2023年06月06日
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界
4月に日芸写真学科2年生になったばかりの山譯峻亮くん。大学の先輩、新藤龍之介くんに「ゼウスクラブ」へ連れて来られて、撮影会。被写体は古いニコンのカメラ。山譯くんは、3灯で真っ暗な闇からカメラを浮かび上がらせるモノトーン表現。ゼウスはハンディライトやミラーボールを使ったカオスな世界。それぞれのカメラへの想いを光に込める。
ワケくん、ビンテージニコンの撮影
「ワケ」くんってニックネーム 本名は 山譯峻亮って書くんだね
ちょっと わかりづらい苗字だ
先輩の龍之介に 連れて来られて
むりむり ビンテージカメラ 撮ることに
ビンテージニコンは 龍之介が カメラ屋さんから 借りてきたもの
まだ 学校入って1年だから
スタジオライトの扱いも よく わからないのにね
“俺のやってること よく見とけよ” なんて
龍之介は ちょっと先輩気取り
“まずは 設定 大事だからな
メインライトは 形がわかるように
次は レンズの描写用ライト
ガラスの質感 透明度 これ 一番重要だからな
アングル フレーム どう切り取るかだ
色温度も ちゃんと計算しろよ”
という感じで 丸一日 特訓だ
ゼウスからのアドバイスは ひと言だけ
“光 あてれば 写るんだよ”
どうするかは 自分が決めるんだ
結果は 写真に写る 単純明快 写真に自分が映る
“映っちまった” じゃなくて 自分を写すんだよ
そこから 出発さ 自分で考えて 光を作る
いいって思えることを するだけだよ
良いか悪いか 結果はすぐ見えるから
精進するだけのことだね
※画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示
Photo:山譯峻亮
ライト:❶broncolor Picolite+Picobox ❷❸ broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70
カメラ:NIKON D850 レンズ:AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8
1/160秒 f18 ISO50
ライティングの組み立て
小型ボックスライト❶を軍艦部にあてる。メインライト。
フィルインはトップからディフューザー越しのライト❷。カメラ全体に光を入れる。
アクセントライト❸でレンズに光芒を入れ、下のシャドーを起こして完成。ライトは直接、レンズに向けずに、光軸をやや左にずらしている。
ゼウス、思い出のF2
スタジオマンから 写真家のアシスタントになり
そのアシスタントを 卒業して
フリーカメラマンとして やっていくことを 決めた時
持っていたカメラは ニコマート ひとつだけだったので
ニコンF2を 買った
お金 なかったので 丸井のローンで 買った
ローンだと めちゃ高いのは わかってたけど
手持ちの現金 なかったから しょうがなかったな
はじめは メンズファッション
モノクロページから やらしてもらった
モデルはプロ 撮影は外ロケ 光を考えて 切り取るだけだ
編集も スタイリストも 慣れた人たちだったから
ただ シャッターを切れば それなりのページができた
広角 標準 中望遠 使い分けて 構図を決める
洋服の質感 モデルの表情 ポーズ 背景の状況計算
遊びながら 撮影仕事を覚える
最高だ 楽しいお仕事だ
フリーになって 15年目
スタジオのスチルライフも 撮れるようになった頃
F2を持って インドへ行った
インドは 強烈だった カオスの坩堝
生きることの 泥臭い本能のような エネルギッシュパワー
原色世界の氾濫
綺麗な写真は お仕事で 必要不可欠だけど
むくむくと 湧き上がるようなもの
そんなものも 時々 撮ってみたくなった
ゼウスの ニコンは インドを 見てきた
だから 混沌の中に蠢いていた
アレコレの拾い物を グチャにして ニコンを囲んでみた
カオスの中に 光を見る
どよんとした 何かを探る
魔物探検 その入り口
レンズ奥深く 潜むものたち
※画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示
Photo:高井哲朗
ライト:❶ broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70 ❷broncolor Pulso G Head +Conical Snoot ❸LEDミラーボール ❹GENTOS T-REX TX-850Re
カメラ:Canon EOS 5D Mark II
レンズ:EF50mm F2.5 コンパクトマクロ/1/4秒 f9 ISO100
ライティングの組み立て
ライト❶。セット手前からアッパー光でレンズに光を入れる。
スヌート❷。カメラ上部に光を入れる。
演出用ライト、被写体奥に仕込んだLEDミラーボール❸だけを点灯させた状態。。セットに置いた小物にRGB 3色の光が反射する。下の写真がミラーボール。
ライト❶、ライト❷、ミラーボール❸のミックス。
仕上げとして、ハンディライト❹でカメラ後ろにブルーのカラー光を入れて完成。
高井哲朗 たかい・てつろう
1978年 フリーとして活動開始。1986年高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
※この記事はコマーシャル・フォト2023年6月号から転載しています。
- クリスタル香水ボトルの基本カットとイメージカット
- 白ホリスタジオで自転車撮影
- ニコンの古いカメラを撮る
- ボンベイ・サファイアのブルーのボトルを撮る
- 春宵のイメージで着物を撮る
- ジュエリーのイメージカット撮影
- 女体蝋燭、ひと思いに燃やすか ゆっくりと灯すか
- リアルなディテール表現と多重露光のリアリティー表現
- 『ゼウスのスチルライフマジック』MOOK発売
- グラスと水とライトだけで「酔える」オリジナルカクテル
- 「ミスト vs 波紋...オーデトワレの香りを表現する水の演出」
- 「ゆめちゃんのおばあちゃんの大切なウクレレ」
- 「龍之介くんが二十歳の記念に買った革ジャンが本日のお題」
- 「まりちゃん 今日は靴を撮るって言ってたよね」
- 「BOTCHANという名前の化粧水 桜子さんなら、どう撮る?」