2023年05月26日
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界
日芸写真学科2年赤司大知くんとゼウス高井が撮るのは、ボンベイ・サファイア。その美しいブルーのボトルは多くのフォトグラファーが撮ってきた。赤司くんは、18世紀英国にルーツを持つジンのボトルに、産業革命時代のロンドンのイメージを重ね、スチーム演出。自作ボックスライトを使って撮影。創造の神ゼウスもアイデア工作ならば負けられない。
産業革命のスピリッツ
赤司くんは
Shu Akashiというフォトグラファー 知っている?
赤司周一さん
フィルムが デジタルに移行する頃
彼の BOMBAY SAPPHIREの広告写真 見たんだ
すごく綺麗で 今まで見てきた広告写真と違って
シャープで 新鮮な描写だった
被写体の持つ 本質と魅力 独特の 感性と表現力
見てみなよ
なんてこと 話してたら
BOMBAY SAPPHIRE 貢いでくれた人がいたんだよ
これはもう 撮影しろってことだよね
“はい がんばります”って ボンヤリ 言ってたけど
よく研究したね
蒸留酒から ヒント もらい エントツ スチーム
加湿器の湯気 使ったりとか
さらに 自作のボックスライトまで 作ってくるなんて
素晴らしい こだわり
メインライトに そのボックスライトを使い
スチーム描写には 小さなLEDライトも使うのか
綺麗なラベルにも うまくライトコントロール
仕上がりが 楽しみだね
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Photo:赤司大知
ライト:❶❷Godox MS300+AD-R6 Standard Reflector+Honnycomb Gird ❸Godox MS300+自作ボックス
カメラ:Sony α7 IV レンズ:SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN
1/60秒 f22 ISO100
ライティングの組み立て
撮影台下からライト❶でボトル内に光を入れる。
ディフューザー越しのライト❷でボトル右側にシャープなハイライトを入れる。
自作のボックスライト❸を左斜め上からあてて、ボトル前面のラベルの色を出す。ライトの角度、距離でラベルの明るさや質感を調整。最適なバランスを探っていく。
左側のボックスがメインライト。高井写真研究所にあるブロンカラーのPicoBoxを参考に、赤司くんが自分で制作したもの。
自作ボックスライトを後ろから見たところ。筐体はアルミ製、前面は乳白アクリル、ボーエンズマウントでGodoxのストロボに装着。
ボトルの背後にペーパーレフを立ててメインライトの光をボトル内部に返す。明るくなりすぎないようにグレーペーパーを使用。
ディフューザー越しのサイドライト。ボトルの右側にハイライトラインを入れる。
下からの透過光はやや斜めに傾けて、ボトル背面から前に光がぬけるようにセット。
スチームの演出
小型ミストスチーマーを手持ちでボトルに近づけ、スチームを入れる。
スチーム用のライトは小さなパネルタイプのLEDを使用。ボトルのライティングに影響しないように、ライトの横に黒ペーパーを立てている。
LEDの色を変えると、スチームの色をつけることができる。
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スチームに色をつけたバリエーション作例。黒バックにグリーンのスチームを入れて、英国車のようなブリティッシュグリーンに仕上げた。
it’s a bit too early for a gimlet
BOMBAY SAPPHIRE 美しいデザイン
イギリスのエレガント インドのラグジュアリー
サファイアは インドを代表する宝石
お酒のボトルなんだけど 格式高い 様式美
ボンベイ 懐かしい響き
それは 昔 写真展を開いた インドの 華やかな都市
もう 刺激的 興奮 雑踏 爆音 密集 カオスの塊だったね
飛行機到着は 真夜中 ガラス越しに ギラギラ光る目
まるで アラビアンナイト
想像を越えた 到着口の闇
あれは まるで 映画の1シーンだった
人間という エネルギー ケダモノの匂いすら 感じた
空港から ホテルまで ずいぶんかかったような
夢の中で 泳いでいるような 不思議な 浮遊感だった
ホテルは タージマハールホテル
ヴィクトリア女王のイギリス インド統治時代のものだ
宮殿のようなホテル 中庭にはプールがあって
サファイアのような 綺麗な色 雑踏が消えた 静かな時間
ボンベイの宝石 美しい名前のボトル
蘇ってくる興奮の時 そして 静寂
写真は記録だけど 記憶だ 頭の中の景色だ
カオスの中の 清涼感 そんなのを 撮ってみた
冷やしたグラスに 氷を入れ サファイアを入れ
ライムの一切れ トニックウォーター
ボタニカルな 香りが漂う
目を閉じれば あの喧騒が 興奮が
キリッとしたスピリッツ 弾けながら 飛び込んでくる
クール インフュージョン
“ほんとのギムレットは ジンと
ローズ社のライム・ジュースを半分ずつ
ほかには 何も入れないんだ”
「THE LONG GOODBYE」で
チャンドラー そんなこと 書いてたな
懐かしい想い出には 甘みを 加えたいものだ
次の1杯は ギムレットか 早いけどな
ミッドナイト 苦みと甘み 優しい唇
SAPPHIREの夜に 乾杯
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Photo:高井哲朗
ライト:❶ ❷broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70+自作スヌート ❸broncolor Picolite+Picobox ❹GENTOS T-REX TX-850Re
カメラ:Canon EOS 5D Mark II レンズ:EF50mm F2.5 コンパクトマクロ/1/100秒 f8 ISO100
ライティングの組み立て
自作スヌート❶。グラス横から中の液体と氷(アクリル製模造アイス)を透過して、透明感を出す。
自作スヌート❷。ラベルのロゴと紋章部分を中心に光を入れる。
奥(画面上)からブルーのフィルターをかけたボックスライト❸。下に敷いた乳白アクリルボードとボトルに青みを入れる。
手持ちのLED懐中電灯でラベルのロゴ、紋章部分にスポットを入れる。
撮影台(サイコロ)にアクリルボードを置いたセット。左右の筒が自作スヌート。標準リフレクターにつけている。
スヌート左は内面黒、右は内面白のボール紙を使っている。
自作スヌートは内面の色で照射される光の広がり方が異なる。写真はそれぞれのスヌートの光を床に照射したところ。
奥のボックスライトはブルーのカラーフィルターを貼り、画面全体に色をのせている。
自作スヌートだけではラベルの明るさが足りないので、LEDの懐中電灯でスポットを入れた。箔押し加工されたロゴ、紋章の金のラインが浮き出る位置を探りながら、シャッターを切る。
自作スヌートとゼウス高井。
高井哲朗 たかい・てつろう
1978年 フリーとして活動開始。1986年高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
※この記事はコマーシャル・フォト2023年5月号から転載しています。
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