2012年07月18日
Photoshop CS6の大きな特徴の一つが、大幅に作業効率が改善された部分だ。描画速度の改善、保存機能の強化といった、一見、地味に感じる部分だが、毎日の作業が快適になる、強力な機能強化だと言える。ここではMercury Graphics Engineについて見ていきたい。
新しい画像処理エンジンで改善された機能
Photoshop CS6では「ゆがみ」や「自由変形」といった、CPUに負担のかかる作業をさせる際にも、流れるようなスピードとレスポンスで表示が行なわれるようになった。これはCS6のために新開発された「Adobe Mercury Graphics Engine」が画像処理エンジンとして搭載されたことによるものだ。
この新エンジンは64bitに対応した機能でGPUのパワーを活用したAdobe独自のテクノロジーであり、さまざまなツールの描画速度が大幅に向上するという恩恵をもたらす。
このエンジンの効果は、PCが搭載しているグラフィックカードの優劣によって動作に差が出てくるため、あまりスペックの低いものを選ぶのは避けたいところだ。なお3D機能と一部のGPU対応機能についてはWindows XP環境下ではサポートされない。
切り抜きツール
従来の切り抜きツールのように、枠を動かし回転させるだけではなく、画像側を動かし回転させられるようになった。画像がスムーズに動くのは新エンジンが採用されたおかげだ。
では、この新エンジンが威力を発揮する機能について見ていくことにしたい。まず紹介したいのはCS6で刷新された「切り抜きツール」だ。CS6では、CS5までのフレーム枠を移動して切り抜く範囲を決める機能に加え、バックグラウンドに表示された画像をリアルタイムで移動させたり、回転させたりできるようになったのだが、これはまさに新エンジンの効果だ。
ゆがみフィルター
ゆがみフィルターのブラシの動きに対して、リアルタイムに追従するようになったほか、ブラシ径アップ、精度・速度向上、復帰再構築の速度向上と、大幅な向上が見られる。
「ゆがみフィルター」についてもその効果は大きい。これまで、各種ツールの動きに対し、ワンテンポ遅れて画像が変形するようなイメージがあったかと思うが、CS6ではリアルタイムに、効果の度合いを確認しながら作業ができるようになった。さらに、ゆがみフィルターで使用できるブラシサイズが最大1万5,000ピクセルまで拡大したことや、1段階ごとにしか戻ることができなかった「再構築」機能で、スライダーで戻りたい量を調節できるようになった点なども、新エンジンの威力だと言える。
例えば、ポートレイトで、目や口角などに微細な調整を加えたいといったケースでも、カーソルの動きにピクセル単位で追従し、なめらかに動いてくれるので、やり直しなどせずとも、一度の調整で高速に仕上がってしまう。数値に現れにくい部分ではあるが、こういった部分にこそ、この機能の素晴らしさを感じてしまうのは筆者だけではないはずだ。
速度がもたらす快適な操作感
「広角補正フィルター」や「ぼかしギャラリー」各種機能も、新エンジンが効果を発揮する部分だ。広角補正フィルターは、画像のゆがみを取り除く機能で、画像全体が大きく変化するが、描画速度が素早いこともあって操作感はとてもよい。
広角補正フィルター
広角レンズやパノラマで撮影した画像の歪みをまっすぐに補正する機能。ここでも複雑な計算が行なわれているが、描画作業はスムーズに行なわれる。
また、新しいぼかしツールでも、一枚の画像に対し、ぼかしの中心点を複数設定したうえで、角度、ぼけ具合、効果を設定するといった複雑な効果を加えることになるが、その操作感が良いのも新エンジンだからだ。
ぼかしギャラリー
複数のポイントを指示して複雑な表現ができる、新しいぼかしギャラリー(図は「チルトシフト」)。複雑な計算が行なわれているが、新エンジンのおかげで作業はスムーズだ。
油彩フィルター
ブラシのストロークや照明の明るさ、角度を細かくコントロールできる「油彩フィルター」。プレビュー画面でもリアルタイムに変化を確認できる。
[Adobe Mercury Graphics Engineが効果を発揮する機能(一部)]
この他にも、「パペットワープ」のプレビューや「自由変形ツール」のような複雑な演算が必要な処理についても高速かつ精細、そしてよどみなく描画してくれる。慣れてしまうと、特別に意識するようなものではないが、実は、精密にファインチューニングされたレーシングマシンが動作しているようなもの。操作感と密接に結びついた機能向上だけに、大きく評価したいところである。
POINT!
Adobe Mercury Graphics Engineがもたらす描画速度の改善は、「操作感の向上」につながっている。
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写真家。1965年東京都生まれ。Triceps代表取締役。大阪写真専門学校(現・大阪ビジュアルアーツ専門学校)を経て、1985年頃よりパリをはじめヨーロッパ各地で過ごし、自らの芸術性にヨーロツパの影響を受ける。ファッション誌やCDジャケット、広告写真を手がけるほか、コマーシャルプロデュースや、婚礼写真のデイレクションも行うなど幅広く活動。日本のみならずアメリカ、ヨーロッパでも活躍。コンピュータにも才があり、デジタル写真の分野においても異才を放つ。APA(日本広告写真家協会)正会員。
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