Photoshop CS6の新機能

Camera Rawの画質と機能の強化ポイント

解説:茂手木秀行

フォトグラファーの関心は、やはり画質をはじめとする表現力に関する部分に集まるに違いない。Photoshop CS6では、Camera Rawを中心に、大幅な画質の改善が果たされている。

基本補正パネルがリニューアルされた「Camera Raw 7」

Photoshopのアップグレードで注目すべきなのは、実は、基本性能の向上であることが多い。今回のCS6でも、画質の処理性能のアップ、中でもバージョン6.xからバージョン7へとアップグレードされた「Camera Raw」には驚かされた。新しいカメラはもちろん、古いカメラのデータでも画質をアップさせてくれる。

Camera Raw 7でまず目につく変更点は、基本補正パネルの露光に関する項目とその役割が従来とは一新されている点だ。上から順番に、中間調の明るさを変える「露光量」「コントラスト」、中間調より明るい部分を補正する「ハイライト」、中間調より暗い部分を補正する「シャドウ」、白とびを軽減する「白レベル」、黒ツブレを補正する「黒レベル」という順になり、役割が明確になったと言える。これにより、まず「露光量」で全体の明るさを決め、次に「コントラスト」を適宜調整して写真全体の外観を決める。その結果を見て、気になる部分を上から順にパラメータを補正していけば自然と補正が完了する。この考え方は人の感性に沿っており、とても操作しやすいものだ。

CS6
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CS5
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基本補正パネルの、順番と項目が変更された点に注目してほしい。単なる順番の入れ替えでなくアルゴリズムも変更されており、ことに「露光量」はCS5の「明るさ」に相当し白とびを抑えつつ中間調の明るさを変更するようになった。まずは「露光量」から補正するとよいだろう。Camera Raw 6.xでは「明るさ」を補正した後、各項目を行きつ戻りつしなければならなかったが、Camera Raw 7では上から順に調整すればよいので、結果ストレスを感じることなく、手早く補正が終了するのだ。
CS6
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CS5
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これまで「トーンカーブ」のデフォルトは「コントラスト(中)」であったが、これが「リニア」 に変更された。「基本補正」を終了後、さらにトーンを細かく設定する場合にも、すぐに作業ができて便利。小さな改善に見えるが、これで作業効率が上がる。

もう少し細かく見ていこう。各パラメーターは単に順番が変更されただけではない。たとえば「露光量」においては、従来とは違って、明るい方向に調整してもハイエストが圧縮され、白とびを起こしにくくなったし、「コントラスト」では、白とび、黒ツブレ双方が起きにくくなっている。これは、画像の明るさを、人の目の特性に近い輝度で補正を行なうアルゴリズムに変更したためではないかと思う。CS5で導入された「明るさ・コントラスト」の新方式と同じだ。さらに後述する新しい処理アルゴリズムにより、低ノイズ化され、大きな補正を行なってもトーンの破綻を起こしにくくなっている点もポイントとして挙げられるだろう。

POINT!

自然な操作感と高品質な仕上がりが、表現力の向上と効率アップにつながる。

Camera Raw 7の特徴をまとめると、低ノイズ化されて画質が向上し、自由な表現を求めて大きく画像を補正でき、人の感性に沿ってストレス無く補正が終る、ということになるが、これはそのままフォトグラファーとしてのメリットと直結するものだ。現実の前に立つことで感じたことをあますことなく再現できるとともに、業務としての大量の画像も効率よく、高品質な写真として現像することができるようになったのだ。

新しい「基本補正パネル」の操作の流れ

①Camera Rawで開く

img_soft_pscs6_06_05.jpg 撮影時の画像は、雲が白とびしないよう、アンダーめの露光としているためシャドウ部がかなりつぶれている。日没間際の、真夏だからこその強い光が映し出す、雄大な積雲の色とディテールを残したかったのである。

②まずは露光量とコントラストを調整する

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img_soft_pscs6_06_08.jpg まず「露光量」で全体の明るさを決め、「コントラスト」を設定して全体の印象を作る。夕暮れ時の適切なコントラスト感を保ちつつ、暗くなりすぎたシャドウを救うようにした。ここでは、ハイライトのトーンの崩れは気にしていない。

③ハイライトとシャドウを調整して仕上げる

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img_soft_pscs6_06_11.jpg 「ハイライト」でハイエストではない明るいトーン、「シャドウ」ではローエストではない暗いトーンのレベルを調整する。それぞれを調整すると白とびと黒ツブレが起きるが、それは 「白レベル」と「黒レベル」で救えばよい。

