HP Zシリーズの実力

HP Z820は4K/60Pの映像制作には必須のマシン

デジタル・フロンティア

4K/60Pで制作されたパナソニック4Kプロモーション映像「リベラシオン」の制作現場は、インテル® Xeon® プロセッサーとインテル® SSDを搭載したHPワークステーションが全面的に支えていたと言っても過言ではない。制作会社デジタル・フロンティアのプロデューサー井筒亮太氏、テクニカルディレクター渡辺伸次氏をはじめ、制作に関わったスタッフに話を聞いた。

データが重たい4K/60Pは通常の環境では動かない

img_products_hp_z800_dfx_01.jpg パナソニック4Kプロモーション映像「リベラシオン」

──「リベラシオン」という作品は4K/60Pで制作されたとのことですが、その理由を教えて下さい。

img_products_hp_z800_dfx_03.jpg 井筒亮太
プロデューサー

img_products_hp_z800_dfx_04.jpg 渡辺伸次
テクニカルディレクター

井筒 私たちが日頃テレビで見ている映像のフレームレートは30P、つまり毎秒30フレームで構成されています。60Pはその倍の毎秒60フレーム。スポーツなど動きの速い映像でも滑らかに再現できますが、その一方でデータ量は膨大となり、4K/60Pのデータ量はフルHDの8倍にもなります。それだけに制作するのは大変で、弊社としても大きな挑戦でした。

今回の「リベラシオン」は、パナソニックさんの4Kプロモーションのために制作したものです。パナソニックさんの4Kテレビは他社に先駆けて60P対応を前面に打ち出していましたので、その優れた描画性能を表現するために4K/60Pで作ることが大前提でした。

パナソニックさんからは、これまでの4Kコンテンツにはない新しいテイストの映像にしてほしいという要望がありましたので、弊社が得意としているCGやVFXを駆使して、クリエイティビティの高い作品に仕上げようと考えました。

渡辺 撮影もただ60Pで撮影するのではなく、女性ダンサーの激しい動きを最大10倍のハイスピードで捉えています。60Pの10倍、毎秒600フレームですから、撮影データの量はかなり膨大になります。この実写素材を3DCGと合成したり、エフェクトを加えるのも全て4K/60Pで行なわなければなりません。

今回はこういった技術的なチャレンジが多かったので、私がテクニカルディレクターの立場で参加して、撮影からポスプロまでワークフロー全体の設計を行ないました。また、4K映像に精通したパナソニック映像さんのプロデューサー、スタッフの方々とも協力しながら、このプロジェクトを進めていきました。

──4Kのハイスピード撮影に加えて、CGやVFXでも4K/60Pの重たいデータを扱うとなると、作業がかなり大変そうですね。

井筒 4K実写データの解像感とビット数を保持したまま、4Kで完パケをしなければならなかったので、CG素材を4Kでレンダリングしたり、コンポジットでも4K実写素材にアクセスする必要があり、ポスプロワーク全般で高いスペックのマシンが必要でした。

もともとウチはそれなりのハイスペックマシンを使って作業しているんですが、4K/60Pはデータが重すぎて、通常のストレージ環境ではまともに作業ができません。今回はHPさんとインテルさんにご協力いただいて、インテルSSDでRAIDを組んだHP Z820を2台使うことができたので、大変スムーズに作業を進めることができました。

渡辺 実際にポスプロをやってみた感じでは、「4KなんてフルHDより少し重いくらいだよね」という安易な認識でいると、後で痛い目に合うなという感想です。もしも今回のZ820がなかったとしたら、まったく作業が進まなかっただろうと思います。

HP Z820にSSDのRAIDを搭載してポスプロワークを行なった

img_products_hp_z800_dfx_06.jpg 3DCGやコンポジットで2台のZ820がフルに稼働した。Z820でなければ4K/60Pのデータは動かなかった。

──マシンの構成は?

