2012年07月13日
世界初のモニター一体型ワークステーションHP Z1は、写真・映像・3DCGなど様々なクリエイティブの現場で使えるマシンだ。この企画では様々なクリエイターにZ1を使ってもらい、その使用感を聞く。
オールインワン型ワークステーション HP Z1
HP Z1 Workstation
HP Z1 Workstationは、27インチ液晶モニターと一体型のワークステーションで、最新のSandy Bridgeアーキテクチャーを採用したインテル® Xeon® プロセッサーを搭載している。圧倒的なパフォーマンスと省スペースを両立したHP Z1を、フォトグラファーの平山ジロウ氏に使用してもらった。
──フォトグラファーとしてコンピュータをどのような道具として捉えていますか。
平山 最近はバジェットが少ない仕事が増えているので、できるだけ撮影は速く、短くするようにしています。その反面、画像処理についての要求は非常に高くなっているので、カメラよりもコンピュータの方が長い時間付き合う道具になっていますね。コンピュータに向かう時間が長くなっているので、速いマシンや効率よく処理できるソフトは常に欲しいと思っています。
──現在、メインで使っているマシンは何ですか。
平山 以前はデスクトップのMacを使っていたのですが、ここ数年はハイスペックでプロユースの製品がなかなかリニューアルアされないので、主にiMacを使っています。僕に限らず、そういう人が増えているのではないでしょうか。
──昔はMacの新機種が出るたびにその速さが話題になっていましたが、最近ではそんな話も聞きませんね。
平山 確かに誰も興味を持たなくなってしまいました(笑)。それだけiMacの性能が上がったということなんでしょうけれど、ちょっと寂しい感じがします。
──今回 HP Z1を使っていただきましたが、いかがでしたか?
平山 最初に見た時は、iMacのように一体型で省スペース設計なので、スタジオでも事務所でも扱いやすいと思いました。それでいて、最新のインテル® Xeon® プロセッサーを搭載しているので、これはかなり期待できるなと思いました。
3630万画素のニコンD800でも全くストレスを感じない
P=平山ジロウ ST =小林未麗 HM=井出弓 Model =渡辺早織
HP Z1とニコンD800をUSB3.0で接続し、ニコンの専用ソフトCamera Control Pro 2を起動してティザー撮影を行なった。
平山 まず、スタジオでどこまで使えるかを試すため、カメラをつないでティザー撮影を行ないました。HP Z1には高速なUSB3.0が搭載されているので、カメラはやはりUSB3.0に対応しているニコンD800を用意しました。
D800は3630万画素あるんですが、驚くほど高速にシャッターを切れました。あんなに速いのは初めてです。驚きの体験でした。あそこまで速いと、撮影していてもかっこいいですよね。ファッションの撮影をやっている人にはいいんじゃないですか。
──具体的な数値で言うと?
平山 RAW+JPEGのモードで撮影したので、データの容量は両方合わせて約48MBくらいになります。30枚連続でシャッターを切ってみましたが、まったく引っかかることなく、約19秒でシャッターを切り終わり、PCへの転送が終わるまでが約30秒でした。
──3630万画素でその速さは驚異的ですね。
平山 100枚連続でシャッターを切るというテストもやりましたが、まったくカメラが止まりませんでした。速度のテストなので、普段よりかなり速くシャッターを切りましたが、それでも止まらないのはすごいと思いました。シャッターを押したい時に押せないというのは、フォトグラファーにとって非常にストレスになるのですが、それを感じさせないのはとてもいいですね。
──撮影した後に画像をチェックするのも速かったですか。
平山 ものすごく速いですね。ブラウザソフトで写真を選ぶと一瞬粗い画像が表示されるのですが、すぐにきれいな画像になるし、拡大しても待たされることがない。今回使ったHP Z1はストレージとしてSSDを搭載しているのですが、SSDはとにかく読み込みが速い。表示の速さを体感できるのがうれしいですね。
──普段使っているiMacと比べるとどうですか。
平山 普段は2010年に出た27インチのiMacを使っているのですが、このiMacだとカメラが止まることがあるので、ティザー撮影をやりたくない時があります。
このiMacのUSBは2.0なので、HP Z1のUSB3.0との比較をやってみました。USB2.0のiMacだと、18枚目あたりでシャッターがひっかかるようになって、30枚切り終わるまでに約37秒、転送には約68秒かかりましたから、圧倒的な差です。
