ColorEdge 特集

待望のプロファイルエミュレーション機能を搭載したColorNavigator 6

解説:小島勉

ColorEdgeの専用キャリブレーションソフトColorNavigatorがバージョン6へとアップデートされた。最大の特長であるプロファイルエミュレーション機能をはじめ、アップデートのポイントについてレポートする。

黒を基調にした新しいユーザーインターフェースを採用

img_products_cn6_01.jpg新しく生まれ変わったColorNavigator 6、モニターはColorEdge CG275W。

ColorNavigatorが、2011年8月5日、およそ3年半ぶりにメジャー・アップデートされバージョン6となった。これまでユーザーインタフェースのデザインはOSのそれを基調としていたが、最新バージョンでは全面シックな黒へと変わり、前バージョンとはかなり違う雰囲気になった。

すでにナナオのWebサイトで発表されているので、知っている読者も多いかもしれないが、今回のバージョンアップで最大の特徴は、モニター単体でCMYK、RGBプロファイルのエミュレーションが可能になったことだ。これまでのようにカラーマネジメント対応アプリケーションに依存することなく、モニター単体でプロファイルエミュレーションができる。ユーザーの仕事の状況にもよるが、より使い勝手が良くなるのではないかと考えている。

そのほか、モニタープロファイルの検証機能、キャリブレーション後の手動調整機能、印刷用紙の白色点や環境光を考慮したキャリブレーション機能、色見台の輝度・照度を調整する機能、調整目標を書き出して他のColorEdgeで利用する機能など、前のバージョンから高度で多彩な機能を引き継いでいる。

ColorNavigator Ver.6.0(以下、CN6)は、Flash技術をベースにしたAdobe AIRとして新たにプログラムされている。特にMac版に関してはPowerPCとIntelの両方に対応したランタイムを組み込んでいるため、全体の容量が従来よりも増えている。インストール作業自体はこれまで同様に簡単だ。Adobe AIRアプリケーションであることは特に意識することなく自動で組み込まれるが、後々にAIRは自動でアップデートされる点は留意しておいたほうがよいだろう。

対応するモニターとOS、センサーについては注意が必要

ColorEdgeの旧機種の一部については、CN6よりサポートされなくなった。ナナオによると、2006年6月以前に発売されたほとんどの機種(CG18、CG19、CG21、CE210W、CE240W)で利用することができないという。

対応するOSについては、Windows版はこれまでどおりWindows XPから最新のWindows 7まで対応しているが、Mac版は10.3(Panther)以前が非対応になり、10.4.11(Tiger)から10.7(Lion)までの対応となっている。ColorNavigatorの各バージョンのOS対応状況はやや複雑なので、詳しくは次のリンク先を参照にしてほしい。

  • ナナオ 「お使いのOSに対応したColorNavigatorのバージョン一覧表」
http://www.eizo.co.jp/products/ce/cn/files/cn_compati.pdf

X-Rite社 i1シリーズのラインナップが6月に大幅に変更になった。プロユーザー向けのセンサーはこれまで通りi1 Pro(もしくはi1 Monitor)だが、低価格路線のi1Displayはセンサーがリニューアルしてi1Display Proとなった。またi1シリーズとは別ラインのColorMunkiにも、i1Display Proと同じハードウェアを使用したColorMunki Displayが追加されている。

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X-Rite社のi1Photo Pro(左)とi1Display Pro(右)。i1Display Proはガラスフィルターを採用しているので、ゼラチンフィルターのi1Display2よりも耐久性が向上しているという。

CN6リリース時点(2011.8.5現在)では、このi1Display ProおよびColorMunki Displayはともに非対応となっているが、i1Display Proについては、10月中旬に公開予定の次期バージョンでサポートするという。ただし、ColorMunki Displayは今後も対応する予定はない模様だ。

