めざせ!3DCGフォトグラファー

第2回 どんな仕事があるの?

解説:長尾健作

「3DCG写真」は、カタログやポスター、CMなど予想以上に多く使われています。今回は、その「3DCG写真」が実際にどのように使われているのか、そして、どんな仕事があるのかを見ていきましょう。

こんにちは、パーチの長尾です。今年はカメラやモニター等でも3D関連商品が多く出たり、3D映画もある到達点に達したことから、「3D元年」なんて呼ばれています。皆さんの周りでも3DCGを使ったものが増えていると思いますが、「3DCG写真」は予想以上に多く使われています。

例えば、自動車や住宅設備のカタログ/ポスターでは、その大半が3DCG写真を利用しています。家電や飲料などの業界でも3DCGの利用が拡大していますし、使われている媒体は静止画から動画まで色々あります。また、業界動向としては、今は3DCGを利用していない企業でも、製品設計時にCADを使っている限り、3DCG写真を導入していく可能性は非常に高いです(その理由は連載第1回「3DCG写真が増えてきた!」の「広告主が3DCG写真を使う2つの理由」を参照ください)。

img_soft_3dcgmezase_02_01.jpg画像提供:Autodesk, Inc. Image courtesy of With A Twist Studio

この連載では、3DCG写真制作に興味を持つ方に向けて、必要な初期情報、業界の現状、今後の動向などをお伝えしていきます。今回は「3DCG写真」が実際にどんなふうに使われているのか、そして、どんな仕事があるのか、などを見ていきたいと思います。

どんな媒体で使われているか、どんな仕事があるのか

3DCG写真は、いろんなところで使われています。静止画としては、商品発表会、カタログ、ポスター、雑誌、新聞などで利用され、動画ではWebやイベント用ムービー、CM、店頭プロモーションなどに使われています。3DCGデータは、360度どこからでも使えるため、動画でも静止画でも、色々な媒体で自由に流用することが可能です。

img_soft_3dcgmezase_02_02.jpg具体的にどんな仕事があるのかというと、例えばポスター用に製品写真を3DCGで制作するとします。すると、広告主から「Webでも利用したい」「CMでも利用したい」というふうに他媒体での利用依頼が出てきます。せっかく作ったデータですので、広告主はできるだけ効果的に、色々な媒体に利用したいと考えているからです。静止画だけでなく動画も、動画だけでなく静止画も、というふうに仕事が増えていきます。

つまり3DCGを利用すると、広告主にとって理想的なマルチメディア展開が可能になり、制作側にとっては、これまでなかったような仕事が生まれていきます。最近では、キヤノンEOS 5D Mark IIなどの一眼レフカメラを使った簡単な動画制作も可能になったので、動画をCGで組み合わせるなど、更に仕事が増えていきます。

3DCGにしかできないこと

前回、3DCG写真の利用が増えた理由の1つとして、「写真と3DCGの品質の差がなくなった」例を見ましたが、それだけではありません。3DCGでは、写真では表現できなかったことも制作可能です!

img_soft_3dcgmezase_02_03.jpg画像提供:Autodesk, Inc. Image courtesy of Arcmedia

1. 実物がまだ無い物を、先行して3DCG写真で制作
(例:撮影用モックアップ〈模型〉が間に合わなくても、3DCGなら先行して写真制作が可能)

2. 撮影では困難な依頼内容を、3DCGなら自由に表現できる
(例:理想どおりの場所や部屋を制作できる。ロケ先やハウススタジオを制作)

3. 実際には見えない「製品の特徴」を分かりやすく伝える※
(例:マッサージチェアの機能を伝えたい場合。ムービーで、実際には見えない椅子の内部の動きを効果的に伝えることができる)

※良い例があるので、リンクを貼っておきます。
【写真・レタッチプロダクションで制作されている3DCG写真業務の事例】
電動カミソリの内部機能がわかるアニメーションです。

3DCGを利用すると、クライアントに喜ばれること

撮影業をされている方は強く実感されると思いますが、3DCGならこれまで撮影で負担になっていたこんなことも解決できます。

1. ロケハンがいらない
2. 天候に左右されない
3. スタジオに運べないような大きな物もPCの中で制作可能

広告主は撮影で不便に感じていたことを3DCGで解消し、そのメリットを重宝するようになっています。これを撮影に戻すのが難しいのは、その便利さを知ってしまったからです。例えば、携帯電話を使っている人に「携帯をやめて、公衆電話を使って」と言っても、なかなか元の生活には戻れない、というのと同じです。