調整項目が増えた「補正ブラシ」「段階フィルター」

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「補正ブラシ」と同じ調整項目を「段階フィルター」でも使うことができる。なかでも「色温度」「色かぶり補正」は絵作りをする上でありがたい。部分的にホワイトバランスを変更することで、画像の一部分の色味を変えることができる。対象物の大きさで、「補正ブラシ」と「段階フィルター」を使い分けるとよい。
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段階フィルターで調整を行なう
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Camera Rawでは以前から「補正ブラシ」と「段階フィルター」を使った、画像の部分的な補正ができたが、今回はその項目の変更と追加が行なわれた。変更点は「基本補正」と同様、「露光量」で中間調のトーンを決めるようになって「明るさ」が姿を消したこと、「ハイライト」と「シャドウ」が登場したことだ。

さらには、ホワイトバランスを決める「色温度」「色かぶり補正」と「ディテール」に関わる「ノイズ軽減」「モアレ軽減」も追加された。「色温度」「色かぶり補正」ではよく晴れた日中の撮影で影になった部分の色温度が高くなり、バランスが崩れた場合などに影だけを補正できる。「ノイズ軽減」は、「基本補正」「黒レベル」を大きく補正して、シャドウだけにノイズが乗った場合など、部分的な処理が必要な場合に役立つ。しかし、追加項目で最もありがたいのは「モアレ軽減」だ。デジタルカメラがベイヤー配列のセンサーを使う限り、モアレの発生は避けて通れない。

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補正ブラシを選択し、パラメータで「モアレ軽減」 を選択すれば、ブラシを使った部分的なモアレの軽減ができる。
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モアレを除去した結果
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筆者の場合、Camera Raw 6.xでは、「ディテール」パネルの「ノイズ軽減」と「カラー」を使い、モアレを軽減した画像とモアレを軽減していない2枚のをレイヤーで重ね、マスク処理することでモアレを軽減した画像を生成していた。こんなに面倒なことをせざるを得なかったのは、「ディテール」パネルからは部分的な補正ができなかったためだ。

少々専門的な話になるが、内部処理が「CIE L*a*b*」で行なわれるCamera Rawでは、シャープさに関わるLチャンネルはそのままに、色差チャンネルであるa*b*だけをぼかすことで偽色やカラーモアレを低減できる。ただし、その反作用として、色調が狂ってしまうのだ。そのため、2枚の画像を現像し、レイヤー上で作業する必要があったのだ。

しかし、モアレが発生するのは画像の一部分。だからこそ、「補正ブラシ」と「段階フィルター」に「モアレ軽減」が加わったことは作業効率の大きな向上といえるのだ。

POINT!

新しいCamera Rawでは「ノイズ」や「モアレ」への対策も進んだ。

ただし、過信は禁物だ。色モアレには有効でも、明るさが大きく変化する輝度モアレでは効果がない場合があるからだ。やはり、基本はモアレを出さない撮影を心がけたいところだ。

「カメラキャリブレーション」の処理が2012バージョンへと進化

2012アルゴリズムで現像した結果
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基本補正項目の改善やモアレの低減機能の拡充など、画像品質向上を第一とするCamera Rawではあるが、その根幹となる画像処理アルゴリズムについても触れておきたい。ヒストグラム下に並ぶ調整項目の中のカメラの形のアイコンが「カメラキャリブレーション」である。通常はまったく触れる必要のない項目だ。入力された画像をCamera Rawがいかに扱うかを設定する入り口になっている。「処理」項目のプルダウンメニューを表示させてみると、西暦の項目が選択できるが、ここで選ばれている年が選択された現像アルゴリズムのバージョンである。

Camera Raw 7では「2012」が初期設定で、ほかに「2003」と「2010」が選択できる。これを変えるとノイズ処理やガンマ、階調性など、画像処理の結果が大きく変わる。「2012」では、ダイナミックレンジが広がりノイズが減るのである。これはそのまま高画質に直結する。

POINT!

新しい現像アルゴリズムが、ダイナミックレンジやノイズ処理を大幅に改善。

「2003」と「2010」が残されているのは、従前に現像した作品とトーン、ノイズを合わせるための配慮だと思われるが、古い作品についてはもう一度、Camera Raw 7で現像し直すことをおすすめしたい。


写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

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