観測は、本来は色見台を使用すべきだが、今回はスパイラル型高演色蛍光灯を使用した。モニター面に影響を与えないように、オンオフしながら慎重に色を観測した。光源の向きを自由に動かせるように設置すると最適の照度を見つけやすい。光源数値は4800K、約600 lx、演色指数92。壁の色や設置環境で色温度や演色指数は変わるので、周りの色にも配慮が必要。本来であれば、全面グレーが望ましい。 |
本当に大事なTips その9 色を見るには健康と心理状態が重要 |
本当に大事なTips その10 Photoshopの「校正設定」を使いこなそう |
Photoshopの「ビュー」から「校正設定」を選ぶ | ColorNavigator 5.0でプロファイルを切り替えてマッチングするものを探す |
まずは、Photoshop CS3でターゲット画像を表示し、校正設定をする。Photoshop CS3で「校正設定」をした状態でターゲット画像が表示できたら、ColorNavigator 5.0の初期画面をアクティブにする。あとは、保存してあるプロファイルを順次切り替えてもっともマッチングするものを探せば良い。この時、プリント観測の照度も変えてプリント画像の明るさがモニターと一致するようにしても良い。基準値は500 lxだが、プラスマイナス125 lxの公差が規定されている。我々の観測では、ガンマ2.2、プリント面照度は約600 lxでカラーマッチングできた。以上の結果をまとめてみたのが次の表だ。プリンタの個体差や個人差、さまざまな変動要因はあるが一つの参考値と考えて頂きたい。
モニター輝度 | 80 cd / ㎡ |
モニター白色点 | 5000K |
モニターのガンマ | 2.2 |
モニター設置環境 | 約60 lx |
プリント評価光源 | 約600 lx |
以上の手順を追って頂ければ、あなたのColorEdge はインクジェットプリントとマッチングするはずだ。しかし、それでも合わない部分は存在する。だが、それはColorEdge のせいではなく、ICCプロファイルによる現在のカラーマネジメントの限界であるのだ。あるICCプロファイルの色域周辺部や色域外を、別のICCプロファイルにマッピングすると、カラーの捻れが生じてしまう。つまり、そうした部分はCMSの範疇外ということでもあるのだ。
しかしColorNavigator 5.0なら、そうした部分も越えて更なるカラーマッチングを目指せる。そのために用意された機能が、6色調整を含む手動調整やプロファイルカスタマイズ機能であるのだ。 さらにインクジェットプリンタの機能を駆使すれば、DDCPをターゲットにした印刷物との三者マッチングを高精度に行なうことが可能だ。
これらの高度なマッチング方法は、またいずれ機会を改めてご紹介することを約束し、本稿を閉じたいと思う。
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茂手木秀行 Hideyuki Motegi
1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。
個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」
デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/
- ColorEdge CG248-4Kをムービー撮影現場で使ってみる
- ColorEdge CG248-4Kの表現力を味わう
- 動画の現場で活躍するColorEdgeと4KモニターFDH3601
- 待望のプロファイルエミュレーション機能を搭載したColorNavigator 6
- 24.1型のColorEdgeは、CG245WとCG243W-Bのどちらを選べばいいか?
- ColorEdge CG243W実力検証・第2回 プリンティングディレクターから見たCG243W
- ColorEdge CG243W実力検証・第1回 フォトグラファーから見たCG243W
- カラーマネージメント液晶モニターColorEdgeとは?
- ColorEdgeユーザー × 開発者 スペシャル座談会
- 「ナナオ本社工場」訪問記
- ColorNavigator 5 徹底研究 PART2(後編)
- ColorNavigator 5 徹底研究 PART2(前編)
- ColorEdge CG301W 実使用レポート
- ColorNavigator 5 徹底研究 PART1(後編)
- ColorNavigator 5 徹底研究 PART1(前編)
- 写真の色と光を見るための液晶モニターの条件
- ColorEdge CG241W導入ガイド