4K入門 高精細映像の世界

HP Z820で4K映像編集マシンを作る① 拡張性に優れるZ820

監修:江夏由洋

4K対応の新しいカメラやテレビが各社から発表され、注目を集めているが、実際に4K映像を制作する際に重要になるのが編集用マシンのスペックである。4K映像はフルHDの4倍の解像度があるので、プロセッサーやストレージなど、全てにおいてスピードとパワーを要求されるからだ。そこで、個人でも構築可能な4K映像編集マシンについて詳しく解説しよう。

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Mac Proと比べて拡張性に優れるZ820

まず、ベースとなるコンピュータだが、今回は放送局やポスプロなど映像制作業界で数多く導入されているHP Z820 Workstationをベースとしている。最近リニューアルされたばかりのMac ProもZ820と同等のパフォーマンスを発揮するので、これをベースにしてもよいのだが、Windowsマシンの方がグラフィックスカードを自由に選択できたり、拡張ボードを増設するときにコストパフォーマンスが良いというメリットがある。

Mac Proのグラフィックスカードは、標準でAMD FireProしか用意されておらず、その他のカードは選べない。拡張カードは外付けのPCI Express(PCIe)拡張ボックスが必要となるし、ストレージの増設も全て外付けとなるなど、やや使い勝手の悪いところがある。もちろんMacにも優れたところはたくさんあるので、用途や使う人によって使い分ければいいだろう。

HP Workstation Zシリーズには、エントリーモデルのZ420、ミドルレンジのZ620、ハイエンドのZ820が揃っているが、Z820はデュアルプロセッサーに対応しており、最大24コア(48スレッド)搭載可能。プロセッサーの種類は4コアから12コアまで7つの中から選ぶことができ、シングルプロセッサー/デュアルプロセッサーの組合せを含めると全部で13通りの構成となる(下記表組参照)。

プロセッサーの冷却方式は、空冷式と、より冷却効果の高い水冷式の両方が選べる。4K編集ではCPUを酷使することが多いので、水冷式を選べるのはありがたい。

メモリスロットは16スロットを装備し、最大容量は512GB(Windows 8.1 Pro 64bit時)。さらに拡張ベイや拡張スロットもZシリーズの中で一番数が多いなど、優れた拡張性を誇っている。今回Z820をベースモデルとして選んだのは、この拡張性の高さを見込んでのことだ。

HP Z820 WORKSTATION
img_products_4k_hpz820_01_04.jpg HP Zシリーズ最強ハイエンドワークステーション。最新のインテル 「Ivy Bridge」アーキテクチャー採用のインテル Xeon プロセッサー E5-2600 v2ファミリーを選択可能。デュアルCPU対応で、最大24コア(48スレッド)搭載可能。さらに16メモリスロットを装備し、最大512GBのECCメモリ搭載可能(Windows 7 Professional 64bit版では192GBまで)。さらにGPUコンピューティングNVIDIA TESLAを最大2基搭載可能、グラフィックスカードなら最大3基まで搭載することができる。極めて高い拡張性とパフォーマンスを実現するフラッグシップモデル。最小構成価格は230,000円(税抜)から。
Z820の優れた拡張性
プロセッサー メモリ 拡張ベイ 拡張スロット
最大24コア 最大512GB 7ベイ 最大7スロット
2.5GHz 4コア(シングル/デュアル)
2.0GHz 6コア(シングル/デュアル)
2.6GHz 6コア(シングル/デュアル)
3.5GHz 6コア(シングル/デュアル)
3.0GHz 10コア(シングル/デュアル)
3.4GHz 8コア(デュアル構成のみ)
2.7GHz 12コア(シングル/デュアル)
シングル
プロセッサー時:
4GB/8GB
16GB/24GB
32GB/64GB
128GB/256GB

デュアル
プロセッサー時:
4GB/16GB
32GB/48GB
64GB/128GB
256GB/512GB
外部:
5.25インチ
×3

内部:
3.5インチ
×4
シングル
プロセッサー時:
PCI×1
PCIe 3.0×3
PCIe 2.0×1

デュアル
プロセッサー時:
PCI×1
PCIe 3.0×5
PCIe 2.0×1

最新グラフィックスカードに対応するPCIe3.0を採用

前モデルZ800からの大きな変更点としては、第3世代のインテル Xeonプロセッサーに対応したこと以外にも、USBが3.0になったことと、拡張スロットの規格がPCIe 3.0になったことが挙げられる。

4Kではデータ量が膨大なので高速インターフェイスのUSB3.0は必須だし、PCIeが3.0になったことで最新のグラフィックスカードの性能を思い切り引き出せる。

インターフェイスまわりでは、もう一つ新しいトピックスがある。これまでHPのデスクトップ機はThunderboltに対応していなかったが、この4月17日にZシリーズ用のThunderbolt 2拡張カードが発売されたのだ。これでようやく、Mac Proと同じようにThunderbolt 2の周辺機器が使えるようになる。

そのほかZシリーズの特長として、優れたメンテナンス性に注目したい。スクリューレス構造を採用しているので、ネジやドライバーを使わないで本体内部にアクセスし、ストレージやカードを簡単に増設できるのだ。次回以降詳しく述べるが、4K編集マシンの構築においては、複数のハードディスク、SSDなどを内部に増設して用途に応じて使い分けたり、グラフィックスカードのほかにも4K出力カードを増設したりする必要があるので、メンテナンス性の良さは非常に重要である。

スクリューレス構造の採用による優れたメンテナンス性
img_products_4k_hpz820_01_02.jpg HP Zシリーズは、ドライバーなしでもメモリやHDDの増設・交換ができるスクリューレス構造を採用。上のようにサイドパネルも片手で簡単に開く。
img_products_4k_hpz820_01_03.jpg 内部拡張ベイ用のドライブキャリア。上のように2.5インチSSDに換装する時は、2.5インチ → 3.5インチの変換マウンタ「裸族のインナー」を使う。

※この記事はコマーシャル・フォト2014年5月号から転載しています。

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