2014年04月30日
コストパフォーマンスに優れたGPUと4Kモニター出力環境
4K編集で意外と重要なグラフィックスカード
今回の4K編集マシンの構築において、江夏由洋氏がもっとも重視しているのはプロセッサーのスピードでもメモリの容量でもなく、実はグラフィックスカードの性能なのだという。
ビデオ編集の作業において、CPUが関与するのは主にレンダリングの速度なので、作業の一番最後に、できあがった作品を書き出す際に効いてくる。
これに対して、最新の高性能なグラフィックスカードは、Premiere Proの動画再生エンジン「Mercury Playback Engine」 をハードウェア的に高速処理してくれるので、高解像度の映像を再生したり、テロップやエフェクトを適用したシーケンスを再生する場合に威力を発揮する。
つまり、グラフィックスカードの性能が良いほど、編集作業中のレスポンスが向上し、その場その場の瞬発力が上がり、エフェクトをたくさんかけてもきちんと4Kが表示されるというわけだ。
今回選んだグラフィックスカードは、ELSA製のNVIDIA GeForce GTX 780 Ti。Mercury Playback EngineのGPU高速処理でもっとも重要なのはCUDAコア数と言われているが、GTX 780 Tiのコア数は、最上位モデル Quadro K6000と同じ2880基。それでいて価格の方は、K6000の約60万円に対してGTX 780 Tiは10万円以下と、非常にコストパフォーマンスが高い。
このカードを使うときに注意しなくてはならないのが、補助電源の端子の形状。Z820の6ピン電源を8ピンに変換するケーブルが必要となる。また、GTX 780 Tiはまだ新しいカードなので、Premiere側が正式にサポートしていない(2014年4月1日現在)。近いうちにサポートされると思うが、それまでの間は、手動でPremiereのcuda_supported_cards.txtを書き換えて、GPU高速処理が動作するようにしなくてはならない。
グラフィックスカードと4K出力カード
①
グラフィックスカード
NVIDIA
GeForce GTX 780 Ti
②
4K出力カード
Blackmagic Design
DeckLink 4K Extreme
コストパフォーマンスの良い4K出力カードと4Kモニター
カード類でもう一つ忘れてはいけないのが4K出力用のカードだ。GTX 780 Tiは作業用の27インチモニターと接続するので、これとは別に4K出力用カードを用意して、ここに4Kモニターを接続する。今回のマシンではBlackmagic Design のDeckLink 4K Extremeを使って、HDMIから4K映像を出力している(このカードは3840×2160・30fpsまで対応)。
4KモニターはDELLの24インチ4KモニターUP2414Qの使い勝手が良い。実売価格は約10万円ながら60fps対応で、広視野角IPSパネルを採用し、色温度や色空間を切り替えられる。モニターのサイズはやや小ぶりだが、4K映像のモニタリングには充分使える。
各カードの役割
以上が今回紹介する4K映像編集マシンの全体像だが、ベースとなっているHP Z820の筐体やマザーボード、電源が優れているからこそ安定して動作するし、自作マシンではこうはいかないだろう。
このマシンを構築した江夏氏はすでに実戦に投入しており、フルHDに近いスピードで作業ができているという。4Kのネイティブファイルをマルチストリームで動かすと、さすがに動作が重くなるが、なんでもかんでも4Kでやろうとせず、フルHDとの使い分けをするのが賢いやり方だ。
これまで説明してきたカスタマイズの作業はそれほど難しくはないので、これと同じマシンを自分で作ることは充分可能だが、自信がない人も多いだろう。そういう場合はHPワークステーションやノンリニア編集システムを扱っている販売店に相談してみよう。4Kマシンは、意外と、すぐ手の届くところにあるかもしれない。
※この記事はコマーシャル・フォト2014年5月号から転載しています。
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