2023年02月01日
何もない宇宙の始まり
創造主ゼウスのように
光を操って宇宙を 創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界 楽しい夢
日藝写真学科3年の芹澤みなほさん。昨年の日藝際では赤い紐で写真を吊り、祭壇風でどこか「祈り」を感じさせるような展示をしていた。そんな彼女が撮影のお題に選んだのは女性の身体の形をしたローソク。それを見て、昔、所属していたアングラ劇団の妖しげなショーを思い出すゼウス高井であった。
良い子は真似しないように
ランチして 帰ってきたら
スタジオに
撮影セットが 組んであった
ブツが 宙吊り
あっと そこ ダメだよ 芹澤
そこは 亀甲縛りだよ ゼッタイ
ハルカ姐さんに 聞いてみなよ
それとも やってもらうか
やられるのは
やることも 覚えるよね
“先生 ここ だめです
股の隙間がなくて
食い込ませられはんのです”
そうか そこはしょうがないな
太めにして 巻き込めばいいだろう
わかんないよ ググッとすれば
まだ おボコちゃん だからな
おおっ いいな そこ
濡れ具合がとってもいい
ベビーオイルか?
それとも オリーブオイル?
光 うまく当てて
テカラして ニュルって ね
亀甲縛り さすがだね ハルカ姉さん
さぁ うまく吊してだね
蝋燭を滴たらせよう
まだ 始まったばかりなのに
ん ん 燃やすのか
スタジオ 火器厳禁なのに
なんだ 要注意だな
時間は たっぷりだけど
ゆっくり 調教しなきゃな
快楽は 苦悩と同居
それも 教えなきゃ
良い子は 真似しないように
お楽しみは これから
ライト:❶ ❷broncolor Boxlite 40/カメラ:Canon EOS 5D Mark IV/レンズ:EF50mm F1.8 STM/1/100秒 f22 ISO640
左からのライト❶。
右からのライト❷。
完成カット。ライト❶+❷。ローソクの芯は使わずオイルを染みこませた紐に点火。
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リアルの光は見えすぎる
精ちゃん それ ヤバくない?
“大丈夫だよ
この蝋燭 融点が低いから
低温蝋燭だし
それに 俺を 誰だと思ってるの
槍槍の SM師だぜ”
マリー 大丈夫なのか?
“アタシ 平気 好きものだし
準備いいわよ”
真っ昼間
夜のクラブ空間を
昼の時間だけ 借り切って
厚めの遮光カーテンで 光 遮り
ヒップレス喫茶
『シアター・スキャンダル』
営業開始
劇団を 運営するために
座長が 考えた 男の 娯楽場所
真っ昼間の 秘密の 娯楽場所
活動資金の 獲得場所
源氏物語 浮世絵
日本の文化は 男と女の エロで
豊穣な世界
描いているんだからな
美の基本は エロ
劇団『スキャンダル』の 基本方針
高度成長期の 男の社交場
ショーの 始まりだ
スポットライトに ピンクを はさみ
細くしてから 少しずつ
ダンサーに あてていく
スライドスポットに
波の写真 ヌードの写真 はめて
交互に投影
バックミュージックは 般若心経ベース
性の快楽と 死の苦悩
生きることの 意味
前衛的舞踏で 蠢きで表現
光は 柔らかく 繊細に あてよう
“生のライトは やめてね”
なんて マリー 言ってたからな
リアルの光は 見えすぎる
リアリティーは
ファンタジックな 光の中に
なんてね
音が 流れはじめて
鎖のジャラジャラが 動く
金箔の姿体が うごめき
滴り落ちる 蝋の熱さに
浮かぶ そりきった白い姿体
よじれた声 おし殺したように
ウグッ アッ アーッ
セリフなし 響くのは 喘ぎ声
蝋燭の ゆらめき
艶かしい 光の軌跡
悲鳴にならない うねり くねり
観客の 飲み込む唾が
静寂の中に 密やかに
伽藍空間 音が染み込む
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遅延発光機能でけむりを三色分解
前回(1月号)と同様に、ストロボの遅延発光機能を使った撮影。今回はメインの被写体(ローソク)は動かさず、揺らぐ線香のけむりだけをRGB三色の光で多重露光。
ライト❶はスヌートにR(赤)のフィルターを掛けて、左斜め後ろから。ライト❷はスヌートにB(青)のフィルターを掛けて背後から。ライト❸はリフレクターにグリッドをはめてG(緑)のフィルター。❶、❷、❸の順で発光。
ライト:❶ ❷broncolor Pulso G Head+Conical Snoot/❸broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70+Honeycomb Grid/カメラ:Canon EOS 5D Mark IV/レンズ:TS-E90 F2.8L マクロ/0.3秒 f8 ISO100
ライティングの組み立て
スヌートにR(赤)のカラーフィルターをかけたライト❶。後ろのローソクの背の部分を中心にあてる。
奥からの、B(青)のライト❷を透過光で入れる。
G(緑)のライト❸を入れてライティング完成。
❶❷❸のライトは全て下からのアッパー光のため、それだけではローソク上部は暗いままだが、火を灯すことで上が明るくなり、肩や胸にハイライトが入る。
ストロボの遅延発光機能を使い❶→❷(遅延0.03秒)→❸(遅延0.06秒)の順で発光。
三脚にアクリルキューブをはめて、その上に白いローソクを置き、周囲にアクリル製のアクセサリーを飾った。アクリルキューブには三脚凸ネジ用のネジ穴が切ってある。ライトはスヌート2灯とグリッドを付けたリフレクター1灯。それぞれにRGB(赤・緑・青)のフィルターを貼り、アッパーライト気味にセット。
けむりの演出のために、三脚のポールには「線香立て」をテープで束ねて巻いている。
ローソクと線香に火を付けたら、スタジオの照明を落として撮影。線香のけむりは手持ちでも追加している。
遅延発光機能でR、G、Bのフィルターを付けたライトを時間差で発光。3色多重露光でも、R、G、Bが均等にあたる部分は無色光での露光になるが、動きのあるけむり周辺部はR、G、Bが分離してオーロラのようなグラデーションができる。
高井哲朗 たかい・てつろう
1978年 フリーとして活動開始。1986年高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
※この記事はコマーシャル・フォト2023年2月号から転載しています。
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