HP Zシリーズの実力

新しいHP Workstation Zシリーズは以前より圧倒的にパワーアップしている

アマナシージーアイ

Z420、Z620、Z820などHPワークステーション Zシリーズは写真・映像・3DCGなどの現場で使える最先端のマシンだ。Zシリーズを試用した様々なクリエイターに、その使用感を聞く。

クルマや家電の業界では、設計用のCADデータからフォトリアルな3DCGが作られ、広告やカタログなどに活用されている。この「デザインビジュアライゼーション」の分野でトップを走る制作会社アマナシージーアイの岡田篤史、佐々木貴章の両氏に、高速なインテル®Xeon®プロセッサーを搭載するHP Z820、HP Z420を使用してもらった。

設計用のCADデータから高品質なビジュアルを制作

img_products_hp_zseries02_01.jpg 上の作品はアマナシージーアイ自主制作。フェラーリ458イタリアのボディはイチからモデリングしたもので、3ds Max / V-rayによるフルCG作品。

──まずアマナシージーアイの業務について教えてください。

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写真上:岡田篤史氏(制作推進部マネジャー)、写真下:佐々木貴章氏(CG制作部ディレクター)。

岡田 3DCGというと、VFX映画のように実際に存在しないものを作るイメージがあると思いますが、弊社ではCADデータから3DCGを用いて、製品プロダクトを制作することに特化しています。CADを使うことで正確にビジュアル化し、さらに、質感とライティングを作り込むことでフォトリアルな3DCGを追求しています。設立してまだ3年半の会社ですが、3DCGのデザイナーが30名、Photoshopで仕上げを行なう2Dのスタッフが10名います。

──お二人のお仕事は?

岡田 私のほうが3Dをやっていて、こちらにいる佐々木が2Dでの仕上げを担当しています。

佐々木 ですので今日は、3DCGについては岡田から、Photoshopについては私からお話させていただこうと思ってます。

──どんなビジュアルを制作していますか。

岡田 クルマ、それから家電、精密機器などが多いですね。媒体としては海外や国内のカタログ、マス広告などに使われています。また、静止画だけでなくムービーの仕事もけっこう手がけていて、展示会のプロダクトの映像であったり、CMの映像もいろいろ作っています。

──クルマ関係の広告やCMでは、撮影からCGに置き換わっているという話をよく聞きますが、やはりそういう状況なんですか。

岡田 完全ではないんですけれど、メーカーさんによってはCG化が進んでいます。自動車の場合は撮影用のカットボディを作ったり、未発表のクルマをロケ用に運搬することのコストやリスクを軽減するためにも、他のプロダクトよりも前からCG化が進んでいる業種だと思います。

──背景から製品まですべてCGで作るんですか。

岡田 用途にもよりますが、アマナグループではストックフォトも扱っているので、クルマはCGで背景はストックフォトということもあります。ただしストックフォトだとクルマとアングルが合わないこともありますので、そういう場合は背景もすべてCGで作ります。それ以外にも、グループ内に広告写真を手がけるフォトグラファーがたくさんいるので、彼らが撮影してきた背景に、クルマのCGを合成することもあります。

──CGと背景の合成は佐々木さんたちのチームが担当されるんですか。

佐々木 岡田が3Dで仕上げたものを、背景と合成したりなじませたりとか、グラフィックや映像にアウトプットするために求められるビジュアルの最終的な仕上げを担当しています。最近、簡易的に3Dを扱えるようなソフトも出てきているので、そういうソフトも効率良く使っていますが、基本的にはPhotoshopで仕事をしています。私自身は家電の仕事が多いんですが、クルマの仕事もときどき担当します。

──もともとは写真のレタッチをされていたんですか。

佐々木 そうですね。最初は写真をベースにしたビジュアル制作をやっていて、アマナシージーアイが設立されるタイミングで3DCGって面白そうだなと思って、参加しました。

