Photoshop CS5 の新機能

レタッチの作業効率アップ! ⑤レンズ補正フィルター

解説:入江佳宏

「レンズ補正フィルター」がレンズプロファイルに対応

CS5のレンズ補正機能に、カメラとレンズの特徴を記録したレンズプロファイルが追加された。カメラモデル、レンズモデルを選択することで、そのレンズ特有の歪みを自動で補正してくれるようになったのだ。レンズプロファイルは今後も随時アップデートされるようである。従来通り、手動でのアングルや歪曲収差の補正も可能であり、使い方に変更もないので、誰にでも問題なく導入することができるだろう。

広角レンズの歪曲収差を自動補正 img_soft_pscs5_18_01.jpg

レンズを選択 img_soft_pscs5_18_02.jpg レンズプロファイルの一覧(画像はNIKONレンズ)。レンズプロファイルは随時アップデートされる予定であり、オンラインで検索することもできる。

Camera Raw6.1からレンズ補正を選択。レンズプロファイルを使用にチェックを入れると、自動的にExifデータを読み取り、レンズプロファイルを割り当ててくれる。
適用前 img_soft_pscs5_18_03.jpg
img_soft_pscs5_16_yajirushi.gif
適用後 img_soft_pscs5_18_04.jpg
レンズプロファイルを適応前と適応後の画像。レンズの樽型の歪曲が取れ、柱の水平がほぼ真っすぐになった。

完成画像 img_soft_pscs5_18_05.jpg

img_soft_pscs5_18_06.jpg 若干見下した目線で撮影しているので、柱が逆台形に歪んでいたのを、手動の変形で修整した。これで、水平、垂直ともに真っすぐな写真に仕上がった。


レンズの収差というのは、もともと垂直・水平がしっかりと写っていなければ、補正されたかどうかの判断が難しいところがある。全てのレンズプロファイルを検証した訳ではないので一概には言えないが、自動レンズ補正にチェックを入れておいて間違いはない。水平・垂直が明確にわかる写真であれば、補正の効果はわかりやすいが、そうでない写真であっても、基本的にチェックは入れておく方が無難で、また正確である。

自動補正のみで気に入らなければ手動で修整していくしかないが、効率化という面では十二分に評価できるものになっている。

色収差補正に関しても高精度であり、一般的に使用するレベルであればまず問題ない。各社が出しているソフトウェアと比べても遜色のない出来である。最近のアップデートによって、Camera Raw 6.1上でのレンズ補正が可能になり、新たにレンズプロファイルも追加された。現像もすべてCamera Rawで完結させている人にとっては、嬉しい機能だろう。

Lens Profile Creatorという自分でレンズプロファイルを作成できるアプリケーションが存在しているが、まだこの記事を書いている段階では英語版のみである。煩わしくても一度作成してしまえば使い続けることが可能な機能なので、忙しい人のためにも是非日本語版の説明が欲しいものだ。

フォトグラファーにPhotoshop CS5は必要なのか?

ものさしツール img_soft_pscs5_18_07.jpg
img_soft_pscs5_18_08.jpg
水平軸を調整する「ものさしツール」。これまでは水平線を計測してから、「イメージ」→「画像の回転」→「角度入力」、そして回転によって出てきた余白部分を「切り抜きツールで削除」と、かなり煩わしい手数を踏んでいたが、CS5では、角度補正がワンアクションで可能になり、さらに自動でトリミングされるようになった。


ブラシツール
img_soft_pscs5_18_09.jpg img_soft_pscs5_18_10.jpg

新しいブラシバリエーションとして「絵筆ブラシ」や「混合ブラシ」が追加されている。フォトグラファーにとって仕事の現場では使えそうにないツールでも、次のバージョンで劇的に進化したりすることがある。こういった新機能は、使い慣れておいて損はない。

写真の「修整」に特化した
利便性の高いバージョンアップ

Photoshop CS2あたりから、「これ以上の機能は必要ない」「今のツールのままで事足りている」という、フォトグラファーの意見をよく耳にする。実際、その通りだと思う。しかし今回のCS5は違うと断言できる。全てのツールにおいて細かい修整が加えられ、飛躍的に時間の短縮につながるものばかりなのだ(もちろんWin/Mac64-bit完全対応というパフォーマンス面の影響も大きいが)。


今回取り上げなかったものでも、ブラッシュアップされたツールもたくさん存在する。たとえば右で紹介している「ものさしツール」であったり、ブラシツールの刷新などである。こういった汎用性の高いツールのアップグレードがフォトグラファーにとって一番うれしい。スピードが求められる昨今の状況から考えると、斬新な機能よりも今回紹介した「手間が省ける」機能というのが一番助かるものなのだ。


フォトグラファーは基本的に、一度使えると思った機能は使い続けるし、逆に「これは使えない」と思った機能はよっぽどのことがない限り使うことはない。そういった面でも普段から使い慣れているツールの利便性の向上は、すぐに仕事に直結することができるので効率性を体感しやすいだろう。


どのバージョン、どのツールにおいても、ツールの組み合わせによって表現したいことが表現できるのであって、ワンクリックで完結できるものというのは非常に少ない。ツールが増えることによって新しい組み合わせが増え、新たな表現や可能性が生まれることもバージョンアップの醍醐味だと思う。


Photoshopは他のソフトウェアに比べても抜群に扱いやすく、リリースのたびに新鮮で新しい驚きを与えてくれる。同時に、「あともう少し!」という新しい欲求も与えてくれる(選択範囲系ツールは特に)。「表現の可能性」という側面から見ると、これ、これまでのどのバージョンも等しくレベルアップしているが、今回のCS5は、純然たる写真の「修整」に特化したバージョンのように感じた。フォトグラファーは手に入れておいてまず間違いはないことは確かである。

入江佳宏 Yoshihiro Irie

東大阪市のフォトプロダクション(株)2055勤務のレタッチャー。
1982年 兵庫県神戸市生まれ。
2005年 関西外国語大学卒業。
2008年 デザイナー、映画制作を経て2055入社。

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