キヤノンEOS Rシステムの世界

中村雅也|キヤノン EOS R6 Mark II の進化

撮影・解説:中村雅也/撮影協力:一山菜菜海(THS)

2020年に発売された「EOS R6」の後継機、「EOS R6 Mark II」が遂に発表となった。大幅な進化を遂げた本機の実力を探るべく、今回はスチル撮影における性能に焦点を絞り、実写テストを行なった。実際の広告撮影を想定し、スポーツ、ブツ、ポートレイトといったジャンルで検証。また、同時に発表された大口径単焦点レンズ「RF135mm F1.8 L IS USM」も使用し、その魅力についても触れていく。

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※画像クリックで拡大表示
使用レンズ:RF135mm F1.8 L IS USM
1/500s f1.8 ISO400
プロBMXライダー:大和晴彦
Cas:スポーツマジック


まずは、BMXのトリックシーンを室内練習場で検証した。「EOS R6 Mark II」は、電子シャッター時、1秒間に最大でおよそ40コマの連写が可能なので、それを活かした撮影だ。結果、肉眼では捉えることが難しい、トリック中のライダーの表情や、ハンドルを握り変えるといった一瞬の動作などを、細かく写し撮ることができた。

この高速ドライブ性能を最大限に引き出してくれるのが、進化を続けるAF性能だ。「EOS R6 Mark II」は、ディープラーニング技術の適用範囲の拡大により、被写体検出、追尾性能も大きく向上し、ライダーが空中で激しく一回転する間も、顔、胴体をトラッキングし続けてくれた。

今回の撮影では、ライダーの動きが予測できず、カメラで動きを追いかけることしかできず、高いドライブ性能、AF性能に助けられることも多々あった。

照明を全てカットし、LEDのみの少ない環境光の中でも撮影。高速シャッターで動きを止めるため、ISO6400で撮影を実施したところ、ノイズも少なく、ライダーの力強い表情や、たくましい腕の筋肉、BMXのフレームの質感まで、とてもシャープに描写してくれた。高い高感度性能も保持していることも確認できた。


瞬間を切り取る「高速ドライブ性能」

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上画像は、BMXが勢いよくジャンプするシーンを高速連写したコマ画像。電子シャッターで40コマ/秒の撮影ができるため、BMXの素早い動きも細かく記録することが可能だ。


検出・追従ともに優秀な「AF性能」

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使用レンズ:RF15-35mm F2.8 L IS USM
1/2000s f4.5 ISO6400

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AF性能の検証。下画像は撮影の様子。ジャンプ台の上でBMXの回転する瞬間を捉える。検出性能とトラッキング力のさらなる進化により、目の前で素早く回転するBMXライダーの顔もしっかりとキャッチしてくれた。ダイナミックな動きものの撮影でも、AFが信頼できるので、より撮影に集中することが可能だ。


暗所でも活躍する「高感度耐性」

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使用レンズ:RF15-35mm F2.8 L IS USM
1/1000s f2.8 ISO6400

暗がりの室内で、ダイナミックにトリックを展開するライダーの動きを1/1000秒の高速シャッターで止める。下左画像は上画像の拡大。ISO6400でもノイズが少なく、ライダーの腕の血管までもしっかりと描写してくれている。下右画像は撮影の様子。暗所でスモークを焚き、LEDでのカラーライティングを行なった。


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※画像クリックで拡大表示
使用レンズ:RF50mm F1.2 L USM
0.3s f5.6 ISO100
ST:鈴木俊哉(Book.inc)

続いては、色合い鮮やかで、細かいディテールのあるスパイスや、調理器具などの被写体を画面いっぱいに散りばめ、真俯瞰で撮影を実施。画面中心から周辺までの質感再現性能、およびビビッドな色から中間色、白までといった被写体の色再現性能の検証を試みた。

様々なディテールを持つ被写体を撮影してみたが、それぞれの質感が丁寧に再現されており、手に取るように伝わってくる印象だ。また、画面周辺も流れることなく見事な解像性能で、画面右下のテキストもシャープに写っている。質感やフォルムの再現性は非常に高い。

