2014年03月12日
HPワークステーション Zシリーズのラインナップに持ち運びができるモバイルワークステーションZBookが登場した。ZBookを試用したクリエイターに、その使用感を聞く。
HP ZBook 17は、第4世代インテル® Core™ プロセッサーを搭載したモバイルワークステーションで、4K動画などの重たいデータのハンドリングに適している。今回はフォトグラファーのカツヲ氏に、4Kの現場でZBook 17を試してもらった。
ムービーを本格的にやろうとするとワークステーションが必要になる
カツヲ氏が使用しているHP ZBook 17
──普段はどういう仕事をされていますか。
カツヲ氏(フォトグラファー)
ファッション、広告、ポートレート、ミュージシャンなどの写真を撮影する一方で、最近ではムービーの撮影や監督も数多く行なっている。
カツヲ 写真の仕事だとWebまわりの撮影が多くて、あとはテレビドラマの番宣ポスターとか、演劇や音楽関係の撮影をやっています。ムービーの方も、やはりWebの動画やミュージックビデオなどをやっていて、他には企業のインタビュー撮影などが月に何回か入ってきます。
──ムービーの仕事を始めようと思ったきっかけは?
カツヲ もともと僕は映画が大好きで、写真と映画のどっちの道に進むか迷っていたぐらいなので、EOS 5D Mark IIが出た時に「これだ!」と飛びついたんです。ここでムービーを始めないと、たぶんムービーの仕事は一生できないだろうと思いました。
最初のうちは、知り合いで音楽をやっている人のミュージックビデオを撮ったり、簡単なショートムービーを作って周りの人に見てもらうようにしました。映像関係の知り合いのつてをたどってムービーの現場に撮影で入ったりもしました。
そのうち、インタビューの撮影やWebムービーの仕事をやるようになって、最近ではCS放送の番組でドラマ仕立てのシーンを撮らせてもらうなど、去年の終わりぐらいからムービーの割合が大きくなっています。
──カメラは何を使っていますか。
カツヲ 自分で持っているのはEOS 5D Mark IIIと7Dですが、ムービーでは企画によっていろんなカメラを使い分けています。ムービーの場合はだいたいレンタル機材を利用しますね。
──今まで一番規模の大きいムービーの仕事は?
カツヲ 去年制作したフランク・ミューラーという時計メーカーのブランドストーリーです。フランク・ミューラーの歴史や代表的なモデルを紹介する12分のムービーで、歴史のパートに関しては古い写真などを提供してもらいましたが、時計を紹介するパートは新たに撮りました。
これは撮影だけでなく監督と編集も自分でやっているので、ナレーション構成やナレーター、音楽など、スタッフのキャスティングも全部やりましたし、実際に制作に入ってからは1ヵ月くらいずっとこの仕事をやっていました。
FRANCK MULLER Brand Story Movie
このときカメラはRED EPICとEOS-1D Cを使ったんですが、テスト撮影したEPICのデータが重くて、自分の使っていたiMacではまともに動かなかったんです。これはもしかしたらWindowsに買い替えた方がいいのかなと思って、デジタルシネマのセミナーに参加して勉強したり、講師の方にメモリやグラフィックボードは何を積んだらいいのかを教えてもらって、HP Z420 Workstationに乗り換えました。
──Z420に乗り換えてどうでしたか?
カツヲ あんなに重かったEPICのデータがちゃんと動きましたからね。構成がだいたい決まってからはフルHDにリサイズして作業をしましたが、最初の段階ではEPICの4KのデータをそのままPremiereのタイムラインに並べて、少しトリミングしたり、ズームしたり、スタビライザーの機能を使って細かいブレを補正したり、いろいろと試行錯誤をしています。スタビライザーの動作はすごく重たくて、普通のPCだと1時間以上かかるようなものが、Z420では5分とか10分で終わったので、すごく速さを実感しました。
Z420はサクサク編集できるし、レンダリングも速いですね。以前は、レンダリング作業は時間がかかるので夜中の寝ている間にやるようにしていましたが、Z420では、フルHDのレンダリングが1〜2時間で終わるので、作業効率がすごく良くなりました。たまに人のパソコンを使って作業をするとイライラしたりしますね(笑)。
写真の仕事もZ420でやっていますが、RAWデータの現像も速くていいですよ。
──周りでWindowsを使っている人は多いですか?
カツヲ 写真系の人では少ないかもしれないけど、ムービー系のフリーランスの人はWindowsが多いと思います。Final Cut Proを使っている関係で制作会社などはMacが多いんですが、最近はPremiereへの移行が進んでいるので、MacかWindowsかというのはあまり関係なくなっていると思います。
動画の撮影現場ではデータのバックアップに活用
──今回はノートタイプのモバイルワークステーションZBook 17を使ってもらいました。いかがでしたか?