比較テストの様子を動画で撮影したものがあるので、詳しくはそちらを見てください。
HP Z1とiMacでのティザー撮影を検証した動画(3分15秒)。
RAW現像のスピードもiMacを大幅に上回る
──Photoshopも速いですか。
平山 速いですねえ。Photoshop CS6を起動するのに、iMacだと15秒かかりますが、HP Z1はわずか3秒でした。これだけでもすごく速いと思ったのですが、RAW現像の速度の検証もやってみました。Photoshop CS6のCamera Rawで150カットのRAWデータを現像してみたのですが、結果はHP Z1が約570秒、iMacが約910秒。RAWデータ1枚あたりそれぞれ約3.8秒、約6.1秒でした。
──だいたい1.6倍のスピードの違いがありますね。
スタジオ内にHP Z1と27インチのiMacを持ち込み、速度の比較を行なった。
──それぞれのマシンのスペックは?
平山 HP Z1は3.5GHzクアッドコア・インテル® Xeon® プロセッサー、16GBメモリ。iMacは2.93GHzクアッドコア・インテル® Core™ i7、8GBメモリです。Z1のストレージはSSD、iMacはHDDという違いもありますが、SSDの書き込み速度はあまり速くないので、今回の結果にはあまり影響しないと思います。またRAW現像はメモリ容量よりもプロセッサーに左右されるので、この差は単純にプロセッサーの違いだと思います。
なにぶん手持ちのiMacとの比較なので、細かい条件を厳密に揃えることはできていません。コンピュータに詳しい人からするとそういう環境で比較するなと怒られてしまうかもしれませんが、でもそれだけに「普段使っている機材とこんなに違うのか」とリアルな驚きを感じましたね。
──スピード以外の違いはどうでしたか。
平山 HP Z1のモニターは27インチなので、サイズ的には今使っているiMacとほぼ同じですが、Z1の方がかなり重く感じました。
──27インチのiMacの重量が13.8kg、HP Z1が21.3kgです。
平山 見た目は、正面から見るとそんなに違いを感じないんですけど、裏側から見るとHP Z1は少し威圧感がありますよね。
──Z1のスタンドの重量は5.9kgもあります。
平山 それだけHP Z1のスタンドは大きくてしっかりしているとも言えますが、もう少し軽くなってほしいですね。それからUSBのポートの配置ですが、本体裏側のポートはちょっと使いにくいのですが、それはiMacも同じようなものです。HP Z1はモニターの横にもポートがあるので、そこはいいなと思いました。
IPSの液晶モニタは大画面で視野角も広く、複数の関係者で写真を確認する際に威力を発揮する。
──モニターの品質はどうですか。
平山 HP Z1もiMacもIPS方式の液晶パネルですが、HP Z1のほうがより視野角が広い感じがしました。スタジオ撮影だと、いろんなスタッフが集まってみんなでモニターを見ることが多いんですが、これくらいの画面サイズと視野角があると、どこから見ても色が変わらないのでいいですね。
発色も悪くないと思いますが、デフォルトでは輝度やコントラストがかなり高めなので、調整が必要です。HPのサイトから「HP My Display」というユーティリティソフトをダウンロードすると、輝度やコントラストを調整できるようになります。
ただし、このツールを使ってもモニターの色温度を6500K以下にはできないので、そこは残念ですね。i1などのカラーマネジメントツールを使う方法もありますが、色温度を5000Kにするだけで、写真の色はだいたい合うようにようになるので、なるべく早く5000K表示に対応してもらいたいと思います。
ワークステーションならではの耐久性、信頼性が重要
──OSの違いについてはどうですか。
平山 まだ1ヵ月しか使っていないので、正直に言うとWindowsにはまだ慣れていないですね(笑)。でも慣れてしまえばきっとなんとかなると思います。OSの違いといっても、たとえばUSBをマウントした時にどこに出てくるのとか、そんな単純な話じゃないですか。Photoshopのショートカットキーも、MacのOptionキーがAltキー、MacのCommandキーがCtrlキーということを覚えればいいわけだし。
iMacとHP Z1の違いは、そういったOSの違いよりも、パソコンとワークステーションの違いの方が大きいような気がします。
── と言いますと?
