IDEA of Photography 撮影アイデアの極意

Vol.4 プロも無視できないiPhone撮影の実力

撮影・解説:南雲暁彦(凸版印刷 ビジュアルクリエイティブ部)

nagumo_pr.jpg
機材や被写体、テクニックやコンセプトなど、様々なエレメントから“写真のイデア”を展開していくこの連載。連載4回目となる今回はスマートフォンの登場である。もはや写真や動画を撮る、という行為の中でプロフェッショナルも無視できない領域に入ってきているのはご承知の通り、本家「写真機」とは一味違う進化のベクトルを持ったスマホの今を見てみよう。

南雲暁彦
凸版印刷 ビジュアルクリエイティブ部
チーフフォトグラファー
1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。世界約300都市以上での撮影実績を持つ。日本広告写真家協会(APA)会員。多摩美術大学、長岡造形大学非常勤講師。

ideaofphotography_vol4_1.jpg1/120s f1.5 ISO32
撮影協力:深堀雄介 アクセサリー協力:Studio Piano Piano
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iPhoneの最上位機種には今や当たり前のようにレンズが3つも付いていて、最新のiPhone 13 Pro Maxのトップページなどは「すべてがプロ」と掲げられている時代である。プロ用なのか、プロみたいに撮れるのかはさておき、プロがプロ然として使ってみるのだ。

静止画のトピックスとしてはマクロ撮影を手に入れ、「写真機」では特殊撮影の分野だったスーパーワイドマクロのビジュアルを誰でも撮影可能なものにしてしまったということだ。今回はこのマクロ撮影に注目して魅力的なハンドメイドアクセサリーを撮影した。

もうここで印刷にして見せる意味がどのくらいあるのかだんだん微妙になってきたが、逆に言うとメイン媒体たるRetinaディスプレイでの再現は完璧だ。ハイライトからのグラデーション、色再現、ディテール、この小さな球体の透過物をここまで表現できたのは素晴らしい。

ライティング図

ideaofphotography_vol4_2.jpg

【使用機材】
カメラ&レンズ
 Apple iPhone 13 Pro Max…[1]

ライト
 Dedolight DLH4…[2]

その他機材
 RAM MOUNTS X-GRIP…[3]
 Leofoto G4 + NP60 ギア雲台…[3]


撮影の流れ

今回のビジュアルをどのように撮影したのか順を追って説明していく。
前述のライティング図と合わせて見ていこう。

1. 使用した機材

ideaofphotography_vol4_3.jpgApple iPhone 13 Pro Max+RAM MOUNTS X-GRIP +Leofoto G4+NP60 ギア雲台

ideaofphotography_vol4_4.jpgDedolight DLH4

被写体のアクセサリーは直径12mm程の透明なレジンの球体の中に紫陽花のプリザーブドフラワーを収めたピアス。色彩もディテールも繊細なつくりである。

しっかりとアングルを固定するためにギア雲台にRAM MOUNTSのX-GRIPを連結。そこにiPhone 13Pro Maxを載せて微調整が可能な状態にした。Rawで感度を下げて撮影するために光量が必要なのでDedolightを3灯用意。iPhoneのカメラは絞りがなく、露出はシャッタースピードと感度で調整するため、高画質を得るにはたっぷりと光量を確保してやることが必要。ワイドマクロでそのまま撮影すると球体が歪んでしまうので、望遠レンズを選択する。


2. ライティングとセットの構築

ideaofphotography_vol4_5.jpgセット全体の様子

ideaofphotography_vol4_6.jpg純正カメラアプリの操作画面

望遠レンズを選択しているが、寄っていくと自動的にワイドレンズに切り替わり、その状態でマクロ撮影が行なわれているようだ。その過程でデータ補完が行なわれているはずなので、解像度は若干犠牲になるが、物の形を正確に撮影するという目的でこのやり方を選択した。補完技術がどの程度なのかもチェックすることができる。

被写体が透過物体なのと、ワーキングディスタンスがかなり短くなるため、ライティングはディフューザーを上部に覆って逆光気味にスポットライトを入れてトーンを作った。このワーキングディスタンスだと、普通に撮影するとほとんどの場合、iPhoneの影が映ってしまうだろう。


