液晶モニターQ&A

Q6. モニターだけで色校正を済ませるためのモニター選びのポイントは何でしょうか?

解説:小島勉

従来の印刷ワークフローでは必ず、校正刷りを印刷したりDDCPを出力して(=ハードプルーフ)、色を確認していましたが、最近では欧米を中心としてモニターだけで色校正を行なうソフトプルーフという手法も確立しています。

ソフトプルーフを確実に実行するには、印刷会社で使用しているモニターと自分が使っているモニターの機種を同じにし、キャリブレーションの設定や環境を合わせること。ちょっと乱暴かもしれませんが、端的に言えばこれに尽きます。

「校正」として見るためのモニターですから、機種の選定や設定、環境は大変重要になります。ポイントはいろいろありますが、まずはハードウェアキャリブレーションに対応したモニターであることが第一条件と言えるでしょう。キャリブレーションの設定や環境はQ5の項目で述べたように、モニターの白色点は5000K、観察光源は「演色AAA(昼白色)」の蛍光灯を使います。



モニターのキャリブレーションには、ハードウェアキャリブレーションとソフトウェアキャリブレーションの二種類があることはよく知られています。ソフトウェアキャリブレーションは、パソコンに搭載されているビデオカードのRGB出力信号の強さをコントロールします。モニターの特性に応じてビデオカードの信号をコントロールするため、そのモニターの性能によっては階調性が損なわれる可能性があります。様々なモニターを手軽にキャリブレーションできるメリットはありますが、色を厳密に扱いたい場合にはあまりお勧めできません。

いっぽうハードウェアキャリブレーションは、ビデオカードの信号には変更を加えずに、モニター側でRGB信号の強さを調整しますので、階調の減少がほとんどなく、キャリブレーション時間も短時間で簡単に済むのが特徴です(キャリブレーション方式の詳細についてはこちらを参照)。



キャリブレーション方式の詳細についてはこちらを参照


とはいえ、フォトプロダクションやデザイン事務所、雑誌編集部などで、すべてのモニターをハードウェアキャリブレーション対応機種にするのは、予算的に厳しいものがあります。そこで、ソフトウェアキャリブレーションでもソフトプルーフが可能かどうか、簡単なテストをしてみました。

下図は、筆者の職場にある複数のモニターでキャリブレーションを行ない、それによってRGBの各信号がどのように補正されたかを示すグラフです。ハードウェアキャリブレーション対応機種はColorEdge CG19のみ、残りの4機種はソフトウェアキャリブレーションを行なっています。



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EIZO ColorEdge CG19
まず i1(Eye-One)とColorNavigatorでハードウェアキャリブレーションを行ない、次にもう一度 i1 と i1 Matchでソフトウェアキャリブレーションを行ないました。上のカーブは i1 Match による補正結果を示していますが、RGBの各色ともほぼリニアです。つまりハードウェアキャリブレーションをしたら、これ以上補正する必要がないということを示しています。

EIZO FlexScan L767
FlexScan L767は2003年に発売されたモニターで、すでに現行機種ではありませんが、ハードウェアキャリブレーション対応のCG19と比較しても、階調性が素直であり、表示精度が高いことが分かります。

A社製モニター
Gのハイライト側が若干下がり気味になるというクセがありますが、RGBそれぞれほぼリニアに近いカーブです。Bのゲインが下がっているようですが、直線的に下がっているので、クセのない表示が出来ていると言えます。

B社製モニター
GとBのゲインが極端に少ないモニターです。カーブ自体は直線的ですが、ここまで信号の減衰が大きいと、「色を見る」というレベルでは難しいでしょう。

C社製モニター
RGBどのカーブも上下に揺れていますね。階調性の良くないモニターだと言えます。このモニターはかなり安価なものです。

こうして見ると、モニターの表示性能には大きなレベルの差があることが分かります。ここで重要なのは、キャリブレーション後のカーブの直線性です。カーブがリニアであればあるほど、階調性に優れていることになります。

色をシビアに見るならやはりColorEdgeシリーズがお勧めですが、FlexScan L767やA社製モニターぐらいの性能であれば、個人的には実用範囲ではないかと思います。実際にA社製モニターは、筆者が自分のデスクで使っているもので、普段は事務仕事で使っていますが、簡単な画像確認程度にも使っているくらいです。またFlexScanシリーズは、私自身は常用していませんが、A社製モニターよりも素直な特性を持っているので安心して使えると言えるでしょう。

さて、ソフトプルーフのワークフローですが、専用に開発されたソフトウェアやサーバーを使用するシステムも存在しますが、汎用的なワークフローとしては印刷会社で色校正用のPDFを書き出してもらい、そのPDFをAdobe Acrobat Professionalで表示するという流れとなります。色校正用のPDFのフォーマットは、現状ではPDF-X/1aが主流です。

Acrobat Professionalを使用する理由はカラーマネジメントです。Adobe Readerでは色が正しく表示されないことがあるので、必ずAcrobat Professionalを使ってPDFを表示し、そしてPDFを書き出した際のCMYKプロファイル(Japan Color 2001 Coatedなど)を選択するようにしましょう。

なおColorEdgeシリーズはこのワークフローに則ってアメリカのモニター色校正システムの規格 IDEAlliance(SWOP・GRACoL)認証を取得していますが、今後日本でもこのようなワークフローに注目が集まると思います。

写真:小島勉

小島勉 Tsutomu Kojima

株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ所属。インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。

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