そうだったのか!デジタルフォトの色

第10回 液晶モニターに適切な室内照明とは?

解説:BOCO塚本

モニターの色が違っていると気づくのは、どんなタイミングでしょうか? デジタルフォトを始めて間もない人なら、「カメラの背面液晶で確認した写真をパソコンで開いて見たら、全く違う色味や明るさだった」というケースが多いと思います。これについては、バックナンバーの第1回「デジタル一眼レフの背面液晶モニターは信頼できるか」を参考にしてください。

次に多いのは、「インクジェットプリンタの出力とモニター表示が合わない」というケースでしょう。このケースではいくつか原因が考えられますが、大きな問題は以下の3点でしょう。
1. プリント時の設定の問題 (※1)
2. モニターキャリブレーションの問題
3. プリントを見る環境の問題

このうち「モニターキャリブレーション」と「プリントを見る環境」には深い関係があります。この連載ではこれまで、モニターキャリブレーションは設置場所の環境光の影響を大きく受けると書いてきましたが、モニターとプリントの比較をする場合に、その影響が最も大きくなるのです。

インクジェットプリントに限らず、出力物は照明の光を反射することで色を表しています。つまり室内の照明がそのまま色を再現するための光源となるわけです。光源の明るさや色味の違いは眼の順応によってある程度吸収されてしまうので、プリントだけを見ているときは、どんな光源でも色がおかしいと感じることはありません。

いっぽう液晶モニターは、蛍光灯の一種である陰極管を光源として使用していて(※2)、自らが発光しています。このため、モニターの光源と環境光の明るさや色味が少しでもずれると、モ二ターの見え方が大きく変わってしまい、モニター表示とプリントが合わなくなるのです。

環境光の色味については第7回「色を見るときは、色温度だけではなく演色性にも気をつけよう」で詳しく述べていますので、今回は環境光とモニターの明るさについて詳しく検証してみましょう(※3)


プリントや印刷物は照明の光を反射することで色を表す

液晶モニターは光源を持っており、自ら発光している

モニターの明るさを表す用語は「輝度」で、cd/㎡(カンデラ毎平方メートル)という単位を使用します。これは、1㎡あたりどの程度の光を発しているかという面光源の明るさを示す単位です。照明機器の明るさを表す単位も cd/㎡ を使用しますし、ColorEdgeのスペック(性能)表にも最大輝度が記されています。

多くのモニターの最大輝度は、200 ~ 250 cd/㎡あたりです。一部では、500 cd/㎡ 程度の高輝度モニターもありますが、AV性能重視の機種でグラフィック向きではではないようです。実際の使用にあたっては、それぞれのモニターの推奨輝度範囲内で使用してください。現行のColor Edgeシリーズの推奨輝度は、明るくても120 cd/㎡ です(※4)

一方、照明がプリントを照らしている明るさは「照度」と言います。単位は、lx(ルクス)を使用します。室内照明については、JIS(日本工業標準調査会)やJISE(社団法人 照明学会)が建築業向けに照度基準を発表しています。これによると勉強部屋・作業部屋では、全般照明が75~150 lx、局部照明が500~1000 lx となっています。 同基準ではテレビスタジオの明るさを 1000 lx としていますので、局部照明の基準はかなり明るめの設定と考えてよいでしょう。自然光が入らない部屋を実際に計測してみると、多くの部屋が300 lx 程度でした。


カメラ等機材の整備用テーブル周りの照度は386 lx。機材の清掃作業には少し暗い。

画像処理作業デスクの上は252 lx。プリントチェックには暗すぎる。天井が黒なのが影響している。

照度・輝度の計測は、露出計やスポットメーターで行ないます(カラーメーターの中にも照度を計測できるものがあります)。露出計は簡易照度計として、スポットメーターは簡易輝度計として使えるので、それぞれ計測したEV値から照度・輝度を算出できます。皆さんも一度、作業環境の照度、モニターの輝度を計測して検証するのもよいかもしれません。

【 EV → lx 換算表 】 EV値から照度へ換算(計測には露出計の平板受光部を使用)

【 EV → cd/㎡ 換算表 】 EV値から輝度へ換算(計測にはスポットメーターを使用)

この照度(lx)と輝度(cd/㎡)は、計測方法が違うため簡単には換算できません。少し調べてみるとプリント用紙を発光面と見たてて換算する方法がありました。一定の条件のもとで次の数式が成立します。

B(輝度)= K(反射率) × E(照度) ÷ π(3.14) (※5)

