2015年09月30日
EIZOの「ColorEdge CG248-4K」は、扱いやすいサイズの23.8型画面で、フルHDの4倍にあたる3840×2160の高解像度を実現したカラーマネージメントモニターだ。写真を4Kで表示した際の表現力についてレポートする。
4Kモニターの高精細な描写は誰もが認めるところだが、4Kモニターそのものはすでにもう珍しいものではない。だが、ColorEdgeの4Kモニターとなると話は違ってくる。
色とトーンの確かさにおいてColorEdgeの右に出るものはない。いまやムービー業界でも使われるようになり、ColorEdgeの活躍の場はプリントとのカラーマッチングのみではなくなった。そのColorEdgeが4K解像度になったのだ。否が応でも期待が高まるではないか。
そこで、7月10日に発売された4Kモニター「ColorEdge CG248-4K」を取り上げて、筆者が普段使用しているColorEdge CX271と比較しながら、その性能や使い勝手について詳しく述べていきたい。
モノクロ写真の表現力をプリントと比較
トップフォトでは、左からCX271、CG248-4Kと配置し、A3ノビモノクロプリントと比較してみた。モノクロとしてのグレーバランス、階調の再現性はCX271、CG248-4Kともに素晴らしい。プリントのトーンとよくマッチし、プリントと遜色ない。むしろ、シャドー部の描写においてはプリントよりもディテールが明瞭である。プリントと違い、自ら発光するモニターではダイナミックレンジが広くシャドーの再現性も良いのだ。
次に解像感に目を移してみると、CX271の画素密度は109ppi、CG248-4Kは185ppi、プリントではおよそ390ppiである。モニター全体が視野中心に収まるような鑑賞距離で見た場合、三者の解像感は一見同じように見える。しかし、50センチまで近づくと、CX271ではドットを感じるようになる。この距離ではCG248-4Kが最も解像感が高く感じる。実際に解像度が高いのはプリントの方であるが、プリントにはインクの滲みがあるのに対して、モニターには滲みがないためだ。
画像を表示し、同一の拡大率になるように、モニター面のごく一部を拡大撮影した。このページでは、これを縮小して掲載しているので、モアレが発生し双方の色が違って見えているはずだが、適切な解像度で表示すれば、双方ともモノクロである。CX271では、画素ピッチが荒く細かなディテールが表示されていないが、CG248-4Kではより細かなディテールが表現されている。
CG248-4Kの画素数は3840×2160なので、写真を全画面で表示した場合、およそ800万画素以上でモニターの必要とする解像度を大幅に上回る。それは2560×1440のCX271でも同じことだが、ドットが見えない鑑賞距離から見た場合でもCG248-4Kの方が解像感があるように感じる。音楽で言えばCDとレコードの違いのようなものかもしれない。
以上のようにCG248-4Kでは、モニターで写真を見るという行為が、プリントで写真を鑑賞するという行為と同等のものになったと言える。
EIZO製品のショールームである、EIZOガレリア銀座の写真展開催スペースではプリントでの展示に適した環境が整っていると同時に、4KのColorEdgeを使って写真を展示できるようになっており、すでに、多くの写真家がプリントとColorEdgeで個展を開催している。
このことはすでに、ColorEdgeが単なる表示装置ではなく、鑑賞に堪える表現のための装置になったことを意味していると思う。
そこで本稿でも、筆者の作品をCG248-4Kで表示したものを掲示する。これはCG248-4Kで表示したものをカメラで撮影したものだ。本来ならCG248-4Kで鑑賞してもらいたいものであるが、Photoshopで拡大表示してもらえばCG248-4Kの解像力やトーンの再現性の一端を感じてもらえるだろう。
作業用モニターとしての使用感を検証
ここまで、鑑賞に堪えるモニターということで話を進めてきたが、CG248-4Kは多くの場合、作業用のモニターとして使われるはずだ。CGシリーズのカラーマネージメントでの優位性や色再現性についてはあらためて語る必要はないと思うので、本稿ではもう一つ、使い勝手の面からもCG248-4Kを見てみたい。
高解像度であるということは、デスクトップが広がり、一度に多くの範囲を表示できるということである。左は筆者が常用しているCX271、右がCG248-4Kである。物理的にはCX271のほうが大きいが、デスクトップはCG248-4Kのほうが広い。
そこで、同じデータをCamera Raw Pluginで開き100%表示してみた。デスクトップが広くなる分、CG248-4Kのほうが広い範囲を表示していることがわかる。これが意味するところは作業効率の高さなのだ。
高品質の画像データにおいて、あるいはプリントデータを仕上げる時、シャープとノイズ軽減の処理工程は最も重要なポイントである。そしてその作業は、必ずdot by dotつまり100%表示で行なわなければならないが、その際シャープ処理とノイズ軽減のバランスは、100%表示で、なおかつ広い範囲を見てバランスを取らなければならないのである。つまり物理的な大きさもさることながらデスクトップの広さが重要な作業なのである。
デスクトップが狭ければ調整を繰り返しながら、ハンドツールで何度も場所を変えて表示しなければならないが、デスクトップが広ければ、表示場所の移動は最小限ですむのだ。表示解像度が4Kになってデスクトップが広がったことは、実利的な作業効率を高めてくれるのである。
その他の使い勝手も、「作業性」という点から見ても抜かりはない。まず、PCとキャリブレーションセンサーなど機能面での接続にはUSBポートを1つ必要とするが、規格はUSB 3.0となり、高速化が図られた。CG248-4K側には3つのポートがつくので、実質的にUSBハブとして実用的である。さらにそのうち1つのポートは、スマートフォンなどの高速充電用のポートになっており、大きな電流容量が確保されている。いまっぽい、とても使える装備である。
現在のCGシリーズの特徴でもあるが、キャリブレーションセンサーも内蔵されており、特に外付けのセンサーを必要とはしない。買ってすぐ使えるワンパッケージである点はありがたい。もちろん、プリンタプロファイルの作成や複数のモニターのキャリブレーションなど、より高度なカラーマネージメントを目指すためには外付けのキャリブレーションセンサーが必要にはなるが、プロユーザーであっても、多くのユーザーにとって、もはや必須のものではないだろう。
そのほか、ベゼルが狭くなったことや、ブランドロゴが特別なテクスチャパターンになり無彩色になったことも、細かなことだが歓迎すべき点だ。ベゼルの狭さはデュアルモニターとした際の画像のズレを最小にしてくるし、無彩色となったロゴは厳密な色管理作業時に視界の邪魔にならない。色を管理しコントロールすることに、細かな点においてまで妥協がない。
CG248-4Kは、長らくカラーマネージメントモニターを作り続けて来たEIZOならではの、歴史の上に成り立つ最高のモニターなのである。
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茂手木秀行 Hideyuki Motegi
1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。
個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」
デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/
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