──岡田さんもそうですか。

岡田 私はプロラボで7年ぐらい働いていたんですが、だんだん自分で実際に手を動かして物を作りたくなって、CGの学校に行き、その後アマナに入って6年目になります。その頃からCG化を推進するプロジェクトがアマナ内部にあって、ある程度形になったところでアマナシージーアイが設立されたという経緯があります。

──3DCGの仕事について教えてください。

岡田 私は、以前はクルマの3Dをメインでずっと担当していましたが、現在はその経験を生かしてプロダクトのデジタルモック制作にも多く携わっています。デジタルモックとは、製造段階に作られるモックを、製品CADを活用してデジタル化(3DCG化)するというものです。

ソフトに関しては基本的にはAutodesk 3ds Maxで作業する事が多いんですが、クルマはAlias Studioでデザインをしているものがあるので、Mayaを使うこともあります。用途とスピード感によって2つのソフトを使い分けている感じです。

──写真はフォトグラファーが構図とライティングを決めていますが、3DCGの場合はCGデザイナーの方が決めてるんですか。

岡田 基本的にはそうなんですが、特に写真的な表現が求められる時には、グループ内のフォトグラファーと一緒に絵を作っていくこともあります。実際に光を当てたらこういう風に見えるという知識とノウハウに関しては、フォトグラファーに勝るものはないので、そういう人材がグループ内にいるというのは大きな強みだと思います。

──ほかにはどんな仕事があるんですか。

岡田 アマナで5年前からやっているバーチャル3Dスタジオ「Studio++」というサービスがありまして、ハウススタジオのような室内空間のCGがあって、そこに製品のCGを置いてビジュアルを作るというものなんですが、その空間の3D制作なども行なっています。最近ではコンテンツも作っていて、自動車のコンフィギュレーターや製品のWeb 3Dコンテンツ等を制作しています。

──コンフィギュレーターというのは?

岡田 クルマの色やオプション装備などを、ユーザーがWeb上でカスタマイズできる仕組みです。CGで作ってあるので、クリック一つで色が変わります。

──なるほど、全体像がだいたいわかりました。一口に3DCGと言っても、様々な仕事があるんですね。

3DCGでもPhotoshopでも快適な作業環境が実現する

img_products_hp_zseries02_04.jpg アマナシージーアイのオフィスで使われているマシンは、一部の例外を除いて、ほとんどHP Zシリーズで統一されている。

──このフロアをざっと見渡すと、ほとんどWindowsマシンばかりですね。

岡田 3ds MaxとMayaを使っているので、必然的にWindows中心の環境になっています。少し前まではHP XWシリーズというワークステーションを使っていたのですが、アプリケーションの64bit化に伴ってZシリーズに置き換えていって、現在は全体の8割、9割がZシリーズになっています。3DCGをメインに扱うマシンは基本的にHP Z800で、私自身もZ800を使っています。

──Zシリーズで揃えた理由は何かあるんですか。

岡田 スペックがいいこともあるんですが、メンテナンスがしやすいところも大きいと思います。それから大規模なレンダリングが発生する時に、レンダリングサーバ以外にもたくさんのマシンを使って分散レンダリングを行なうんですが、同じZシリーズで統一しておいた方がそういう時に便利なんです。フロア全体で100台くらいのレンダーファームになりますから。

──ものすごい規模ですね。

岡田 ゲームや映画以外では、あまり例がないかもしれません。広告業界はどんどん短納期かつ高品質を求められているので、それに対応するという意味では、同じシリーズで統一するのは有効だと思います。

──2DのチームもやはりZシリーズですか。

佐々木 Photoshop用のマシンはMacが多かったのですが、徐々にHP Z600に置き換わっているところです。Macはいま何台か残っているだけです。

──佐々木さんはどちらをお使いですか。

佐々木 私はわりと早くからZ600に乗り換えたほうなんですが、最初はかなり驚きました。それまで使っていたMacより速いというのが一つ、それからかなり酷使しても落ちないんです。たとえばカタログの仕事では、様々な方向から見た同じ製品の画像を扱うんですが、それを20枚も30枚もPhotoshopで開いて、ずらっと並べて作業をしています。Macだと画像を開くだけでもすごく時間がかかってしまい、ちょっとした動作で落ちてしまうこともありましたが、Z600だとまったく問題なくサクサク動きます。

