Photoshop CS6の新機能

「広角補正フィルター」で狙った歪みを取り除く

解説:茂手木秀行

画像の歪みを補正するフィルターとして、「広角補正」フィルターが加わった。歪んでいる部分をドラッグするだけで直線になるなど、簡単な操作で劇的な効果をもたらすツールだ。

狙った部分だけをまっすぐに

レンズの歪曲収差やアオリによる歪みを補正するフィルターとして、これまでの「レンズ補正」フィルターに加え、「広角補正」フィルターが加わった。

「レンズ補正」フィルターでは、画面全体に補正を加えるものだったが、「広角補正」フィルターは「まっすぐにしたいところだけをまっすぐにする」フィルターだと考えるとわかりやすい。

補正には「コンストレイントツール」という新たなツールを使用する。歪んでいる画像にクリックしてポイントを作り、ドラッグするとその部分が直線になる。この時、シフトキーをクリックしながらドラッグするとその直線が水平、もしくは垂直のラインになるので、画像回転も同時に行なえる。また、クリックしたポイントや直線の角度も後から変更でき、神経質な作業を必要としないので作業しやすく、わかりやすい。

補正のアルゴリズムには「魚眼レンズ」「遠近法」「自動」「完全な球面」の4つのオプションがある。「レンズプロファイル」が設定されている画像では「自動」が選ばれるが、他のオプションに変更が可能だ。通常は自動でよいが、それぞれ試してみて、補正しやすいオプションを選ぶとよいだろう。

「魚眼レンズ」はその名前の通り、魚眼レンズを使用した際の歪曲が強い画面に向いている。「遠近法」は歪曲の少ない超広角レンズ向き。「完全な球面」はアスペクト比1:2のパノラマ画像を扱うのに適している。「魚眼レンズ」では補正の曲率も変更できるので、細かな補正だけでなく大胆な補正も可能だ。

「レンズ補正フィルター」の結果
img_soft_pscs6_07_02.jpg
img_soft_pscs6_06_01b.gif
元画像
img_soft_pscs6_07_01.jpg
焦点距離15mmの対角線魚眼で撮影した風景を「レンズ補正」フィルター(上)と「広角補正」フィルター(下)で補正してみた。「レンズ補正」フィルターでは、歪曲こそないものの不自然なパースペクティブだ。また、画像が欠ける部分が多くかなりトリミングしなければならない。「広角補正」フィルターでは、自然なパースペクティブであると同時に画像の欠けも最小限に抑えることができた。
img_soft_pscs6_06_01c.gif
「広角補正フィルター」の結果
img_soft_pscs6_07_03.jpg
img_soft_pscs6_06_12a.gif
img_soft_pscs6_07_04.jpg
「補正」欄では、レンズプロファイルにのっとった補正を行なう「自動」のほか、「魚眼レンズ」「遠近法」「完全な球面」から選択できる(レンズによっては選べない項目もあり)。

コンストレイントツールをどう使うか

きれいな補正のコツは、「コンストレイントツール」の線分をできるだけ長くすることだ。「コンストレイントツール」は、引いた線分の範囲で補正しているからだ。むろん、後から位置も長さも変更できるので、神経質になる必要はないのだが。

まずは補正項目の「拡大・縮小」を使って画像のすべてを表示して、補正作業を行ない、補正終了後に「拡大・縮小」すればよい。補正後に画像が足りなくなる部分は、「コンテンツに応じた塗りつぶし」や「スタンプツール」で修正する。また、ツールにはもう一つ「多角形コンストレイントツール」がある。こちらはビルなど長方形の物を囲うようにして、一括で歪みを補正するツールだ。適宜使い分けよう。

POINT!

歪曲収差やアオリによる歪みを自然なパースペクティブに補正。実践的な使用も可能なツールだ。

線分の長さも含めて、うまく使いこなすと、高倍率ズームにありがちな陣笠タイプの歪曲や、パノラマ合成で複雑に歪んでしまった画像を自然なパースペクティブにすることができる便利なツールである。


[広角補正のための「コンストレイントツール」を操作する]
①コンストレイントツールを選ぶ
img_soft_pscs6_07_05.jpg
まず水平にしたいラインを決める。画面左上のアイコン「コンストレイントツール」を選び、水平線をドラッグする。歪みに合わせて線分は自動的に弧を描くので、円弧が概ね水平線に合うようにドラッグしていく。
②ドラッグした部分が直線になる
img_soft_pscs6_07_06.jpg
画面端までドラッグしたらシフトキーを押しながらクリックすると、いま描いた円弧と円弧に沿った画像が直線かつ水平になる。うまくいかない場合は、両端にあるアンカーポイントをドラッグして調整する。線分中心の円は角度の補正だ。
③四角いものは多角形コンストレイントツールで
img_soft_pscs6_07_07.jpg
画面内にビルなど方形の物体があるときは「多角形コンストレイントツール」を使う。左上から2番目のアイコンだ。あとは方形の頂点をクリックしていけば、線分が閉じた時点で、歪曲が補正される。後での補正も可能だ。
④まとまった建物はアンカーポイントを増やす
img_soft_pscs6_07_08.jpg
まとまったビル群などは、クリックしてアンカーポイントを増やし、まとめて補正する事ができる。手順3も同じであるが画面の一部の補正では、画面左下の表示倍率を適宜調整すると楽だ。これで左ページの完成画像となる。
COLUMN

復活したコンタクトシートII

img_soft_pscs6_07_09.jpg

img_soft_pscs6_07_10.jpg
コンタクトシートⅡは、ただ復活したのではなく機能強化が行なわれ新しくなっている。「ソース画像」の入力に新たな項目が増え、利便性と柔軟性が高まった。生産性の向上を全面に押し出した進化だ。

CS5では、後からプラグインとしてインストールする仕様になっていた「コンタクトシートⅡ」だが、CS6では復活し、はじめからインストールされるようになった。復活とはいっても、機能強化されていることはいうまでもない。たとえば、「ソース画像」の選択には「ファイル」と言う項目が加わり、自由に個別のファイルを指定できるようになった。また、「フォルダ」を選ぶ際に「サブフォルダー」を含めると「フォルダーごとにグループ化」することも可能になった。より整理しやすくなったと言えるだろう。


また、Bridgeの「出力」からもPDFのコンタクトシートを生成できるのはこれまで通りだが、カラーマネジメントが改善され、画像とPDF出力とがカラーマッチングして出力されるようになった。こちらも手軽で利用価値が大きな機能強化だ。



写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

関連記事

powered by weblio