2013年08月09日
シャープネス関連機能が大幅に強化されたPhotoshop CC。それら機能は果たして現場で「使える」機能なのだろうか。今回から3回に分けて、シャープネス関連機能の主要なポイントをチェックしていく。
Photoshop CCのキャッチフレーズは「シャープな進化」
Photoshop CCは、キャッチフレーズとして「シャープな進化」を謳っているだけあって、シャープネス周りの改善がいろいろと図られている。具体的には、「スマートシャープ」、「ぶれの軽減」、「画像解像度の拡大アルゴリズムの強化」の3点だ。
「スマートシャープ」と「画像解像度の拡大アルゴリズムの強化」は、いずれも旧アルゴリズムを使用する場合と比べ、手堅く解像感がアップする。Photoshop CCを導入した際にはぜひ使いこなしたい機能だ。
シャープネス関連の機能のうち、「スマートシャープ」が改善され、「ぶれの軽減」が追加された。この他にも画像拡大時のアルゴリズムが変更され、解像感が増した。
「ぶれの軽減」は、今後のPhotoshopの、新たな可能性を感じさせてくれる新機能だ。少々荒削りな部分もあるものの、今までとは違った新しい驚きを与えてくれるはずだ。毎回こういったPhotoshopの革新的な機能には楽しませてもらっている。
これらシャープネス系機能の改善により、光の少ない場所などの厳しい条件で撮影された写真を使える余地が広がった。言い換えると、フォトグラファーの活動領域が広がったと言えるわけで、重要な機能改善だ。
「ぶれの軽減」の画面。手ぶれした画像の解像感を高め、手ぶれを目立たなくしてくれる。
精度が高まった「スマートシャープ」
Photoshop CS2で搭載され、いまやおなじみとなった「スマートシャープ」に、大幅な機能改善が行なわれた。より使い勝手の良いツールに進化したと言えるだろう。
スマートシャープの変更部分
「スマートシャープ」に関しては、大きく3点の改善が図られている。1つ目はインターフェイスが変わったこと。CS6ではタブの奥に隠れていた「シャドウ」「ハイライト」が表に出てきた。2つ目はウインドウの右下角をドラッグすることで、画像表示窓の部分の大きさを変えられるようになったこと。操作性のアップに寄与する部分だと思う。そして3つ目が「ノイズを軽減」というスライダーが追加されたことだ。
このスライダーの追加は、一見地味ながら、今回のスマートシャープの改善の中で最も大きな威力を発揮する部分だと筆者は考えている。例えば室内の写真や、感度を上げて撮影した写真にシャープネスをかけようとすると、ノイズ部分も強調されてしまうという経験は、誰しもあるだろう。従来、感度を上げた撮影では、多少解像感に甘さの残る仕上がりでもやむなしとしてきた場面もあったと思う。
しかし、今回追加された「ノイズを軽減」スライダーは想像以上に優秀だ。例えば、過去にCS6でギリギリまで追い込んだ画像でも、もう一歩、二歩とシャープネスをかけて追い込むことができるので、自然な仕上がりを保ったまま解像感をアップすることができる。暗所での厳しい条件での撮影データをブラッシュアップする際に幅広く活用できるだろう。
新スマートシャープ「ノイズを軽減」の効果
■新しいスマートシャープ
■従来方式のスマートシャープ 写真上はスマートシャープの「量」を「350%」という、従来の常識ではかけ過ぎとも思えるほどの値に設定した上で「ノイズを軽減」を「100%」適用した。写真下は、「スマートシャープ」ウインドウの右上にあるオプションメニューから、「従来方式を使用」をオンにしてその効果を見比べたもの。従来方式ではノイズが強調されて、とてもかけることができなかった「350%」のシャープネスでも、新方式では自然な感じに見えている。そしてその結果はそのまま解像感に直結する。
なお、この新しいスマートシャープと、従来のスマートシャープ、さらには伝統の「アンシャープマスク」の3つを比較してみると、その結果は、「新スマートシャープ>>>従来型スマートシャープ>アンシャープマスク」という印象だ。特に、光沢感のある被写体の場合、従来のシャープネスでは、かければかけるほど質感が失われていくが、新スマートシャープでは質感が損なわれにくい。今回の「ノイズを軽減」スライダーの搭載で、「スマートシャープ」の実力は「アンシャープマスク」を完全に突き放した印象だ。
POINT
「ノイズを軽減」はシャープネスを強くかけて解像感を高めたい場合に特に有効。今回の進化でスマートシャープはさらに実戦向けになった。
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御園生大地 Taichi Misonoo
フォトグラファー、レタッチャー、ビデオグラファー。東京生まれ。東京ビジュアルアーツ卒業後、撮影会社に12年勤務。2013年よりフリーランス。建築竣工写真撮影、大手家電メーカーの製品写真レタッチをベースに幅広く撮影・レタッチ業務をこなす一方、近年は動画撮影業務へ進出。Photoshopやレタッチのセミナー登壇、執筆実績多数。
TAICHI MISONOO website
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