──たくさん画像を並べるのは、どうしてなんですか。

佐々木 たとえば、製品の色が黒から茶色に変わったとしますよね。最初に基本アングルの画像の色を変えたら、それと同じ工程を他の画像にもすべて適用していきます。そのとき、一つ一つ画像を開いて作業をしているとミスが発生してしまったりするので、画像をたくさん並べて順番に処理していく方がミスが少なく、効率よくできるんです。

それぞれの画像にはレイヤーがいくつもあって、それを何十枚も同時に開くので、マシンにとってはかなりの負荷だと思います。それでもZ600は落ちないで、安定して作業できるので助かっています。

──今回は、Zシリーズの最新モデルZ820とZ420を使っていただきました。

岡田 3DチームはZ800を使っているので、後継機にあたるZ820の性能が知りたかったんです。長辺約6000ピクセルの、クルマの内装モデルのCGデータを用いてレンダリング時間を比較してみました。普段使っているZ800の初期モデルは7時間46分かかったのに対して、Z820はなんと半分以下の3時間42分。これだけでも驚きですが、ためしにZ420も測ってみたら6時間35分と、こちらもZ800より速かったですね。

──1世代前のハイエンドマシンより、現行のエントリーモデルのZ420の方が速かったんですね。

岡田 初期のZ800もZ420も、CPUの数は違うけど、コア数で言えば同じ8コア。Z420の方が世代が新しいので、ちょっとだけクロックが速いとか、バスがちょっと広いとか、そういった小さな積み上げで速くなっているのかなと思います。

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3DCGを担当する岡田氏には、ハイエンドのZ820(写真右)を検証してもらった。本番のレンダリングとV-ray RTの両方がスピードアップし、作業効率が向上したという。

──佐々木さんはどうでしたか。

佐々木 私は普段ミドルレンジのZ600を使っていますが、あえてエントリーモデルのZ420と比較してみました。5GBぐらいの巨大なデータになると、Photoshopで開くだけで2分、保存するだけで7分ぐらいかかってしまうのですが、Z420はそれぞれ1分と5分でした。

それ以上にはっきり違いが出たのは、レンズぼかしのフィルターです。これはPhotoshopのフィルターの中でもかなり処理が重たいのものですが、Z420はたったの4分で終了。Z600の方は30分ほど経っても終わらなかったので、計測をあきらめて、処理を中断してしまったほどです。

──驚きの速さですね。

佐々木 コア数で言うと私が使っているZ600は12コアなんですが、それよりもコア数が少ないZ420の方が速いのでびっくりしました。やはりCPUの世代の違いなんでしょうか。

──ぼかしの効果は、Photoshopでやることが多いんですか。それとも3D側でやる方がいいんですか。

佐々木 カタログのように画像が大量にあるものに関してはPhotoshop側でやることが多いですね。クルマとか広告ビジュアルのように1点1点作り込んでいくものに関しては、できるだけ3D側で詰める方がいいこともあります。場合による、ということですかね。

──ぼかしを3D側でやると時間がかかるんですか。

佐々木 そうですね。もしかしたらZ820だったら速いのかもしれませんが、そこまでは試していないのでわかりません。一般論としてはPhotoshopの方が速いと思います。しかも新しいZシリーズはさらに速くなっているわけですから、これはかなりスゴいことだと思います。

リアルタイムレンダリングや32bitモードでも快適に動作する

岡田 さきほどレンダリングの話をしましたが、最近はリアルタイムレンダリングの技術がかなり進んできて、3Dソフト上でライティングを変更しても、ほとんど待つことなく結果を見られるようになっています。昔はライトを動かしたら数分から数十分待たないと結果が見られなかったので、経験と想像でライトの大きさや位置を決めるしかなかったんですが、今はかなり効率が上がるようになりました。

