2013年10月28日
各社から4Kカメラが続々と発売され、選択肢が大幅に増えたことで、4K撮影の機会も増えてきている。そこで、最近撮影したソニーF55のレビューも含め、4K映像についてまとめてみる。
コマーシャル撮影における4K撮影の現状
デジタル撮影ではモニタの出た目がマスターになるのでチャートはあまり必要ではなくなっていたが、4K収録ではRAW撮影やLog撮影が増え、撮影後のグレーディング作業やオフライン用に色を戻す作業が必要となってきているのでチャートを撮っておくことが必須になっている。
4Kテレビモニターも最近では手が届くほどの価格になってきて4Kというワードも一般的に浸透してきた。ただし、4Kモニタは量販店などでの販売は見られるが4Kのコンテンツは現在ほぼないに等しく、放送も現在ではHDまでで、まだ現状では4K関連製品での一般家庭視聴はもう少し先のようである。
カメラの分野ではかなり以前から4Kというワードは撮影では使われていて、RED社の出現で4Kでの撮影が現実的になり、現在では4Kカメラのラインナップが揃い4Kカメラの選択肢が大幅に増えた。しかし、4Kで撮影した場合のデータ容量は半端なく大きくて、そのデータをコピーする時間やオンラインでの4K作業となるとマシンのスペックなどの問題からレンダリングの時間やHDDの容量問題などで作業効率が悪くなり、後処理での時間のロスやコストがかかるのが問題である。
ただ現在、撮影はどんどん4K撮影の機会が増えてきているし、今まで高価なイメージだった機材も、キヤノンがEOS C500や一眼カメラで4K撮影可能なEOS 1D-Cという小型4Kカメラをリリースし、RED社もEPICやSCARLETという小型で4K・5K撮影のできるカメラをリリース、そして今年はソニーもF55という小型4Kカメラをリリースしたので各社勢揃いといった感じである。
撮影のジャンルとして大きくは映画・テレビ番組・CM・MVとあり、中でもCMで4K撮影というと車の撮影や合成を多用するような案件では行なわれていた。つまり4Kというと予算が潤沢にないとなかなか難しいのが現実だった。しかし、カメラが安価になったこともあり、4K撮影の割合は飛躍的に増えてきたように思われる。
4K撮影の利点を挙げると、まずは撮影後のリサイズやデジタルズームができるということだろう。
完成メディアがHDの場合には4KはHDの4倍の面積があるので、編集の工程でHD画質のまま2倍までのデジタルズームが可能である。また撮影時の手持ち撮影のぶれなどの修正も、画面サイズが大きいことを利用したスタビライズも可能で画質の変化なく容易に修正できる。
ソニーF55実写テスト
ファインダーはセンサーシャッターになっていて、少しでも目を離すとシャッターがクローズになりファインダーが見えなくなる。これはおそらくファインダーの焼き付け防止だと思われるが、撮影時必ずファインダーに接眼しているわけではないし、状況によっては少しファインダーから目を離して撮影することもあるのでこの機能はオン・オフ設定できるようにして欲しい。
発売してまもないソニーF55をCMの撮影で使用する機会があったので、使用感や新しいコーデックXAVCについてのワークフローなどを含め記したい。まずこのF55について特筆したいことは、本体で収録できるファイル形式が従来のコーデックAVCの後継の新しいXAVCというコーデックであるということ。
従来の4KではRAW形式しか収録方法がなかったので、どうしても作業効率が悪く、ポストプロダクションでの時間も増えるなど、コスト面での負担が大きかった。
今回のXAVCは4K 10bit 4:2:2の情報を持ちながら、イントラフレーム圧縮された動画ファイルになっていて、ノンリニアで編集する人にはおなじみのファイル形式になっている。また、今まで4K撮影の大きなデータでの撮影では、収録メディアが何百ギガの容量を持っていったとしても、あっという間に一杯になっていたがXAVCは64Gのメディアに30fpsの映像を30分ほど収録でき、4K収録が現実的なレベルになってきた。
収録はS-Logを進化させたS-Log2での収録となり、このS-Log2の使用感は以前のS-Logに比べ、かなりシネライクを意識したプリセットになっている。
以前のS-Logではまだまだビデオ的だったエッジもなめらかになっている。センサ性能も格段に良くなっていて、ソニーが推奨する基準感度はISO 1250と、大幅に引き上げられた。他のメーカーでは基準感度は高くてもISO 800であることを考えるとかなりの差と言える。
今までのCMOSカメラでは必ずローリングシャッター問題があり、手持ち撮影や移動スピードの速い案件などでは画面の歪みを気にしなくてはならなかったが、F55は「グローバルシャッター」を搭載しており、CMOSセンサにもかかわらず、全く動体歪みのない映像の撮影が可能になっている。
ここまで書くといいことづくめのようだが若干不満点もある。特にメニューダイヤルの操作性の悪さには撮影中かなりストレスを感じた。回転ボリューム式のつまみになっているのだが、回転させて送ると2秒ほど遅れてインジケータが移動し、何度も狙った項目を行きすぎたり、関係のない項目をさわってしまう。これはなかなか撮影部泣かせのつくりだ。
※この記事はコマーシャル・フォト2013年9月号 特集「4K入門」を転載しています。
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