カツヲ 処理速度に関してはZ420と同等か、それ以上の感じがします。ノート型なのに、長時間使っても熱が出ないのもいいですね。今はZBook 17をメインに使っていて、Z420はしばらく起動していません(笑)。これ1台あれば、どんな仕事でも問題ないと思います。
カツヲ氏の自宅のデスクには、27インチのモニターとZBook 17が並ぶ。
──具体的にはどんな使い方を?
カツヲ ムービーの撮影現場に持って行って、撮った動画のチェックとデータのバックアップに使っています。4Kカメラを使った撮影をやったことがあるんですが、4Kはデータ量が膨大なので、カメラのメモリカードがすぐいっぱいになります。PCにつないだ外付けハードディスクにコピーして、メモリカードを空にしないといけないんですが、それがかなり速かったですね。
──ハードディスクはUSBですか?
カツヲ いえ、Thunderboltです。ZBookにはThunderboltが搭載されているので、256GBメモリカードがほんの30~40分でコピーできました。データの転送速度が全然違います。
Thunderboltインターフェイスのポータブルハードディスク。
僕が持っているのは1TBのハードディスクですが、ムービーの仕事をやっていると1TBなんてすぐに一杯になってしまう。本当はもっとたくさんあるといいんですが、Thunderboltのハードディスクはなかなか値段が下がらないですよね(笑)。
──撮影現場ではこのハードディスクにバックアップして、現場から帰ってきたら、今度はそのまま編集ですか?
カツヲ ハードディスクをZBookにつないで、そのまま編集作業をしています。速度的には内部のハードディスクと同じぐらいだと思います。今まで外付けハードディスクのデータは一旦PC本体にコピーしてから作業して、それをまた戻していたと思いますが、Thunderboltではその必要がないので、ものすごく便利です。
──ほかにZBook 17で注目したところはありますか。
カツヲ 普段は27インチのモニターをつないで大きな画面で作業しているんですが、ZBook 17だけで作業するときでも、画面が17インチなので作業はやりやすいですね。それから液晶パネルがIPSなので視野角が広い。たとえばディレクターの人と打ち合わせをするようなとき、画面を見ながら「ここの色はこうしましょう」という話をするじゃないですか。ZBookは斜めから見ても色が変わらないですね。
4Kカメラで撮影するメリットとは?
──さきほど4Kカメラの話が出ましたが、4Kカメラは結構使っていますか?
カツヲ ZBookを最初に使ったのが、三味線プレーヤー上妻宏光さんのミュージックビデオなんですが、そのときソニーの4KカメラPXW-Z100を使いました。それから、ヒストリーチャンネルの「北原白秋の妻 俊子」という番組では、同じソニーのPMW-F55で撮影しました。F55は僕のパーソナルワーク「セルジュ ルタンスに憧れて」でも使っています。
──4Kカメラを使う理由は何でしょうか?
カツヲ 現状ではフルHDで納品することがほとんどなので、4Kで撮っても仕方ないという意見があるかもしれませんが、僕の中では4Kの使いどころが大体決まっています。
まず4Kのカメラはダイナミックレンジが広いので、フルHDにダウンコンバートしてそのまま納品してもきれいですし、暗いシーンのノイズ感などはHDにすることで目立たなくなります。
画面の一部をトリミングして拡大できるのもメリットの一つだと思います。上妻宏光さんのMVでは2台のZ100を使っていますが、引いた絵で撮っておけば後からトリミングで寄りの絵も作れるので、一度に4台を回したのと同じことになり、撮影現場はすごく時間が短縮できました。すべてのカットを4Kで撮っているわけではなく、使いどころを決めて部分的に4Kで撮っています。
上妻宏光 featuring 小野リサ「ビリンバウ」MV
このミュージックビデオはソニーPXW-Z100の2カメ体制で撮影した。
──トリミングを前提に4Kカメラで撮るんですか。
カツヲ そういう例は多いですね。撮影した後からクライアントに「このカットを替えたいんだけど」と言われることが結構あるので、そういう時にある程度自由がきくというか。
フランク・ミュラーの時は、トリミングした絵をパンニングしてつなぐこともやりました。デジタルのパンニングなので、実際にカメラを振るのとはちょっと違いますが、Premiereでも他のソフトでもできると思います。
──「北原白秋の妻 俊子」でF55を使った理由は何ですか。
カツヲ これはテレビ番組なのでほとんど4KではなくフルHDで撮影していますが、F55を使った理由としては、RAWデータで撮れるデジタルシネマカメラだからというのが大きな理由です。監督が映画畑出身で、ドラマ仕立てのシーンがたくさんあるんですが、コントラストと発色が柔らかいフィルムルックの絵にしたいという監督の意向があったので、RAWデータで収録しています。制作会社が東北新社だったので、そちらで現像と編集をやってもらって、僕は撮影だけを担当しました。
ヒストリーチャンネル「北原白秋の妻 俊子 ─波瀾に満ちた愛の軌跡─」
