2013年08月15日
画像を拡大すると言うと、解像感の喪失を免れることができないものだが、今回のバージョンでは確実な進化が見られた。
解像感に大幅な改善
デジタル処理で画像の拡大を行なう際に、ディテールが失われ、画像の解像感が落ちるのは、原理的に仕方のないことである。デジタル画像はドットの集合から成り立っているが、それを引き伸ばした際に足りなくなったピクセルは、コンピュータが予測して埋めていくことになる。従って、デジタル拡大した際に結果が曖昧な描写になるのは避けられないのだが、その点について、Photoshop CCでは画像拡大の計算アルゴリズムに改善が施され、解像感に確実な改善が見られた。
画像解像度ウインドウでの拡大時に設定
この機能を利用できるのは、画像解像度の変更ウインドウだ。メニューバーから「イメージ」→「画像解像度」とたどっていこう。おなじみの「再サンプル」のプルダウンメニューの中に「ディテールを保持(拡大)」が加わった。従来方式との比較テストをしてみると、一辺2倍以上の拡大を行なったあたりから目に見える効果が現れ始め、拡大率を上げれば上げるほど結果が良くなる印象だ。なお、「ディテールを保持(拡大)」を選択した場合、「ノイズを軽減」のパラメータが現れる。これは拡大の際に生じるノイズを抑えるためのものだ。
画像解像度のウインドウも、ウインドウ自体を拡大することができるようになった。効果の適用具合をしっかりと確認できる。
実際に試す際には、「OK」ボタンを押す前に「再サンプル」のプルダウンを「ディテールを保持(拡大)」にしたり、「バイキュービック法(滑らかなグラデーション)」にしたりと切り替えながら、プレビュー画像を見比べてみると、このコマンドの有用性が伝わることと思う。実際にPhotoshop CCを操作し、是非とも試していただきたい。
なお、今回のバージョンから、画像解像度のウインドウにプレビューの窓が追加され、「再サンプル」メニューで選択した拡大/縮小の効果を容易に確認できるようになった点にも触れておきたい。この窓の内部は、拡大率を変更したり、ウインドウ自体を拡大することで、大きく広げることができるようになった。使い勝手がとてもよくなったと言えよう。
「ディテールを保持」の効果は?
■「バイキュービック法(滑らかなグラデーション)」(従来方式)
■ 「ディテールを保持(拡大)」
800%に拡大したところ。従来方式(バイキュービック)と、新機能の「ディテールを保持(拡大)」を比較してみると、解像感に確実な違いが現れている。
「合わせるサイズ」とは?
「合わせるサイズ」は、画像を拡大・縮小する際のターゲットサイズを選択する機能だ。あらかじめ保存されたプリセットからだけではなく、よく使うサイズを保存しておくこともできる。クライアントや案件ごとに納品サイズを決めている場合や、メール送信用、iPadに入れる場合などの数値を決めている場合、保存しておくと作業効率のアップにつながるだろう。
実際に使えるのは?
ただ、演算方法が改善されても、画像の拡大で足りなくなったピクセルを、コンピュータが予想して埋めるという前提がある以上、元画像の解像感を完璧にキープして拡大できるということはありえない。しかしながら、使用用途によって、やむを得ず元画像を拡大しなくてはならない場面は仕事上どうしても発生する。
例えば、撮影後の用途の変更で、ポスターや大型コルトンなどへの採用が決まり、35mm判デジタルカメラで撮影した写真を急遽使用せざるをえない、といった経験を持つ人もいるだろう。
最近の35mm判デジタルカメラと、従来のPhotoshopの拡大機能の組み合わせでも、そういった要望に応えることはできた。しかし、少しでも解像感を保ったまま拡大を行なえるのであれば、その選択肢は持っておきたい。プロフォトグラファーであれば当然そう思うに違いない。
Photoshop CCの拡大機能の進化は、そういった要望に応えてくれるものだと言えるだろう。
よって、筆者としてはPhotoshop CCで拡大を行なう際には、必ず「ディテールを保持(拡大)」を選択することを推奨したい。
どうやら、「自動」のままで拡大を行なった際にも、内部的に「ディテールを保持(拡大)」が採用されているようだが、その場合、前述の「ノイズを軽減」のスライダーが表示されないため「ディテールを保持(拡大)」を選択するのが望ましいだろう。
それにしても、新バージョンが登場するたびに提供される新機能には驚かされるが、特にこのアップサンプリングのような、ベース部分の機能がいまだに進化を続けている点は素晴らしいことだと思う。今後の進化も非常に楽しみだ。
POINT
画像拡大アルゴリズムの進化は、撮影後の写真が想定以上にに大きく使用される際にも力強くフォトグラファーをサポートしてくれるだろう。
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御園生大地 Taichi Misonoo
フォトグラファー、レタッチャー、ビデオグラファー。東京生まれ。東京ビジュアルアーツ卒業後、撮影会社に12年勤務。2013年よりフリーランス。建築竣工写真撮影、大手家電メーカーの製品写真レタッチをベースに幅広く撮影・レタッチ業務をこなす一方、近年は動画撮影業務へ進出。Photoshopやレタッチのセミナー登壇、執筆実績多数。
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