バリエーション

セットやライティングを活かして別パターンの撮影。
アレンジアイデアのひとつとしてチェックしておこう。

ideaofphotography_vol4_7.jpgideaofphotography_vol4_8.jpg上:1/100s f1.8 ISO200/下:1/100s f1.8 ISO100
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このバリエーションではもっと簡単に手持ちでスーパーワイドマクロならではの強烈にパースの効いた撮り方をした。こちらは解像度に補完が入らないので画質はクリア。

寄るだけ寄って撮っているのでライティングは変わらず逆光での撮影が必要である。これは結構強烈で、普通のマクロレンズとは全く違う世界観の写真を撮ることができる。どこかで見たような、と思ったらCanonのRF24-105mm F4-7.1 IS STMに搭載されているCenter Focus Macroがこれに近い絵作りだったのを思い出した。センター近辺はしっかりと結像するが周辺にいくに従って放射状に強く像が流れて独特な雰囲気を出す。

被写体は既製品のピアスと機械式の腕時計のムーブメントだ。ここまで寄れると肉眼では見えづらいディテールも見えてくるし、ものすごく大きなものに見えるパースのつき方は面白い。


現行の高性能カメラ搭載スマートフォン

現行の高性能カメラ搭載スマートフォンの中からこれぞというものを4つ紹介する。
特筆すべき魅力をスペックと合わせてまとめてみた。

Apple iPhone 13 Pro Max

ideaofphotography_vol4_9.jpg主なスペック
有効画素数:1,200万画素(広角、超広角、望遠)/焦点距離:26mm(広角)、13mm(超広角)、77mm(望遠)/明るさ:F1.5(広角)、F1.8(超広角)、F2.8(望遠)/外寸:78.1×160.8×7.65mm/質量:238g
詳細スペック:apple.com/jp/iphone-13-pro

3台のカメラと6.7インチのOLEDディスプレイを搭載したiPhoneシリーズのフラッグシップ。マクロ撮影、ナイトモード、ポートレート、シネマティックモードetc.。もはやクリエイティブの現場にもAIは入り込んでいて、通常の道具ではできないことが多くできるようになっている。仕事を奪われるか、使いこなすか、クリエイターは真剣に考えた方がいい。

Leica LEITZ PHONE 1

ideaofphotography_vol4_10.jpg主なスペック
有効画素数:約2,020万画素/明るさ:F1.9/焦点距離:19mm/外寸:約74×162×9.5mm/質量:約212g
詳細スペック:store.leica-camera.jp/special/leitzphone1

大型1インチ2,020万画素センサーを搭載したLeicaのスマートフォン。スペックもさることながら見た目もインターフェースもしっかりLeicaになっている。LEITZ PHONEのカメラはこれひとつ。高画素センサーを搭載して他の焦点距離はデジタルズームで対応する方式をとっている。ステータスでも他のスマートフォンから頭ひとつ抜けた存在。

SONY Xperia PRO-I

ideaofphotography_vol4_11.jpg主なスペック
有効画素数:約1,220万画素(広角、超広角、標準)/焦点距離:24mm(広角)、16mm(超広角)、50mm(標準)/明るさ:F2(広角)、F2.2(超広角)、F2.4(標準)/外寸:約72×166×8.9mm/質量:約211g
詳細スペック:xperia.sony.jp/xperia/xperiapro-i

同社一眼カメラαから継承されたUIと1インチセンサーを搭載した、本気度が半端ないスマートフォン。広角24mmに設定された1インチセンサー以外にも16mmと50mmのカメラを搭載。メインカメラが24mm1インチ1,220万画素というのが素晴らしい。わかっている人が本気になって作ってしまったようだ。レンズはZEISSのTessar T*。

Google Pixel 6 Pro

ideaofphotography_vol4_12.jpg主なスペック
有効画素数:5,000万画素(広角)、1,200万画素(超広角)、4,800万画素(望遠)/焦点距離:24mm(広角)、16mm(超広角)、104mm(望遠)/明るさ:F1.9(広角)、F2.2(超広角)、F3.5(望遠)/外寸:75.9×163.9×8.9mm/質量:210g
詳細スペック:store.google.com/jp/product/pixel_6_pro