この作品はソニーPMW-F55を使ってRAWデータで撮影している。
──じゃあ、撮影現場にスタッフは大勢いたんですね。
カツヲ いえ、ヒストリーチャンネルはもともとドラマを作るような放送局ではないので、バジェットはそんなに大きくないんです。それにもかかわらず明治・大正時代を舞台にした再現ドラマを撮ったので、衣装費だけでものすごい金額になってしまって、現場には人がいませんでした(笑)。でも、僕もいつか劇場映画を撮りたいと思っているので、映画のような撮影ができて楽しかったですけどね。
ドラマのパートは3日間、インタビューも3日で撮影しましたが、RAWデータだったので普通のフルHDよりもデータ量は多くなります。1日の撮影でだいたい200〜300GBぐらい、それをThunderboltのハードディスクでバックアップしていました。
ZBook 17が1台あれば、4Kカメラで撮影することに躊躇しなくなる
──「セルジュ ルタンスに憧れて」というのはどんな作品ですか。
カツヲ セルジュ ルタンスという資生堂の80年代のテレビCMや広告写真で活躍したアーティストがいるんですが、僕は彼が作った映像が大好きで、そのオマージュとして作りました。撮影はやはりF55ですが、基本的に全て秒間240コマのハイスピードで撮影しています。F55の4Kは秒間60コマまでしか撮れないので、2048×1080の2Kサイズになっています。
パーソナルワーク「セルジュ ルタンスに憧れて」
この作品はソニーPMW-F55のハイスピード撮影機能をフルに活用している。
このハイスピード撮影のデータは扱いが難しくて、現状では180コマ以上で撮るとそのままPremiereには持っていけません。一度ソニーの現像ソフトで書き出す必要があるんですが、ProResファイルへの出力がMac版だけしかできないという事情がありまして、やむなくMacで現像しています。
──ややこしいですね。Premiereが180コマ以上のデータに対応すれば済む話なんでしょうけど。
カツヲ でも、ZBookのPremiereでの作業自体は、秒間240コマのデータでも重くはなかったですね。ソフトウェアで逆再生をかけたり、照明効果エフェクトで背景を暗く落としたりして仕上げています。
表現的な部分ではセルジュ ルタンスのCMを見ながら、どういう動きをしたらセクシーに見えるかを研究したり、作品の中に出てくる仮面を自分で作ったりしていますが、最終的には特殊メイクの人がいないと厳しいなという感じもあって、まだまだだなと反省しています。でも、こういう試行錯誤をしないと次のステップには行けないので、今後も作品づくりは続けていくつもりです。
──お話を聞いていると、4Kカメラのメリットはたくさんあるんですね。
カツヲ 4K解像度とかダイナミックレンジが広いということの他にも、RAWデータだったり、ハイスピード撮影だったり、いろんなことができるのが4Kのデジタルシネマカメラだと思うんです。メーカーや機種によって機能が違うので一概には言えませんが、4Kカメラを使うことで確実に表現の幅は広がると思います。
──いずれにしても、撮影したデータが重たいというのは共通していますますね。
カツヲ そうですね。でもデスクトップ並みのスピードがあるZBook 17を使っていると、4Kカメラで撮影することに躊躇がなくなります。ZBook 17に高速ストレージのSSDが搭載されたらもっとスピードが速くなるでしょうし、ソフトウェアの方も4K対応がどんどん進むでしょうから、これからますます楽しみです。フルHDのムービーを編集するように、気軽に4Kカメラのデータを編集できるようになってほしいと思います。
撮影:坂上俊彦
関連情報
日本HP ワークステーション 製品ページ
HP ZBook 17
最新のインテル®「Haswell」アーキテクチャー採用、第4世代インテル® Core™ i7 プロセッサー・ファミリーを搭載。最大32GBメモリ搭載可能。ハイエンドプロフェッショナルグラフィックス。LEDバックライト採用の1920×1080(FullHD)17.3インチワイド液晶モニタ搭載。最高峰のハイエンドモバイルワークステーション。詳細
HP Z420
拡張性・信頼性を備えたエントリーワークステーション。最新のインテル®「Ivy Bridge」アーキテクチャーを採用したインテル® Xeon® E5-1600v2ファミリー搭載。最大8コア(16スレッド)CPU、ハイエンドグラフィックス、最大64GBメモリ搭載可能。最小構成価格は140,000円(税別)から。詳細
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- HP Z1は液晶モニターとの一体型なので撮影の立ち会いに最適
- フォトレタッチから動画制作まで、全てに高い性能を発揮するHP Workstation Zシリーズ
- 新しいHP Workstation Zシリーズは以前より圧倒的にパワーアップしている
- 次世代の4K映像制作に必要なマシンパワーが最大の魅力
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