2008年01月15日
ColorEdgeシリーズ最大のサイズを誇るCG301Wが1月24日に発売となる。29.8インチのワイド画面でAdobe RGB 比97%の広い色域をカバーし、縦回転でブランケット判の原稿を実寸で表示できるプロ仕様の液晶モニターだ。新たにバージョン5.0となったキャリブレーションソフト「ColorNavigator」と共にCG301Wの実力を検証する。
2007年のベストバイはCG241Wだった
のっけから私事で恐縮だが、昨年(2007年)EIZO ColorEdgeシリーズCG241Wを購入した。あるカメラ誌の企画が購入のきっかけとなったのだが、A3サイズの表示を実現する24.1インチのワイド液晶、画面上の輝度ムラと色度ムラを抑えAdobe RGBをほぼカバーする広色域表示、簡便なキャリブレーション機能などそれまで使用していたApple Cinema Display 20インチを使い勝手も性能も大きく凌いでいたことが理由だった。
ちなみに昨年は、魅力的で購買意欲をそそるデジタル一眼レフが、近年類をみないほど多数発売された年でもあった。私自身も仕事柄、あるいは立場的にそのなかからいくつか手に入れた。卓越した性能や洗練された操作性など最新のデジタルカメラのスゴさを実感するとともに、それまでのカメラに代わって撮影や取材にと持ち出している。しかし、私にとって昨年購入したもののなかで一番に思われたものはというと、冒頭のCG241Wといっても過言ではない。当初Cinema Displayからの乗り換えはちょっと贅沢かなぁと考えるところもあったが、パソコンの前に座っている時間のほうが、カメラを構えている時間よりも遥かに長い私にとって、たいへん有意義な買い物であったと思っている。
CG301W(左)とCG241W(右)
そのCG241Wをよりワイドな画面サイズとしたのが、今回紹介するColorEdgeシリーズCG301Wである。基本的なスペックは画面サイズとサポートする色域以外、CG241Wに準拠する。その画面サイズは29.8型(76cm型)。24.1型(61cm型)であるCG241Wと比較すると、実際の画面の大きさの違いは数値以上だ。面積比でいうと約1.53倍もの違いとなる。
液晶パネルにはIPSパネルと同等の再現能力を持つVAタイプを採用。視野角が若干狭く見る角度によっては色調の変化もあるものの、通常の使用ではまったく問題ないものである。再現する色域としてはAdobe RGB比 97%をサポートする。これに関してはCG241Wが96%だから、さらに向上していることになる。フルにAdobe RGBの色域をカバーしているわけではないが、さほど問題になるようなことはないと思われる。
添付されるキャリブレーションソフトウエアは「ColorNavigator 5.0」。これまで、CG241WおよびColorEdge CEシリーズは「ColorNavigator CE」、その他の機種は「ColorNavigator」と2系統となっていたが、このCG301Wより、統合されたColorNavigator 5.0が採用され利便性が向上している。搭載される機能については後ほど解説することにしたい。
Cinema HD Displayよりもクリエイティブワークに適している
CG301Wの購入を検討するにあたって気になるのは同じ30インチモニターである「Apple Cinema HD Display 30インチ」の存在だろう。価格から見ると229,800円(アップルストア価格・税込)と、CG301Wの493,500円(EIZO ダイレクト価格・税込)と比較してしまうとなかなか魅力的な設定。一見Cinema Displayは値ごろ感あるものに感じられてしまうものだ。しかし、その詳細を見るとCG301Wのほうがクリエイティブワークを行なうモニターとしてはアドバンテージが高いのである。
まずは色域であるが、Cinema DisplayはsRGB相当をサポート。一方CG301Wは前述しているとおりAdobe RGB 比97%までの広い領域をカバーする。インクジェットプリンターもAdobe RGB対応のものがいくつか出回っていることや、今後の印刷入稿の形態を考えると広い色域を再現できるモニターが好ましいことはいうまでもない。ルックアップテーブルにしてもCinema Displayは8bitに対し、CG301Wはより正確な階調を再現できる12bitとなる。モニター側の要因による画像のバンディングや色のねじれの発生の可能性は皆無といえるだろう。
CG301Wはハードウェア・キャリブレーションに対応 | CG301Wに同梱されるColorNavigator 5.0 |
カラーマネージメントの要ともいるキャリブレーションについてCinema Displayはソフトウェア・キャリブレーションであるのに対し、CG301Wではハードウェア・キャリブレーションに対応する。ハードウェア・キャリブレーションは色トビや黒ツブレがなく諧調を保持できるのが特徴である。しかも同梱されるColorNavigator 5.0により正確で簡単なキャリブレーションを実現している。
その他CG301Wはナナオの工場にて1台1台ガンマを測定するとともに、理想のガンマ値になるように出荷時に調整を行なっている。また画面の輝度ムラや色度ムラの発生を抑えるデジタルユニフォミティ補正回路を搭載。どの階調でも表示される画面が均一になるよう補正するとともに、高い精度の色再現環境を達成している。モニター部を回転させてのタテ表示のサポートや、専用の遮光フードが備わるのも30インチのモニターとしてはCG301Wだけの特徴だ。 Cinema Displayにくらべ高価なCG301Wではあるが、いくつかかいつまんで紹介しただけでもいかにクリエイティブワークに即したものであるかお分かりになるだろう。30インチモニターを購入しようと考えているなら、CG301Wを選択しない余地はない。 | モニター内部の熱対策がしっかりしているので、タテ表示の際の放熱にも問題はない。 |
