めざせ!3DCGフォトグラファー

第5回 3DCG写真制作に必要な機材

解説:長尾健作

この連載も第5回になりました。これまでの記事から、3DCGの利用が増えている広告業界の現状を知り、3DCG写真の概要も分かってきた今、実際に自分で制作することを検討されている方もいるかと思います。では、3DCGソフト以外には何が必要なのでしょうか。

低価格化された機材

広告写真に3DCGがよく使われるようになったのは、広告主にとって3DCGを利用するメリットが多いからですが(連載 第1回参照)、機材が低価格になったということも大きな要因の1つです。

3DCG写真制作が始まった当初(約10年前)は、初期投資額がかなりかかりましたが、現在は、3DCGソフト(60万円程度)を1つ買えば仕事が始められるようになりました。ソフトは低価格化した上に機能が進化して、ハードは低価格化した上にスペックが大きくなったので、今から始められる方にはいいですよね。3DCGのニーズが増えたところに、機材が追いついてきた時期ですから。

今回は、制作に必要な機材(ハード・ソフト)について解説します。機材によっては推奨するスペック、お勧めの製品もご紹介します。一から自分で情報を集めるのは難しく、時間もかかりますので、参考にしてみてください。

3DCG写真制作に必要な機材(クリエイター1名分を想定)

PC:2台(制作用、レンダリング用)

制作用PCは、2CPU以上の物をお勧めします。3DCG写真制作では「レンダリング」(連載 第4回参照)という計算時間のかかる作業を頻繁に行なうので、計算処理が早い機材を使います。計算作業中はCPUが占有されるためにその間は制作ができなくなりますので、制作用PCのほかに、レンダリングだけを受け持つPCをもう1台用意しておきます。

制作PC(推奨スペック)
・HP Z600 か Z800
・OS:Windows 7 64bit
・CPU:Xeon 4core x 2CPU(ディアルプロセッサー)以上
・メモリ:12GB以上
・グラフィックスボード:NVIDIA Quadro 2000 以上


推奨製品
HP Z600
HP Z800


モニター

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モニター:EIZO ColorEdge

3DCG写真制作でも「カラーマネジメント」は重要です。その理由は3DCGで制作した写真を「広告写真」として使うので、実際の製品と同じ色や素材に見せる必要があるからです。高い精度の画が求められるので、ハードウェアキャリブレーション対応の高性能なモニターをお勧めします。


プリンター

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プリンター:EPSON PX-5002

3DCG写真は守秘性が高いため、制作チーム用に専用のプリンターを用意して、関係者以外が出力物を閲覧するのを防ぐ必要があります。品質、使いやすさ、ランニングコストの低さという点から、以下の2つを推奨します。

推奨製品
EPSON PX-5002
EPSON PX-6550


デジタルカメラ、スキャナ

テクスチャーとして利用する素材を取り込む、「デジタルカメラ」や「スキャナ」も調整が必要です。デジタルカメラは色温度の設定に気をつけますが、もともとの色特性はカメラメーカーが味付けしていますので、なるべく素材の色を脚色しない物が適しています。

推奨製品(スキャナ)
EPSON GT-X970


カラービューワー

カラービューワーは、出力物の色を確認する色評価台と似ていますが、ここでは「紙」ではなく「素材観測」を行うため、紙を観測する機材とは少し異なります。ボックス型で、中に製品(及び素材)を入れて、正確な色を読み取ります。また、電気スタンドや色評価用の蛍光管でも代用できます。

推奨製品
JUST Color Viewing Light


測色器

3DCG写真制作では、製品の色を3DCGソフトで再現する必要があるため、測色器を使って正確な色を作ります。また、この測色器を使って、モニターの色を正しく調整することができます。「カラーモンキー デザイン」という製品が使いやすいのでお勧めです。


タブレット

画像処理に利用することで、品質と作業効率を高めることができます。大きい画面には大きいタブレットを利用すると使いやすいと思います。24inchモニターには Large または Medium がお勧めです。

推奨製品
wacom intuous4


3DCGソフト

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Autodesk 3ds Max Design 2011

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Autodesk Maya 2011

ソフトはAutodesk 3ds Max Design、またはAutodesk Mayaを使います。どちらを使っても最終的な仕上がりは変わりません(連載 第3回を参照)。


3DCGデータ変換ソフト(CAD変換用ソフトウェア)

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Autodesk Showcase

CADデータは3DCGデータに変換する必要があるので、「変換ソフト」を使います。変換ソフトとCADには相性があり、CADによってはデータの破損・不具合等が発生するので、相性のよいソフトを見つけることが不可欠です。ここでは業界で定評があるAutodesk Showcaseをご紹介します。

推薦製品
Autodesk Showcase


画像処理用ソフトウェア

3DCG写真制作では全てを3DCGソフトで制作するのではなく、Photoshopで最終的な仕上げをすると、作業効率が上がって、品質もよくなります。

推薦製品
Adobe Photoshop


レンダリングサーバー

業務が増えてきたら「レンダリングサーバー」を導入します。このシステムは拡張性も高いので、業務拡大に合わせて徐々に導入していくことができます。

詳細は、パーチのHPのミニコラム「どうしてレンダリングサーバーが必要?」で解説しています。

3DCGクリエイター育成スクール

機材を揃えても、3DCGソフトを使えないと仕事ができません。習熟には私もかなり苦労しましたので、皆さんが同じことで時間を使わないで済むように、制作に必要な技術をまとめて、全8回の講義で習得できるスクールを開講しています。これまでに受講されたフォトグラファーやレタッチャーの方は今「3DCGフォトグラファー」として活躍されています。今後も定期的に開催しますので、活用してください。

「デザインビズ(3DCG写真制作)クリエイター育成スクール」詳細はこちら


今回お話しした機材についてまとめたページが、パーチのHPにもあります。重複するところもありますが、「業務が増えたあとに追加していく機材」なども紹介しているので、参考にしてみてください。

それから、モニターや測色器、カラービューワー等の解説でも触れたように、3DCG写真制作では、色に関する作業がとても重要になります。そこでパーチでは「3DCGのためのカラーマネジメントセミナー」を開催しています。詳細はリンク先のページで、動画でも確認できます。3DCG制作に特化した唯一のカラーマネジメントセミナーですので、必要な方は活用してください。

次回は「フォトリアルな3DCG写真を作るには?」というタイトルで、3DCG写真制作で求められるスキルについてお話しします。ご期待ください。

写真:長尾健作

長尾健作 Kensaku Nagao

広告ビジュアル制作のデジタル化/3DCG 化 (ビジュアライゼーション) を業界最大手の株式会社アマナで実現。それに必要な戦略立案、市場開発、表現技術開発、人材開発、などを手がけ現在はこのビジュアライゼーションの新しい利用シーンを拡大させる活動等を行っている。 http://www.perch-up.jp

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