リアルタイムレンダリング自体は昔からあったんですが、かなり絵が粗くて、本番のレンダリングとは絵が違う。でも、いまはV-ray RT(リアルタイム)を使って、最終のビジュアルと同じような精度でリアルタイムの画面が見られるようになりました。

──リアルタイムレンダリングも速度が上がったんですか。

岡田 そうですね。V-rayは描画するプロセッサをCPUとGPUのどちらでも選択できます。描画速度はGPUの方が速いんですが、最終のレンダリングは精度を重視してCPUを使います。描画するプロセッサが違うと絵が同じにならないので、最終でもリアルタイムでもCPUを使うようにしていますが、Z820はCPUの性能が上がったぶんだけ実用性が高まったと思います。体感速度だとZ800の1.5倍くらいの速さじゃないかと思います。

リアルタイムレンダリングのメリットとしてはもう一つ、フォトグラファーとの連携がスムーズになると思います。フォトグラファーと一緒に絵を作る時に、ライトを動かしてもリアルタイムで絵が出てくるので、コミュニケーションのスピードが格段に上がりますね。

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佐々木氏にはエントリーモデルのZ420(写真右の左側)と、普段使っているZ600(同右側)の2台で、Photoshopのパフォーマンスを比較検証してもらった。

──なるほど。他にもHP Zシリーズのメリットはありますか。

佐々木 3Dでレンダリングする時にベースとなるデータは32bitモードで書き出してもらって、Photoshopでも32bitのまま作業をしています。32bitで書き出すメリットとしてはPhotoshop側で露光量を自由に変えられることなんですが、Macだと16bitでもヒイヒイ言っていました。それが、HP Zシリーズだと32bitでも楽々動きます。新しいZシリーズだと、さらに余裕がある感じです。

岡田 32bitのEXRというファイル形式でレンダリングをして2Dに渡すことで、写真で言うところのRAWデータと同じように、豊かな階調を持たせることができるんです。白飛びや黒つぶれをコントロールしつつレタッチできるというのは、今まではちょっと考えられないですね。

佐々木 たとえば、このフェラーリの絵にはいくつもレイヤーがありますが、すべて16bitモードで動かしています。で、いちばん下にあるベースの絵ですが、これは32bitモードの画像をスマートオブジェクト化したものです。

このようにスマートオブジェクトを活用することで、通常は16bitで動かしながら、必要な時には32bitで開いて調整することもできるというわけです。いま、この絵はZ420で動かしていますが、まったく何の問題もありません。

岡田 われわれはZシリーズのユーザーの中でもかなりのヘビーユーザーだと思いますが、今回の検証は本当に驚くことばかりでした。3DCGにしろPhotoshopにしろ、新しいHP Zシリーズは以前よりも圧倒的にパワーアップして、エントリーからハイエンドまでどれを選んでも作業環境は快適になると思います。

──ありがとうございました。


撮影:坂上俊彦

4月30日初出/5月9日更新


関連情報
日本HP ワークステーション 製品ページ

HP Z420

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拡張性・信頼性を備えたエントリーワークステーション。最新のインテル®「Sandy Bridge」アーキテクチャー採用したインテル® Xeon® E5-2600/1600ファミリー搭載。最大8コア(16スレッド)CPU、ハイエンドグラフィックス、最大64GBメモリ搭載可能。最小構成価格は141,750円から。詳細


HP Z820

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インテル® Xeon® E5-2600プロセッサー(最大8コア)のデュアル構成、最大512GBのメモリー構成、6Gb/s SATA 2ポート、6Gb/s SAS 8ポート、1125W 90%変換効率のパワーサプライ、第3世代水冷システムも選択可能なハイエンドモデル。高解像度動画や3Dアニメーションの編集など、高度なパフォーマンスが要求される分野に対応する。詳細

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