渡辺 2台のZ820とも、CPUは3.1GHz・8コア×2、メモリは128GB、システムディスクがSSDでした。データ用ストレージのRAIDの構成は少し違っていて、1台が480GBのインテルSSD 730×4枚、もう1台はPCIeバス直結で800GBのインテルSSD 910シリーズ。PCIeのSSDはかなり高速だったので、こちらをコンポジションのメインマシンとして使いました。

主に3Dワークとコンポジションで使用しましたが、今回のマシンスペックがいちばん効いたのはコンポジションの部分で、高速なRAID、大容量メモリ、ハイエンドのグラフィックボードが全部揃っていたので、これなくしては作業ができないくらいの存在でした。

img_products_hp_z800_dfx_05.jpg インテルSSD 730シリーズ×4枚でRAIDを組んで高速化した。写真はそのうちの1枚を抜き出したところ。インテルSSDの詳細はこちら。

ハードディスクをいっぱい積んでRAID 0でストライビングしたとしても、転送スピードが出ないので使い物にならなかったでしょう。今回インテルのSSDでRAIDを組むことができたのは大きいですね。

それからメモリの量。今までは16GBぐらいのマシンで作業するのが普通だったと思いますが、4K/60Pではプレビューさえ回らない。今回128GBを搭載したマシンを用意してもらえたので、かなりストレスなくできるようになりました。

理想的なことを言えば、ファイバーチャネルの高速ネットワークを社内に構築して、ネットワークストレージに作業データを置いて、それに対してみんながアクセスできるともっと効率は上がると思います。ただし実際にそれをやると数千万円単位の費用がかかるので、過渡期の今としてはキャッシュ的にSSDを利用して、そこに作業データを入れておく。それに加えて、大容量ハードディスクで大量のデータを保持するというマシン構成が必要だなと感じました。

井筒 普段弊社の作品や仕事のほとんどは、コンポジット作業もあるんですけど、それまでの過程が長いですね。CG素材を作ることがメインの仕事が多くて、ネットワークに素材を置きつつ、みんなでアクセスをして作業していくことがほとんどなんです。

今回のように4K実写素材を使ったコンポジットとなると、現状ではどうしてもローカル環境での作業が必須になってきます。今後4K、8Kのコンテンツを作ることが当たり前の時代になると、いま渡辺から話があったような高速ネットワーク構築の必要性が出てくると思います。その辺は弊社の今後の課題ですね。

渡辺 実際にはこの2台だけでは足りなかったので、普段使っているマシンにもSSDのRAIDを追加してなんとか使えるようにしました。ただマシンスペックの関係でソフトウェアRAIDの環境しか構築できなくて、それだと転送レートの上限があまり高くない。4Kでストレスなく再生させるというのは、やはりHP Z820くらいのハイスペックマシンじゃないと厳しいです。

井筒 4Kの実写素材をエディットして、カラーグレーディングして完成というだけの作品であれば、ここまでの環境は必要ないかもしれない。でも今回の「リベラシオン」のようにCGを使った作品となってくると、本当にマシンスペックが肝になってくるというのがわかりました。

今まで以上に細部が見える4Kではマシンスペックが重要

──ポスプロの実作業を担当された津田さんと守屋さんはいかがですか?

img_products_hp_z800_dfx_08.jpg 津田晃暢
CGアーティスト

img_products_hp_z800_dfx_07.jpg 守屋雄介
CGディレクター

津田 普段のマシンでフルHDの作業をしている時よりも、Z820で4Kの作業をしている時の方が体感的には速かったような気がします。普段のマシンとZ820のスピードの違いを数値で言うのは難しいんですが、体感的には10倍ではきかないような気がします。 「リベラシオン」が終わった後に、普段のマシンに戻って映画の仕事をビスタのHDサイズでやったんですが、ものすごく重たく感じました。自分の感覚がおかしくなったのかなと思ったほどです。

──ちなみに普段のマシンは?

津田 1年くらい前のHP Z620で、クアッドコアのデュアルCPU、メモリは16GBです。CG用のマシンとしては結構いいスペックだと思います。

守屋 僕は最初、4K実写素材からHDサイズに落とした軽いデータで作業すればいいと思っていたんですが、霧や水などのパーティクルを4Kに戻した時に、「あ、ここにもあったのか」という感じで、HDでは見えなかった小さなパーティクルも出てきました。結局最終的な絵の確認は4Kでせざるを得なくなって、でもそういう時にマシンが速かったので、すごく助かりました。

井筒 4Kだと、普段気にしなくていい細部の領域まで見えてしまいます。今回のコンテンツは4Kテレビでどこまで細部が見えるかが重要なので、マシンスペックは重要でした。

──3DワークとコンポジットはCINEMA 4DとAfter Effects CCで作業されたということですが、それには何か理由はあるんですか?