現段階でCN6が対応している外部センサーは、i1Display Proをのぞくi1シリーズ、ColorMunki DisplayをのぞくColorMunkiシリーズ、Monaco OPTIXシリーズ、Spyder3となる。センサーによっては環境光を測定できない、グレイバランスを重視したキャリブレーションができないなど、制約事項があるので注意が必要だ。

CG245W、CG275Wで実装された内蔵センサーにも対応しているが、内蔵センサーでは環境光、紙白などを考慮に入れたキャリブレーションは不可能。これらのモニターで環境光、紙白を測定するには外部センサーが必要となることも覚えておきたい。

  • ナナオ ColorNavigator 6 対応センサー一覧
http://www.eizo.co.jp/products/ce/cn/index.html#ANCHOR03

新しいメインウィンドウとColorNavigator Agent

それではCN6の機能について具体的に見ていこう。筆者は日頃Macでの作業が多いため、これ以降はすべてMacでの説明となることをご了承願いたい。

最初はメインウィンドウについて。起動すると、まずこの画面が現れる。冒頭で触れたように全面シックな黒でまとめられている。大きな変更点としては、これまでメニューバーから選択していた機能をすべてメインウィンドウにまとめたことだ。

img_products_cn6_04.jpg ColorNavigator 6のメインウィンドウ。全ての機能がこのウィンドウに集約されている。

img_products_cn6_05.jpg ColorNavigator 5.4.5のメインウィンドウ。一部の機能はメニューバーから選んでいた。

CN5.xのメニューバーには、テストパターン、環境設定、調整目標のインポート/エクスポート、モニター情報、色見台調整などの機能が入っていたが、CN6からはすべてメインウィンドウの中で扱えるようになったため、スッキリとした印象で作業性もよい。また、新たに「ヘルプ」から取扱説明書のPDFを呼び出せるようになったため、いつでも操作方法などを確認することもできる。CN6より、ネットワーク環境につながっていれば、ソフトのアップデートが告知されるのも便利だ。

ColorNavigator Agentは、CN5.2より実装されたエージェント機能だ。パソコンを立ち上げると毎回起動して(MacではDockにアイコンが現れる)、ミニアプリとしてモニター本体の監視を担う。モニターキャリブレーションの作業はひと手間かかるため、どうしても間隔が空きがちになってしまうが、それをAgentで管理させることで定期的なキャリブレーションを実現する。また、複数作成しているモニタープロファイルの切り替えもDockから瞬時に行なえる点は使い勝手が良い。

img_products_cn6_06.jpg ColorNavigator Agentのアイコンを右クリックすると設定メニューが表示される。

なお、CN6をインストールした後も、CN5.xはアンインストールされないで、そのまま使うことができるようになっている。このおかげでCN6非対応の旧機種とマルチモニター環境を構築している場合でも安心して使うことができる。

新たに追加された「写真用」の調整目標

これまでColorNavigatorでは、「印刷用一般設定」と「写真・デザイン用一般設定」の2種類の調整目標がデフォルトとして用意されていた。「印刷用」のモニター白色点は5000Kで、「写真・デザイン用」はWeb用途を想定しているため6500Kとなっている。

商業印刷用の写真を仕上げる時は「印刷用」、Web用の写真を仕上げる時は「写真・デザイン用」を選ぶのがセオリーだったが、作品プリントを前提とした写真の場合はどちらを使えばよいのか紛らわしいところがあった。そこでCN6では、「印刷用」「Web向けコンテンツ作成用」「写真用」の3つに整理されている。新たに追加された「写真用」の白色点は、フィルムのデイライト基準と同じ5500Kである。

img_products_cn6_07.jpg 「写真用」の調整目標は、輝度100cd/㎡ 白色点5500K ガンマ2.2となっている。

印刷を前提とした場合は印刷の基準である5000Kがターゲットとなるので、撮影から印刷までの工程において、どのモニターで見ても同じ色になるようにカラーマネジメントを行なう必要がある。これに対して、自分で作品プリントを出力する場合は、特定のプリンタとモニターの組み合わせでカラーマッチングするだけでよい。

