Photoshop 中上級テクニック

ノイズのある写真からノイズを軽減する

解説:スコット・ケルビー 日本語版監修:早川廣行

写真:Photoshop CS6 Book
全米ベストセラー・シリーズの最新刊「Photoshop CS6 Book」が日本語版となって発売された(発行:ピアソン桐原)。著者は全米Photoshopプロフェッショナル協会(NAPP)会長のスコット・ケルビー氏。Shuffle読者のために、第2章「Camera Rawの基本」と第3章「Camera Rawの応用--基本の先へ」を特別公開する。

これは間違いなくフォトグラファーからの要望が最も多い機能の1つであり、また、CS5でアップグレードされて以来のベストな機能の1つでもあります。「でも、CS5以前のPhotoshopとCamera Rawにもノイズ軽減機能があったんじゃないの?」 そのとおり。確かに以前からありました。「じゃあ、役に立たなかったの?」 ええ、そうでした。「それで、今のノイズ軽減機能はどうなの?」 前のものとは大違いです! 何がそんなにすばらしいかというと、シャープさやディテール、カラーの彩度を大きく損なわずにノイズを軽減することができるのです。それに加え、(たいていのノイズプラグインとは異なり)RAW画像そのものにもノイズ軽減が適用されます。

ステップ1

ノイズのある画像をCamera Rawで開きます(ノイズ軽減機能はRAW画像で最も効果を発揮しますが、JPEGやTIFF画像にも使用することができます)。下図の写真はNikon D3Sを使用して高ISOで撮影したものですが、光量の少ない状況にカメラが対応しきれず、カラーノイズ(赤色、緑色、青色の斑点)や輝度ノイズ(粒子の粗いグレーの斑点)がたくさん出てしまいました。

img_soft_kelby15_01.jpg SCOTT KELBY

ステップ2

本当にしっかりと拡大しないとノイズがなかなか見えないこともあるので、最低でも100%以上にズームインしてください(ここでは100%まで拡大しました)。するとほら、シャドウの中にノイズが潜んでいます(ここは最もノイズが現れるところです)。パネルエリア上部にある[ディテール]アイコン(左から3つ目のアイコン)をクリックすると、ノイズ軽減に関するコントロールが表示されます。私は通常、カラーノイズを最初に取り除きます。そうすると、次にとりかかる輝度ノイズが見やすくなるからです。ここでカラーノイズを取り除くときのとっておきの経験則を紹介します。まず、[カラー]スライダーが0の状態から作業を始め(下図を参照)、カラーノイズがなくなるまで右へゆっくりとドラッグします。

注:RAW画像の場合、初期設定で[カラー]スライダーが25に設定されているため、多少のカラーノイズ軽減が自動的に適用されます。JPEGまたはTIFFの場合は、[カラー]スライダーは0に設定されています。

img_soft_kelby15_02.jpg

ステップ3

実は、[カラー]スライダーを右端までクリック&ドラッグしても、ノイズが少し残ってしまいます。これは輝度ノイズであり、次のステップで対処します。ここでは、赤色、緑色、青色のノイズを消すことだけに注目します。そのためには、スライダーを大きくドラッグする必要はまったくないでしょう。カラーノイズがすべてグレーに変わるところまでドラッグすれば十分です。[カラー]スライダーを大きく右にドラッグすると、ディテールがいくらか失われる可能性があります。今回の場合、[カラーのディテール]スライダーを右へ少しドラッグすることもできますが、実際のところ、私はカラーノイズの問題に対してこのスライダーを使うことはほとんどありません。

img_soft_kelby15_03.jpg

ステップ4

カラーノイズはもう消えたので、残るは輝度ノイズだけです。これも同じようなプロセスで取り除くのがよいと思います。[輝度]スライダーを、目に見えるノイズが消えるまで右にドラッグします(下図を参照)。このスライダーは概して[カラー]スライダーよりも大きく右へドラッグすることになります。なお、このスライダーを大きく右に動かすと、シャープさ(ディテール)とコントラストが失われる傾向にあります。対象物がソフトになりすぎたと感じる場合には、[輝度のディテール]スライダーを引き上げます(ただし、私はこのスライダーをあまり大きく動かしません)。フラットになりすぎたと感じる場合は、[輝度のコントラスト]スライダーを使用して、失われたコントラストを取り戻します(私はたいていこのスライダーをある程度まで引き上げますが、ポートレートのときは肌のトーンがおかしくなるのでこのスライダーを使いません)。おそらくどのスライダーもそんなに頻繁に触れる必要はないでしょうが、必要になったときのために、働きを知っておくとよいでしょう。

img_soft_kelby15_04.jpg

ステップ5

私は通常、[輝度のディテール]スライダーを一気に上げるのではなく、[ディテール]パネルの上部にある[シャープ]の[適用量]を上げます(下図を参照)。これは元の画像のシャープさとディテールを取り戻すのにとても役立ちます。これが完成画像です。ズームアウトすると、ノイズがかなり除去されたことがわかります。しかし、たとえ初期設定でも(RAW画像を修整している場合でも)、たいていは元の画像のシャープさとディテールをかなりの程度まで保つことができます。

img_soft_kelby15_05.jpg

以下に、修整前/修整後の写真を示します。拡大図を見ると、ここで適用したノイズ軽減の結果がよくわかります。

img_soft_kelby15_06.jpg
修整前
img_soft_kelby15_07.jpg
修整後

※この記事は「Photoshop CS6 Book」から抜粋しています。

スコット・ケルビー Scott Kelby

『Photoshop User』誌の編集者兼発行人。『Layers』誌(Adobe社製品に関するハウツー雑誌)の編集者兼発行人。人気ウィークリービデオショー『Photoshop® User TV』の共同司会者。全米フォトショップ・プロフェッショナル協会(NAPP)の共同創設者兼会長で、ソフトウェアのトレーニング・教育・出版会社ケルビー・メディア・グループの会長。写真家、デザイナーで、著書は50冊を超える。
・ブログ(英語) Scott Kelby's Photoshop Insider
・トレーニングビデオ(英語) Photo Recipes Live by Scott Kelby


早川廣行 Hayakawa Hiroyuki

電塾塾長/株式会社電画代表/東京藝術大学大学院非常勤講師/日本写真学会会員/日本写真芸術学会会員。デジタルフォトの黎明期から画像処理に取り組み、デジタルフォトの普及啓蒙・教育活動に努める。デジタルフォト関連の雑誌への寄稿、講演活動、書籍執筆(Photoshopプロフェッショナル講座シリーズ他多数)など幅広く活動している写真家・フォトディレクター。

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