2013年10月16日
4K撮影におけるカメラのラインナップとその特徴
大判センサーカメラから、4Kカメラへ
RED ONEの登場、そして2008年11月に登場した、キヤノンのDSLR機『EOS 5D Mark ll』の登場により、大判センサー搭載のカメラの潮流は大きく変わった。そして大判センサー搭載から、HD以上の解像度による4K映像の撮影/収録というカメラ開発においても、著しい進化が見られるようになる。
世界のビデオ業界、そしてスチルカメラの業界を牽引してきた日本のカメラメーカーも、4Kあるいはそれ以上の次世代市場を睨んで、そこからオーバーHD仕様のカメラを発表。
ソニーは2011年4月のNABショーにおいて、自社のデジタルシネマカメラブランドである“CineAlta”を4K対応の映画制作機器として再定義、そのフラッグシップカメラとして、8Kセンサーを積んだ4Kカメラの最高機種『F65』を発表した。
販売は2012年1月からで、ロータリーシャッターとNDフィルタを内蔵した『F65RS』がスタンダードモデルとなる。今年公開されたハリウッド映画「オブリビオン」「アフターアース」はこのF65によって撮影されている。『F65』はスーパー35mmサイズ/水平画素8K、総画素数約2000万画素を有する現在存在するデジタルシネマカメラとしては最高峰のカメラと言える。14ストップのダイナミックレンジと120fpsのハイフレームレートにも対応、記録にはSRMASTERポータブルレコーダー『SR-R4』を使用することで、ソニー独自の大容量メモリメディア『SR Memory』に16bitリニアRAWデータである『F65RAW』を収録可能。
さらに2012年10月には4K収録を汎用化させるべく『PMW-F55』と『PMW-F5』の2機種を発表。ネイティブで2Kまでの収録が可能なPMW-F5と、完全に4K収録をターゲットにしたPMW-F55は、両機種とも4096×2160ピクセルの4K/CMOSセンサーを搭載。さらに4Kの膨大なデータを効率的に圧縮する新コーデック“XAVC”を開発、XAVC MPEG-4 AVC/H.264規格、4K対応 10bit 4:2:2イントラフレームというこのコーデックで、S×S Pro+メディアにより収録可能。その他にも『AXS-R5』RAWレコーダーを接続、さらに最大2.4Gbpsの高速書き込みに対応した専用のAXSメモリーカードで16Bitリニアの4KRAWデータ収録も可能となる。このPMW-F55はXAVCによる4Kデータの取り扱いの良さもあり、発売早々すでに様々な撮影現場で使用されている。またソニーは民生用ミラーレスカメラシリーズのNEXシリーズより、AVCHDでの収録機器の総称であるNXCAMシリーズラインナップとして2012年4月に同じく4Kセンサーを搭載した『NEX-FS700J/JK』を発表。こちらも4K収録ユニット『AXS-R5』とインターフェイスユニットの『HXR-IFR5』をドッキングして使うことで、60p/30p/24pの4K撮影ができる。
次代を担う4Kカメラが次々と登場
EOS 5D Mark llの動画機能によって、大判センサーカメラの潮流のトップに躍り出たキヤノンは2011年11月、スーパー35mmサイズ/4K:4096×2160ピクセルの大判センサーを搭載した、デジタルシネマカメラの新たなラインナップ、CINEMA EOS SYSTEMを発表。シリーズ初号機となったHDサイズでの収録が可能な『EOS C300』に加えて、その発表段階ですでに4K対応の機種がロードマップにあることを示唆。2012年4月には外部レコーダー接続による4K CinemRAWデータ収録が可能な上位機種『EOS C500』と、Motion JPEGによりCFカードに4K収録を可能にしたDSLRタイプの『EOS-1D C』を発表。
JVCケンウッド『GY-HMQ10』:初のハンドヘルド4Kカメラ『GY-HMQ10』に加え、ニコンFマウントを装着したレンズ交換式の『JY-HMQ30』を発表。
JVCケンウッドは、2011年ごろから様々な展示会で試作機として4Kカメラを紹介。そして2012年3月、初のハンドヘルドタイプの4Kカムコーダーとして『GY-HMQ10』を発表している。こちらは4K UHD(3840×2160)の4K収録で、記録フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264(mp4)、収録方法は独創的で全体を4K画像と捉えた画面を4分割したフルHD画像を4枚のSDHC/SDXCカードに記録、パソコンの接続時に結合して4K表示する。この4分割画像を効率的に処理するため、高速画像処理エンジン『FALCONBRID(ファルコンブリッド)』を搭載。形状は通常のハンディタイプのHDビデオカメラと同じような仕様なので、レンズは交換式ではなく光学10倍のズームレンズが装着。2013年6月には、基本機能をそのままに1.25型の大判CMOSセンサーとニコンFマウント採用によるレンズ交換式の『JY-HMQ30』を発表。
パナソニック 4K VARICAM:2012年のNABショーで突然発表された4K VARICAMのモックアップ。詳細なスペック発表もなく、その後の進展は見られないが、同社の4K関連技術は着実に進化しているようだ。
パナソニックは、2012年4月のNABショーにおいて、次世代のVARICAMモデルとしてモジュラー型4Kカメラの試作機を披露、かなり機能的なデザインで実機の登場が切望される。さらに今年2013年のNABショーではハンドヘルド型の4Kカメラを発表しているが、2013年7月現在、いずれも実製品の正式発表、販売には及んでいない。
一方、海外のカメラメーカーの動向も見逃せなくなっている。
Blackmagic Production Camera 4K:今年4月のNABショーで発表された最も安い4Kカメラ。EFマウント搭載でULTRA HDサイズでの4K収録が可能。屋外ロケよりもクロマキー合成等の撮影など小型スタジオカメラとしても注目が集まっている。
特に4K制作の基点となるワークフローのパイプラインにおいて、4Kカメラは市場が待望しているところだ。4K、そしてUltra HD市場に最も活発な動きを見せているのは、ブラックマジックデザイン。こちらも2012年の『Blackmagic Cinema Camera』の登場以来、カメラ業界にも旋風を巻き起こしているが、今年4月には本命とも言える、『Blackmagic Production Cinema Camera 4K』を発表、こちらもスーパー35mmサイズセンサーでUltra HD(3840×2160)収録、グローバルシャッター、EFマウント仕様、非圧縮オーディオレコーダーを搭載。収録はProRes4ss(HQ)および、CinemaDNGファイルとして、筐体内部のリムーバブルSSDに収録する。12ストップのダイナミックレンジとタッチスクリーンによるメタデータ操作など備え、価格も432,800円(7月現在)というお手頃価格は、まさに実用4K時代を象徴するカメラの登場と言えそうだ。さらに同社ではカラーコレクションシステム、DaVinci Resolveを含む4K対応の周辺機器を今年数多く発表。そのワークフローの効率化にも力を注いでいる。
ARRI ALEXA 4K:まだ開発段階だが解像度を求める代わりに犠牲となってきたラチチュードやダイナミックレンジ、色信号処理などシネマカメラとしての本質を保ちつつも4K解像度の画を収録できるというカメラコンセプトは特に映画、CM業界から賞讃の声が上がっている。
REDの登場から6年、 撮影という部分では4K収録は身近になってきた。
※この記事はコマーシャル・フォト2013年9月号 特集「4K入門」を転載しています。
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