作品プリントを作る場合は、まず「写真用」の調整目標でキャリブレーションしてみるのがよいだろう。その後、手動調整の機能でモニターの色をプリンタに近づけるように追い込めば、モニターとプリントのマッチングが良くなるはずだ。なお、手動調整を行なう場合は、観察光源がきちんと色評価できるもの(AAA色評価蛍光灯)で、かつ安定していることが条件となるので注意してほしい。

また、手動調整項目のうち6色調整のパラメータは、これまで同様にプロファイルに反映することができず、書き出し(エクスポート)機能にも対応しないので注意したい。6色調整はプリント結果に対してそのモニターの見え方を微調整するもの。ColorEdgeを複数台で運用しながら、カラーマッチングを揃えたいといったケースでは、6色調整のパラメータをキャプチャするか、手書きメモなどで控えておく必要がある。

なお、CN5.xからCN6へアップデートしても、以前の調整目標のデータは引き継がれない。引き継ぎたい場合にはCN5.xから調整目標をエクスポートし、CN6でインポート、その後CN6を使ってモニターの再調整を行なうことになる。

モニターキャリブレーション機能と検証機能

ColorNavigatorを既に使用しているユーザーであれば、ソフトの見かけが新しくなっても、キャリブレーションの手順に戸惑うことはまずないだろう。調整目標を選んで、右上の「調整」のボタンをクリックし、測定器を選択すればキャリブレーションが始まる。

キャリブレーションの動作中は、デスクトップの右下に進行状況が立体的に表示される。ホワイト、ブラック、グレーバランスのポイントがアニメーションで動くところなどは、いかにも精密機器を調整しているといった雰囲気を醸し出してくれるので、見ていても楽しい。

img_products_cn6_08.jpg キャリブレーション実行中のCG245W。右下に進行状況がアニメーションで表示される。

キャリブレーションが終るとモニターの調整結果が表示される。このとき「検証を開始する」のチェックボックスにチェックを入れるだけで、モニタープロファイルの検証作業が行なえる。

img_products_cn6_09.jpg モニターの調整結果の画面。左下に「検証を開始する」のチェックボックスが見える。

すでに作成してある調整目標(キャリブレーション済みのプロファイル)の検証の場合は、メインウィンドウの右側に「検証」ボタンがあるので、従来よりもワンステップ少なくなっている。

プロファイルの検証機能は、キャリブレーションされたモニタープロファイルと、実際のモニター表色を比較して、どの程度の色差があるのかを検証できる機能だ。

img_products_cn6_10.jpg 検証結果の詳細画面。カラーパッチごとに目標値と測定値、色差の値が一覧表示されている。

これはCN5.xにもあった機能で、特に大きな変更点はないが、検証目標として「ISO 12646」や海外の印刷基準プロファイルなどを選択できるようになっており、検証目標の数が増えている。通常はデフォルトの「RGB簡易」で十分だ。

img_products_cn6_11.jpg 検証目標は「RGB簡易」のほか、「ISO 12646」「ECI」「FOGRA」「IDEAlliance」など海外の検証基準が選べる。

経時によるモニターの変動を検証し、数値管理することに意味はあるかもしれないが、あまり神経質になりすぎる必要はないと思っている。CN5.xの段階から、定期的にキャリブレーション作業を促すタイマー設定の機能があるので、それに従ってキャリブレーションをするだけでも問題ないだろう。