なんと広角カメラに5,000万画素1/1.31のセンサーを積んでいる画素数ではぶっちぎりのスマートフォン。普段はQuad Bayer Coding(4画素で1ピクセルを作る技術)で高画質に1,200万画素の写真を作り出し、光量が多い場所では5,000万画素で使える。さらに望遠カメラもペリスコープ望遠の4,800万画素を搭載。


スマートデバイスが変えていく撮影文化

300もの道具を飲み込み、その道具達の存在意義を危うくしていると言われているスマートフォン。ミュージックプレイヤー、電卓、カレンダー、地図、ライト、ゲーム、ラジオ、ナビゲーション、手帳、そうそう電話もそうだ(笑)。

パッと思いつくだけでいくつも出てくるが、「カメラ」はその最右翼かもしれない。コンパクトデジタルカメラはすでに飲み込まれてしまったと言ってもいいだろう。

写真が画像の複製を可能にし、印刷がそれを大量生産して情報や文化を流通させてきたが、インターネットという最強のプラットフォームに乗っかったスマートフォンのカメラ機能は写真の生産量、流通量を爆発的に増加させ、その在り方にも新たな価値観を生み続けている。画質の向上もさることながら、「写真機」とは違う独自の進化も留まることはない。

ここ数年、元祖カメラに性能が追いついた、という感覚よりも、別の方向で追いつけない領域を広げていったという認識の方が強い。iPhone 13 Pro maxに搭載されている3本のレンズは望遠77mm F2.8、広角26mm F1.5、超広角13mm F1.8なのだが、今回のメインカットの撮影では、どうやらこれら3本のレンズを駆使して内部ですごいことが起こっているようなのだ。

今回3本あるレンズのうち実際にマクロ領域で撮影を担当するのは超広角13mmで、これが2cmまでの超至近距離撮影を可能にしている。でも僕が撮影に選んだレンズは望遠77mm、スーパーワイドを使うと球体が歪んでその物のフォルムが崩れてしまうからだ。

さて、実際にどうなるかと言うと、被写体に寄っていくと77mmの画角のまま撮影レンズは超広角に切り替わり(その瞬間画質が微妙に切り替わるのがわかる)、そのまま撮影できてしまうのだ。77mmと13mmにはその画角にとんでもない差があり、これがどうやってこうなるのか、強烈なパースの13mmで撮影した画像を77mmで撮ったように、いやリアルタイムでその画面で撮影ができてしまう。

クオリティは見ての通り、これは単純にデジタルズームをやっているだけではない。歪みやパース、ボケのコントロールなど、相当高いレベルでデータ処理がされている。確かに画像は荒くなるが、それにしてもとんでもなく違う画角からデータ補完をしつつこのクオリティまで持ってくるのは凄い。現時点でもこれなのだから、この技術はまだまだ進化していくだろう。これは今の「写真機」には不可能なことだ。

iPhoneにレンズが3本付いていることと交換レンズを3本持っていることは、できることにもはや違った意味を持ち始めているだろう。そう、iPhoneには3本のレンズではなく、3台のカメラが搭載されているのだ。

冒頭にも述べたがこの超補完データ、iPhoneのディスプレイで見ていて解像度の荒さなど微塵も感じない綺麗な写真になっている。もっとも流通するメディアに最適化されているわけだから、解像度の割に無駄にデータ量を必要とする印刷でちょっと荒いね、というのはナンセンスな時代なのだろう。

※この記事はコマーシャル・フォト2021年1月号から転載しています。

関連情報

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Still Life Imaging スタジオ撮影の極意

当連載の筆者・南雲暁彦氏の著作「Still Life Imaging スタジオ撮影の極意」。格好良い、美しい、面白いブツ撮影の世界をコンセプトに、広告撮影のプロによる、被写体の魅力を引き出すライティングテクニックや、画作りのアイデアが盛りだくさんの内容となっている。

価格は2,300円+税。

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