ColorNavigator 5.0の新機能
CG301Wの性能を活かすにはColorEdgeモニター専用のキャリブレーションソフトウェアであるColorNavigator 5.0を使いこなす必要がある。ColorNavigator 5.0は他のColorEdgeモニターでも使用が可能。詳細については、特集の「ColorNavigator 5.0徹底研究」に、茂手木秀行氏による中身の濃い紹介がなされているので一読していただきたいが、ここではその補足として触れられていなかったいくつかの機能を簡単に紹介する。これまでCG241W、CG221などの広色域モニターでは、対応するセンサーが限定されていた。CG241Wの対応センサーは、i1シリーズ(i1 Display / Display2含む)、Monaco OPTIX XR、Monaco OPTIX XR Pro、DTP94B。そしてCG221の対応センサーは、i1シリーズ(i1 Display / Display2は除く)だけとなっていた。
これに対して、ColorNavigator 5.0ではフィルター方式のセンサーであっても広色域モニターのキャリブレーションが可能になっている。使用できるセンサーはi1 Displayシリーズ(i1 Display / Display2 / CX1)、i1 Pro、i1 Monitor、Monaco OPTIX XR、Monaco OPTIX XR Pro、DTP94、DTP94B、Spyder2と実に多彩。CG241WやCG221でもColorNavigator 5.0にアップデートを行なえば、CG301Wとの併用の際など、センサーを買い増しする必要は一切なくなる。 ColorNavigatorには以前から、キャリブレーション後に、印刷物等の色に合わせて微調整を行なえる手動調整機能があった。5.0からは対応機種が増え、Color Edgeモニターシリーズの全機種で使用できるようになった。補正項目は「白色補正」「輝度」「6色調整」の3つで、いずれもプロファイルには反映されない。なおCE240WとCE210Wのみ6色調整未対応となるが次のバージョンアップでは対応を予定しているとのことだ。 | フィルター方式のセンサーであってもCG301Wなどの広色域モニターで使用することが可能。市販されているほとんどのセンサーが使用できるといっていいだろう。 手動調整機能は全てのColorEdgeモニターで使用が可能だ。調整できる項目は「白色補正」「輝度」「6色調整」で、印刷物などの色により合わせこむことができる。 |
履歴管理機能は全ColorEdgeモニターで使用が可能となる。これは、あらかじめ目標リストの中にキャリブレーションを行なった調整目標を作成しておくことで、その都度調整目標を作成せずに済む機能だ。使用したい調整目標を選択し、「適用」をクリックするだけでモニターの設定を切り替えられるため、キャリブレーションの手間がかからない。以前からユーザーの要望の多かった機能である。
sRGBの色域や他のモニターの持つ色域を、CG301WやCG241Wなどの広色域モニターでシュミレーションできるエミュレーション機能も採用されている。設定方法としては、「色再現域」のプルダウンメニューにより任意のプロファイルの指定を行なうか、「手入力」からエミュレーションしたい色域の指定を行なう。クライアントなどの閲覧条件に合わせた再現がColorEdgeモニターで可能となる。 ColorNavigator 5.0は単にキャリブレーションソフトに留まらず、CG301WをはじめとするColorEdgeモニターの広い色域と精度の高い再現性を活かすソフトウェアだ。操作も簡便なので機能を把握し積極的に活用してほしい。 | CG301Wをはじめとする広色域モニターではエミュレーション機能に対応する。「色再現域」のプルダウンメニューにより任意のプロファイルを指定するか、「手入力」を選択してエミュレーションしたい色域を選択する。 |
30インチの大画面を生かした使い方
話をCG301Wに戻そう。ほぼ30インチの画面サイズは、20インチクラスを見慣れた者にとって実に広々とした印象を抱く。そんな用途としては、まずデュアルディスプレイをひとつにまとめたい人向きといえる。2台のモニターの個体差を気にする必要がなく、キャリブレーションも1回で済む。30インチとなると比較的広い設置場所を要するものであるが、20インチクラスを二つならべるよりは場所もとらない。何より電力消費量も経済的でランニングコストも低く抑えることもできる。デジタル一眼レフの画素数は、現在オーバー1000万画素が一般的である。またデジタルバックを使用する中判タイプのデジタルカメラでは、3900万画素というものも出始めてきている。そんな高画素で撮影した画像を閲覧するのに適しているのも30インチのモニターだ。高画素のメリットである解像度の高さを活かしきれるといってよいだろう。同様にPhotoshopなどを使った細かなレタッチ作業を行うクリエイターにも作業スペースを広く確保できるため適しているほか、Brige、Lightroom、Apertureなどのソフトで大量の写真をセレクトする作業にも向いている。その他、画面の広さから新聞広告、ポスターなどの大判サイズのデザイン作業にも不足のないものといえるだろう。
他のColorEdgeシリーズのモニターと同様、CG301Wには5年間もの長期保証が付く。イニシャルコストは決して安いものではないが、末永く付き合っていくことのできそうなモニターといえる。
大浦タケシ Takeshi Oura
1965年宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、編集プロダクション、デザイン企画会社を経てフリーカメラマンとなる。現在、カメラ誌等を中心に一般誌、コマーシャル、セミナー等で活動中。カメラグランプリ選考委員
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