津田 今回の作品では、女性ダンサーの周りでダイナミックに動く赤い糸のCGがポイントになっています。CINEMA 4Dはシュミレーションが早く、糸の表現のトライアンドエラーに向いているだろうなと思いました。それから、CGのデータをAfter Effectsに持っていってコンポジットする時に、CINEMA 4Dのカメラデータを気軽にエクスポート、インポートできるというところも大きかったです。

守屋 僕たち2人はCINEMA 4DとAfter Effectsをメインツールにして、それぞれCINEMA 4Dでヘアーのシミュレーションを回している間に、After Effects CCで別カットのコンポジットを進めるとか、同時進行でずっと作業をやっていました。

渡辺 After EffectsではマルチCPUやグラフィックボードのアクセラレーションも効くので、Z820のスペックは今回の作業にすごく合っていましたね。

After Effectsでは、プレビューする際、マルチCPUに割り振る時にしばらく時間がかかるんですよ。で、しばらくしてからバババッと作業が進むんですけど、尺の短いカットのときはシングルCPUで見ていったほうが速いという状況も起こります。

個人的にはいつも自分はマルチにしているんですけど、現状ではAfter Effectsの設定、メモリの割り振り方とかもノウハウが必要になってくると思います。今後はソフトウェアの開発が進んで、それも解決していくんじゃないかと思いますが。

撮影からポスプロまでZ820がフルに活躍

img_products_hp_z800_dfx_09.jpg 撮影現場にZ820を持ち込みRAWデータを現像し、グリーンバックのキーイングの状態等をチェックした。

撮影から完パケまでのワークフロー
img_products_hp_z800_dfx_02.png 撮影からポスプロまで、多くの工程でHP Z820を使用して作業を行なっている。 ※クリックして拡大表示


──Z820はポスプロワーク以外でも使いましたか?

渡辺 撮影現場にも持ち込みました。今回の4K/60P、しかもハイスピード撮影というのは、フォーカスの精度がものすごくシビアに要求されますし、通常のハイスピード以上に光量が必要なので、世界的に見ても難易度が高い撮影だと思います。しかも4Kテレビで暗い部分まできれいに見せる必要があったので、撮影は全てグリーンバックで行なって、後処理できれいな黒を作っています。

撮影した素材をもとにしたポスプロワークをスムーズに進めるためには、撮影現場でフォーカスや、グリーンバックの抜け具合などを目で確認する必要があり、そのためにHP Z820を使用しています。

──4KカメラのRAWデータをZ820で現像したんですか。

渡辺 そうです。今回は2台のカメラを使っていて、ハイスピード撮影用のFT-ONEは別のPCで現像した16bit DPXファイルをもらって、グリーンの抜きカットやフォーカスのチェックをやりました。60Pのノーマルスピード用のF65に関しては、RAWデータをSpeedGradeやDavinci Resolve、ソニーの純正ソフトなどを使って現像して、どれが一番いい結果になるかっていうのをその場で検証しました。

──他の現場でもマシンを持ち込んでRAWデータを現像したりするんですか。

渡辺 普通は事前にテスト撮影したもので画質をチェックするので、本番で現像まではしません。今回はFT-ONEのテスト撮影ができなかったので本番でチェックする必要がありましたし、F65はHDのモニターアウトしかないので現場で適時、現像して4Kテレビでフォーカスを確認しました。

今回の作品は4Kテレビで上映するのが前提なので、フォーカスについては通常の仕事以上に厳密さが要求されました。

──Z820のおかげで撮影がスムーズに進んだということですか。

渡辺 そうですね。グリーンを抜いて黒バックにした状態を確認したり、スカートの透け具合や髪の毛の表現などを、撮影に立ち会ったクライアントさんにすぐ見せることができました。他のPCだったらかなり時間がかかってしまったと思います。

通常のHD完パケの仕事なら、4K撮影のノウハウがたまったり4Kのモニタリング環境が改善されれば、そこまでしなくてもいいと思うんですけど、今回のような4K完パケという特殊なケースでは、Z820のようなハイスペックマシンはどうしても必要でした。

井筒 今お話ししたようにHP Z820は撮影現場でのRAW現像や画像の確認作業にも使いましたし、ポスプロワークでは4K DPXデータへの変換、オフライン編集、キーイング、3Dワーク、グレーディング、コンポジットなど、ほとんどの工程で使っています。今後4K、8Kの仕事に対応していくためには、このクラスのマシンは必須だなと感じさせられましたね。


関連情報
日本HP ワークステーション 製品ページ

HP Z820

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