2010年11月16日
高精度になった「HDR Pro」で表現の幅を広げる
段階露光で撮影した複数の画像を統合し、ダイナミックレンジを拡大して、人間の見た目に近い画像を生成する機能がHDR。今回、さらに操作性に改良を加えて「HDR Pro」としてリリースされた。
完成画像 完成画像。「HDR Pro」で書き出しトーンカーブで調整後、空の色のみ「色相/彩度」でマスクを使って調整した。
「HDR Pro」適用画面
ゴーストを消去
風で揺れた街路樹の周囲に出たゴーストを、「ゴーストを除去」で消す。
「HDR Pro」の特筆すべき点は、まずは「ゴーストの除去」機能が追加された点だろう。上の例は、全部で5段階の露出を変えて撮影した画像をHDRに統合し生成したものである。
オープンでの撮影ということもあり、写真の左端にある街路樹が風で若干揺らいで、街路樹の周囲にゴーストが出てしまった。今まではスタンプや修復ブラシで少しずつ消していったり、その部分のみ別の画像を配置してマスクで表示させたりと、結構面倒な手間ひまをかけて消していたのだが、これが「ゴーストを除去」にチェックを入れるだけで修整されてしまう。
また、トーンカーブや彩度などの色調補正のパラメーターを、「HDR Pro」上で調整することが可能になった。
アーティスティックなプリセットも装備されており、作品作りに一役買ってくれそうだ。一度HDRで書き出したものとノーマルなものをレイヤーで重ね、HDR側の描画モードを色々と変更してみると、また違った画作りが楽しめる。
プリセットの選択画面自分で調整してお気に入りが見つかれば、プリセットとして保存することもできる。
シュールレアリズム低コントラスト
シュールレアリズム高コントラスト
この機能をスタジオ撮影で使用するとどうなるか、と実験してみたのが下の写真である。ほぼ同じトーンで撮影した写真と見比べてみると、当然ながら黒潰れが少なく非常にレンジの広い写真が生成された。特筆すべきは圧倒的なノイズの少なさである。普段ノイズが立ちやすいブルーチャンネルを拡大してみると、一目瞭然であった。
スタジオでの静物写真に「HDR Pro」を使ってみた左が「HDR Pro」で生成された画像。上の写真はこれとほぼ同じトーンで撮影した写真データ。比べて見ると花の右シャドー部がはっきりと写っていることがわかる。このレベルまでデータがしっかり残っているので後々非常に調整しやすい。
HDR Pro画像のブルーチャンネル。ノイズが極端に少ないことがわかる。
ほぼ同じトーンで撮影した写真のブルーチャンネル。
ただし光をコントロールできるスタジオの場合、これはライティングでも撮影可能な範疇。仕事の場において、極端なダイナミックレンジ技法を使用することはあまりないだろうが、技法自体にメリットは多いので、実践の場において違和感なくHDRのトーンを組み込めないものか。スタジオでのダイナミックレンジの応用、というのはまだまだ考察の余地があるだろう。
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入江佳宏 Yoshihiro Irie
東大阪市のフォトプロダクション(株)2055勤務のレタッチャー。
1982年 兵庫県神戸市生まれ。
2005年 関西外国語大学卒業。
2008年 デザイナー、映画制作を経て2055入社。
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