色調についても触れておこう。ターメリックなどのスパイスの香りや、パクチーやレモンなどの食材は、鮮度の高さが伝わってくるほど鮮やかに再現されている。磁器製のプレートや、木材のカトラリー、ナッツ類などの中間色も、色が沈むことなく淡いトーンを忠実に再現してくれており、それぞれの被写体が持ち合わせる、ぬくもりや冷たさなども感じとることができる。

質感、色調の再現性が良好であるため、一つ一つの被写体の立体感だけでなく、画面全体から醸し出される静謐な空気感までもしっかりと伝わってくる印象だ。


中心から周辺まで繊細な「ディテール描写」

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画面中心のスパイスや岩塩の粒子感や、パクチーの葉脈、水滴の粒など被写体の質感再現性は抜群。画面右下のレシピに書き込まれたテキストも視認性が高く、見事な解像性能だ。ディテールの描写力は見事である。


自然な表現で描き出す「色再現性」

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黄色や赤など、彩度の高い被写体の色合いは鮮やかに、かつ緑や茶色といった中間色はナチュラルに再現できており、色再現性能も安定感がある。


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※画像クリックで拡大表示
使用レンズ:RF135mm F1.8 L IS USM
1/160s f1.8 ISO100
HM:関 大輔(WiZ)
ST:小池あずさ(WiZ)
Model:柊 有紗(SPACE CRAFT AGENCY)

最後はモデル撮影。新たに発表された大口径単焦点レンズ「RF135mm F1.8 L IS USM 」を使用し、モデルにグッと近寄って撮影をすることで、解像性能とボケ表現、操作感の検証を実施した。

まず解像性能であるが、細かいまつ毛のライン1本1本から、その先端までくっきりと認識することができ、まるで触れることができるかのような質感再現である。アイシャドウのカラーやスキントーンの描写も素直で、「EOS R6 Mark II」とのマッチングも良好であることがわかる。

ボケ表現に関して驚いた点であるが、大口径F1.8による大きなボケはさることながら、手前ボケの花や、奥ボケとなっている顔の輪郭などに収差や色滲みが発生していないため、より美しく、より自然なボケ表現が得られている。そのせいか、ファインダーを覗きながらも、モデルの瞳に吸い込まれていくような心地よい没入感に浸ることができた。

「RF135mm F1.8 L IS USM」による光学手ブレ補正と、「EOS R6 Mark II」のカメラ内手ブレ補正の協調制御による手ブレの抑制、精度の高い瞳検出AFにより、撮影により一層集中することができるため、絵作りに没頭できる点も非常にアドバンテージが高い。

レンズファンクションボタンが2つ搭載されており、どちらかに「EOS R6 Mark II」に新しく搭載された瞳の左右優先指定を割り当てると、さらに撮影効率が向上することも見逃せない。


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まつ毛の1本1本までを緻密に描き出す高い解像性能から、とろけるように柔らかく、収差を抑えた美しいボケ表現により、撮影領域の拡大にも大きく貢献してくれそうだ。

中村雅也(なかむら・まさや)
凸版印刷情報メディア事業部 ビジュアルクリエイティブ部 1977年生まれ。2000年中央大学文学部卒業。コマーシャルフォトを中心に活動中。静止画のみならず、動画制作も手がける。日本広告写真家協会(APA)会員。長岡造形大学非常勤講師。

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EOS R6 Mark II 主なスペック
対応マウント:RFマウント
撮像素子:約36mm×24mm CMOSセンサー
有効画素数:最大約2,420万画素
感度:100〜102400(拡張:204800)
寸法:約138.4×98.4×88.4mm
質量:約670g

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RF135mm F1.8 L IS USM 主なスペック
対応マウント:RFマウント
焦点距離:135mm
明るさ:f1.8
レンズ構成:12群17枚
寸法:約Φ89.2×130.3mm
質量:約935g

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