平山 ワークステーションはパソコンよりCPU性能やグラフィックス性能が高くて、価格もかなり開きがありましたが、最近ではその差がだんだん小さくなって、iMacとHP Z1は一見すると大きな違いがないように見えます。
でも、そもそもワークステーションというのは、製品開発や設計部門向けのコンピュータで、たとえば車の強度の解析とか衝突の解析とかを行なうためのものだったんです。そういう用途では1日24時間電源を入れっぱなしで1週間や2週間ずっと計算し続けないといけないので、耐久性や熱の問題はパソコンとは比べ物にならない性能が要求される。電源一つをとっても、その中に入っているパーツは全然違うそうです。
──24時間使う環境でも耐えられるような設計なんですね。
平山 そういった基本設計の違いが、信頼性の違いにつながっていると思うんです。われわれフォトグラファーは1日中コンピュータの電源を入れっぱなしの状態で使うので、そういった信頼性、安定性は大事です。そのワークステーションが液晶モニターとの一体型になって、ここまでコンパクトになって、というのがHP Z1という製品の本質だと思うんです。
──そう考えると、HP Z1のすごさがよくわかります。しかも、これだけ速いとなると、もう手放せないですね。
平山 撮影でも現像でも画像処理でも、Z1をずっと使い続けたいですね。最近はムービーの仕事も増えているので、動画編集でも威力を発揮しそうで、本当に楽しみです。ちょうど、これから撮影に取りかかるミュージックビデオがあるので、その現場でHP Z1を使ってみたいと思います。
──それでは次回は動画編ということで、またHP Z1の話を聞かせてください。ありがとうございました。
関連情報
日本HP ワークステーション 製品ページ
HP Z1 Workstation
27インチの大画面オールインワン型ワークステーション。3.3GHzのXeon E3、8GBメモリ、1TB HDD、DVDドライブのスタンダードモデルの希望小売価格が税込252,000円。3.5GHzのXeon E3、16GBメモリ、300GB SSD×2、Blu-rayドライブのハイエンドモデルが税込588,000円。詳細
平山ジロウ Jiro Hirayama
1967年埼玉県浦和市生まれ。大手広告制作会社のフォトグラファーを約11年勤め、1999年独立。広告写真(人物・商品)を中心に幅広い撮影活動を展開する一方、2009年より動画制作を開始。ミュージシャンのPVやWeb広告など様々な動画制作を担当している。 http://www.jiro-hirayama.com/
- HP ZBook x2は液晶ペンタブレットとして使うことができて、持ち運びにも最適な分離型ワークステーション
- HP Z2 Mini G3は快適に4K編集ができて、撮影現場にも持ち込めるミニワークステーション
- HP Z820は4K/60Pの映像制作には必須のマシン
- ハイエンドの4K動画編集マシンにふさわしいHP Z820
- モバイルワークステーションZBook 17はデスクトップ並みの強力なパワーが魅力
- 24コアのインテル® Xeon® プロセッサーを搭載したZ820と、最新のモバイルワークステーションZBook 17をテストする
- HP Z1は液晶モニターとの一体型なので撮影の立ち会いに最適
- フォトレタッチから動画制作まで、全てに高い性能を発揮するHP Workstation Zシリーズ
- 新しいHP Workstation Zシリーズは以前より圧倒的にパワーアップしている
- 次世代の4K映像制作に必要なマシンパワーが最大の魅力
- 一眼ムービーの撮影現場で簡単な動画編集がサクサクできる
- スタジオでのティザー撮影やRAW現像の速さは驚異的だ