検証結果はΔE(デルタ・イー)という色差の単位で表示されるが、CN5.x、CN6とも、「CIE1976」がΔEのデフォルトとして設定されている。これはCIE 国際照明委員会が1976年に定めた色差式だが、現実的にはより新しい「CIE2000」をデフォルトとするほうが人間の目の見え方に近くなる。今後のバージョンアップでは「CIE2000」がデフォルトになるよう期待したい。

img_products_cn6_12.jpg ΔEのデフォルトは「CIE1976」。他に「CIE1994」「CIE2000」も選べる。

なお、CG245W、CG275Wのセンサー内蔵モデルに限った話だが、内蔵センサーと外部センサーとの相関をとって、複数のモニターの色合わせを集中的に行なうためのセンサーコレレーションという機能がある。これはCN5.4からの機能で、以前はコレレーション専用ツールCorrelation Utilityが用意されていたが、CN6からはメインウィンドウに統合されている。ただし、CN5.4からCN6にアップデートしても、これまでのコレレーションのデータは引き継がれないので、あらためてコレレーションを行なう必要がある。

モニター単体で様々なデバイスの表色をシミュレーションできる新機能

冒頭でも触れたようにCN6の最大の特徴はこのプロファイルエミュレーションだ。 Photoshopユーザーであれば「色の校正」「校正設定」と聞けば容易に想像つくかと思うが、デバイスの表色をシミュレーションする機能のことで、今までColorEdgeでは、CMYKプロファイルは、Photoshopに代表されるようなカラーマネジメント対応ソフトでしかシミュレーションすることができなかった。

今回のバージョンアップではソフトウェアに依存することなく、モニター単体でエミュレーションができるようになった。プロファイルさえあれば、様々なターゲットの表色をモニター上で見ることができるのだ。操作自体は至って簡単。メインウィンドウの右側にある「高度な機能」の中の「プロファイルエミュレーション」を選択する。

img_products_cn6_13.jpg メインウィンドウの右側の「高度な機能」の中に「プロファイルエミュレーション」のメニューがある。

img_products_cn6_14.jpg 「エミュレーションするプロファイル」の欄で、目的のプロファイルを選択する。

エミュレーション機能を使う上での注意点は2つ。まず対応している機種が限定されること(CG210、CG211、CG220、CG221、CG241W、CG301W、CG303Wは対応していない)。そして、エミュレーション調整項目にあるCMM(Color Management Module)がデフォルトでは「Apple CMM」になっていることだ(Mac版の場合。Windows版のデフォルトは「Microsoft ICM」)。

カラーマネジメントにおけるCMMは「Adobe CMM」が一般的に使われているので、PhotoshopのCMMに近いエミュレーション結果を得るためには、別途Adobe CMMをダウンロード&インストールする必要がある。ひと手間かかるが、組み込むこと自体は簡単なので、インストールをお勧めする。また、レンダリングインテントは「知覚的」「彩度」「相対的」「絶対的」の4種類が選択できるが、「相対的」を使うほうがよいだろう。

img_products_cn6_15.jpg Adobe CMMをインストールしてマシンを再起動すると、Adobe CMMを選択できるようになる。

  • Adobe CMM Mac版 ダウンロードページ
http://www.adobe.com/support/downloads/detail.jsp?ftpID=3617

  • Adobe CMM Windows版 ダウンロードページ
http://www.adobe.com/support/downloads/detail.jsp?ftpID=3618

以上、CN6で新しくなったポイントを中心にレビューしてきたが、いかがだろうか。CN6の機能をフルに使いこなすには、対応するモニターが限定されてしまうのは事実だが、使いこなしがいのあるソフトウェアだと思う。

目玉となるエミュレーション機能は誰でも必要とするような機能ではないかもしれないが、CN6のサポートから外れてしまった機種や、エミュレーション機能に対応していない機種のユーザーは、この際モニターのリプレイスを検討してみるのもいいのではないだろうか。

また、できるだけ精度の高いキャリブレーションを行なうには、分光式の外部センサーであるi1 ProやColorMunkiを使うか、センサー内蔵モデル(CG275W、CG245W)がおすすめである。前述したようにi1シリーズはリニューアルに伴い大幅に値下げされたので、いまが買い時とも言える。そこまでセンサーに予算をかけられない場合は、CN6がi1Display Proに対応するまで待ってからセンサーを買い直すという選択肢もあるだろう。

写真:小島勉

小島勉 Tsutomu Kojima

株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ所属。インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。

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