写真光沢紙の反射率は90%程度ですが、数種類の用紙の実測結果から逆算すると、反射率は60%~70%が適当でした。


セコニックのカラーメーターC-500は照度も計測できる。

C-500を簡易照度計として利用しているところ。

メーターの計測板にターゲット用紙を置いて輝度を計測。

では、これらをもとに、モニターの輝度に合った、プリントを見るための照度を見てみましょう(実測結果による補正済み)。

モニターの輝度に合わせたプリントの環境光照度(エプソン写真光沢紙ターゲット)
モニターの輝度(cd/㎡)8090100110120
プリントの環境光照度(lx)400455500550600
照度換算EV値7.37.57.77.87.9

数値では分かりにくいかもしれませんが、モニターの輝度に合わせるためには、そこそこの明るさの照度が必要です。プリントを見るための照度が不足していると、モニター輝度を推奨値まで上げることができません。適切なモニターキャリブレーションのためには、事前にプリントを見るための環境光を整えておきましょう。

ちなみに下の写真は私の作業環境です。モニターとプリンタを見比べる時のために、モニターの上に色評価用蛍光灯を設置しています。一般的な事務所や家庭の部屋ではこのようなセッティングは難しいので、照度が不足する事が多いと思います。このような時は、プリントの照明用に色評価用蛍光灯のスタンドを追加して明るさを調整してください。


40W蛍光灯1本で400 lx 程度の照度を得るには、液晶モニター画面中央から75cmの近距離に設置しなければならなかった。商品撮影用の黒スタジオでセットしているので、壁や天井が白い部屋だともっと距離をとれそうだ。

プリントと液晶モニターの明るさに関しては、2008年にISOが、液晶モニターによるソフトプルーフの基準ISO12646:2008を発表しています。

ISO12646 : 2008
プリント照度500 lx( ±125 lx)
モニター輝度160 cd/㎡ (最低80 cd/㎡)
モニター表示面の照度モニター輝度の8/1以下が望ましい、1/4を超えてはいけない
モニター周囲の環境充分に低く

この基準では、プリントを見る場合に「色見台」(※3)の使用が推奨されています。色見台はそれなりに高価な機材で設置場所も問題になります。私のように撮影がメインで、頻繁にプリントをしない方なら、環境光を整備するだけでも充分な結果が得られるでしょう。また、モニター周囲の環境を「充分に低く」するのは、モニター周辺の色が作業に影響しないようにするためです。環境光でプリントを見る場合には、モニターの周囲を暗くすることはできませんが、壁やデスクに色味がなければあまり気にしなくても大丈夫です。(※6)

今回は、プリントの明るさと液晶モニターの明るさについて検証しましたが、ColorEdge専用キャリブレーションソフトのColorNavigatorには、プリント用紙をターゲットとしたキャリブレーション方法があります。「調整目標を作成する」で「紙白」を選ぶ事でプリント用紙の「白」を計測し、それに合わせたモニター輝度をターゲットにすることができます。この方法でキャリブレーションされたモニターは、常にプリントペーパーの紙色をシミュレーションした状態になります。Raw現像ソフトのように、紙色をシミュレーションできないソフトでもプリントのイメージに近い表示になるのです。(※7)


※1. プリンタメーカーのWebサイトに詳しい設定方法があります。
 EPSON : http://faq.epson.jp/faq/01/app/servlet/relatedqa?QID=003559
 CANON : http://www.imagegateway.net/ ページトップからプロフェッショナルプリントテクニックへ(キヤノンイメージゲートウェイは、ユーザー登録が必要です)。

※2. 一部の液晶モニターでは、LEDを光源とするものもあります。

※3. 印刷工場やラボでは、厳密なプリントチェックを行うために「色見台」を使用しています。本サイトの工藤美樹さんの連載第5回「ていねいなしごとのためのかんきょうづくり」でも紹介されています。製品としては、Graphiclite Technology, Inc.のPDVシリーズが有名です。

※4. EIZO製品では、推奨輝度以下での使用が製品保証(パネル)の要件になっています。CG301W、CG242W、CG241Wは 120cd/㎡ 以下、CG221は100 cd/㎡ 以下、CG222Wは 80cd/㎡ 以下。

※5. 用紙が「完全拡散面」であることが条件ですが、これは理論的な状態なので実測値とは誤差が生じます。

※6. 修正や合成のようなレタッチ作業では、環境光を暗くして修正ムラを確認します。

※7. Adobe PhotoshopなどAdobe製品は、校正の設定で紙色のシミュレートができますが、紙白をターゲットにキャリブレーションした場合は「紙色をシミュレート」にはチェックを入れないでください。

写真:BOCO塚本

BOCO塚本 BOCO Tsukamoto

1961年生まれ。1994年フリーランス、2004年ニューヨークSOHOにてART GALA出展、2007年個展「融和」、ほかグループ展、執筆多数。公益社団法人日本広告写真家協会(APA)理事、京都光華女子大学非常勤講師。

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