Photoshop CS6の新機能

静止画の感覚でビデオ編集ができる「タイムライン」パネル

解説:茂手木秀行

これまでExtended版だけの機能だったビデオ編集が、CS6からは通常版のPhotoshopでも可能になった。Photoshopでビデオ編集ができると何が便利なのか、詳しく見ていこう。

静止画での画像編集のノウハウが動画でも活きる

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ムービー編集時の初期画面。下部に表示される「タイムライン」パネルが目新しい。もちろんこのパネルも含め、すべてのパネルが自由に移動が可能だ。通常のムービーソフトウェアではこうした自由度も少ないものだ。

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ムービーの時間は「タイムライン」パネルに「ビデオグループ」ごとの「トラック」として表示される。この中には5種類の基本的な「フェード」も用意され、ストーリーとしての基本的な編集も行なえるようになっている。

デジタル一眼レフによるムービー撮影が一般化してきたことで、ムービー制作の依頼を受けるフォトグラファーも増えてきたのではないだろうか。撮影そのものはともかく、ムービー特有の色味調整となるとなかなかてごわいものだ。After EffectsやPremiere Proでは「YCbCr」などフォトグラファーにとってなじみの薄い色空間で行なわれる上に調整幅が狭く、色味やトーンを作り上げるのが難しい。

しかしPhotoshop CS6では、これまでExtended版にしかなかったムービー編集用の「タイムライン」パネルが追加され、静止画と同じ「RGB」の色空間で画像を扱うことができるようになり、なおかつ16bitでの編集も可能だ。

特筆すべきは、動画をスマートオブジェクトとして扱い、静止画と同じフィルターを使うことができる点だ。さらに、マスクを使った細かな調整も可能で、元データの非破壊編集をムービーでも実現してしまっている。これは、他のムービーソフトウェアにはない、Photoshop CS6だけの強みである。

さらにムービーの編集も、レイヤーとしてムービーファイルを重ねていくことで、ストーリー性のあるムービーを制作できてしまう。実は、Photoshop CS6は、優れたムービー編集ソフトなのだ。ただし、長時間のムービーを扱うには、実データが大きくなり過ぎるため現実的でない。短いクリップのレタッチをPhotoshopで行ない、ストーリーとしての編集をPremiere Proで行なうのが現実的な方法だろう。

ムービーの非破壊編集が可能に

ムービーファイルを開くと、「ビデオグループ」としてグループにまとめられるが、新しいトラックを作るには「新規グループ」を作成して、そこにムービーファイルを追加すればよい。フィルターや色調補正、レイヤー効果、マスク、テキストなどの補正は1つのムービーファイルごとにグループ内でまとめておくと管理しやすい。また、タイムラインで指定し、「変形」「不透明度」「スタイル」を時間に合わせて変化させることも可能だ。「レイヤー」で画像を、「タイムライン」で時間を扱うというわけだ。

POINT!

ムービー編集に、静止画編集の知識と経験を活かせるようになった。

さらに16bitモードやLabモードでムービーを扱うことができるので、画質の劣化を最小限に抑えられ、PSD、PSB、TIFFのいずれかで行なえば、すべての「レイヤー」が保存され完全な非破壊編集となる。

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まず、「スマートオブジェクト」に変換してから「インターレース解除」とノイズ処理を行なうとよい。その後、「調整レイヤー」を用いて色作りを行なう。「マスク」や「レイヤー効果」も含めて静止画と同じレタッチが可能だ。

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ムービーに対しても、「マスク」や「レイヤー効果」といった、静止画と同じレタッチが可能だ。Photoshopに対する知識や経験を活かすことができる。
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COLUMN

「環境設定」の忘れてはいけないポイント

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データ保護と言う観点から、CS6ではバックグラウンド保存と「復元情報の自動保存」が行なわれるようになった。これらの機能により、見かけ上素早い保存とシャットダウンによる作業データの消失が効率的に防げるようになった。これらは「環境設定」でコントロールされ、デフォルトのままで問題ない。しかし、アップグレードを行なった場合、旧CSの設定が引き継がれるので、「環境設定」と「カラー設定」は今一度確認しておくほうがよいだろう。「環境設定」では「ファイル管理」をチェックする。「ファイルの保存オプション」がデータ保護に関する部分だ。すべてにチェックが入っているかを確認する。また、「ファイルの互換性」の「PSDとPSBファイルの互換性を優先」についてだが、レタッチ作業を複数の人間が行なうワークスタイルでなければ「常にオフ」でよいだろう。データサイズを節約できる。



写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

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