また、3DCGでは単品で製品写真を作ることもありますが、撮影と組み合わせて使われることも多いです。「背景は写真で、製品は3DCG」の場合もあれば、「製品は写真で、背景は3DCG」の場合もあります。このほか、「人物は実写で、小道具は3DCGで制作」など、制作するものによって、色々な表現方法が出てきます。ですからCGだけでなく、撮影とCGの両方できるほうが有利になります。広告主にとっては、撮影と一緒にCGも頼めるほうが楽で、何より速いからです。

3DCG写真制作では、広告制作経験者の活躍が求められている!

3DCG写真は、3DCGソフトの中に【スタジオライティング】を再現して制作していきます。製品を最も魅力的に見せるアングルはどこか、製品のどこにライトを当てればイメージどおりの写真になるのか、など、写真制作のセンスと技術が求められます。細かな表現方法にも、写真の制作ノウハウを利用します。例えば光の加減を調節するために、ライトの前にトレーシングペーパーを使う、ということは撮影でよくありますよね。3DCGソフトでも、製品に当てる光量を調節したり、グラデーションを付けたりします。

img_soft_3dcgmezase_02_04.jpg現実のライティングを3DCGソフトで再現すると品質が高まる(3DCGソフト(Autodesk 3ds Max)の制作画面の一部)。左:スタジオでのライティングを記録したもの。右:スタジオを参考にした3DCGソフトのライティング。

現在3DCG写真を制作している人の多くは、以前3DCGでゲーム/CM制作をしていたクリエイター(または3DCG未経験者)です。しかし、これらのクリエイターには「広告制作経験がない」ということが課題になっています。いま3DCG写真制作に求められているのは、広告写真の制作ノウハウ、広告制作経験者の活躍です。アングルやカメラ設定、ライティングなどの撮影で得た技術が、3DCG制作で最も重要なノウハウの一つとして求められています。

実際に3DCGソフトを習熟するには

3DCG写真を使う企業は確実に増えています。実際に、制作プロダクションが「CGやっています」と言えば、CGの受注はどんどん増えていきます。

とは言え、ソフトを買えばすぐフォトリアルな3DCG写真ができるわけではありません。私も独学で 3ds Maxを数年間かけて勉強しましたが、大変苦労しました。「ソフトが進化して制作しやすくなった」と言っても、書籍や専門学校で教えているのは動画制作用の内容だけだからです。そのため私は試行錯誤しながら、フォトリアルな広告写真(静止画)を作る方法を一つ一つ確かめていきました。

現在は、皆さんが私と同じことを繰り返さず、スムーズに導入できるように、最も効率的に技術を習得できるカリキュラムを構築し、このノウハウをまとめて伝える実習型のスクールを開講しています。3DCG写真制作に特化した内容を徹底的にやるので、皆さん短期間でかなりうまくなっていきます(具体的な「制作の流れ」については、次回の連載でお話しします)。3DCGソフトの習熟には時間が掛かりますので、なるべく早く始められることをお勧めしています。

今回は、使われている媒体、具体的な利用方法、 3DCG写真制作の現状、などをお伝えしましたが、いかがでしたか。3DCG写真業界の全体像がイメージできましたか。

本文に出てきた3DCG写真制作のノウハウをまとめて習得できるスクールの詳細があるので、リンクを貼っておきます。現在活躍する3DCG Photographerの作品や、全8回でどんなふうに習得していくのかなど、ご興味がある方は見てみてください。

http://www.perch-up.jp/design-viz/dviz_school.html

次回は、いよいよ3DCGソフトで3DCG写真を作る「制作の流れ」をお伝えします。

写真:長尾健作

長尾健作 Kensaku Nagao

広告ビジュアル制作のデジタル化/3DCG 化 (ビジュアライゼーション) を業界最大手の株式会社アマナで実現。それに必要な戦略立案、市場開発、表現技術開発、人材開発、などを手がけ現在はこのビジュアライゼーションの新しい利用シーンを拡大させる活動等を行っている。 http://www.perch-up.jp

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