製品レビュー

【解析特集】1億200万画素のラージフォーマットセンサー搭載 FUJIFILM GFX100

解説・人物撮影:芳田賢明(DNPメディア・アート)
静物撮影:小室和宏(DNPメディア・アート)

富士フイルムから発売された中判ミラーレスカメラ「GFX100」。民生用ミラーレスデジタルカメラにおいて世界最高となる1億200万画素を実現している。同じく43.8×32.9mmのイメージセンサーを搭載するミラーレスカメラ「GFX」シリーズのフラッグシップモデルとして登場した本機の実力を3本のレンズと併せて解析していく。

「普通」に使える1億200万画素

FUJIFILM GFX100
フジノンレンズ GF110mmF2 R LM WR(左下) / GF32-64mmF4 R LM WR(右下) / GF120mmF4 R LM OIS Macro(右上)
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FUJIFILM GFX100

主な仕様
撮像素子:43.8×32.9mm / ベイヤーCMOSセンサー / 有効約1億200万画素
撮影感度 標準出力感度:AUTO1 / AUTO2 / AUTO3 / ISO100~12800(1/3ステップ)
拡張モード:ISO50 / 25600 / 51200 / 102400
手ブレ補正:センサーシフト方式 5軸補正 5.5段
連写 高速連写CH:約5.0コマ/秒 / 低速連写CL:約2.0コマ/秒
外寸:156.2×163.6×102.9mm(EVF装着時)
質量:約1,155g(バッテリー、メモリーカード含まず)
メーカー直販サイト価格:1,323,000円(税込)
>詳細スペック:fujifilm.jp/personal/digitalcamera/gfx/fujifilm_gfx100

第一印象は「これが本当に中判!?」。35mm判のフラッグシップ機と同等のサイズ感と軽さだが、ボディキャップを外すと現れる43.8mm×32.9mmのセンサーに、「本当に中判なんだ」と納得する。

グリップは、形状もラバーの質感も良好でとても持ちやすい。操作性も、あってほしいところにあってほしいボタンやダイヤルがあり、わかりやすく違和感がない。横位置、縦位置、どちらのグリップを握っていても操作系が変わらないように配慮されていることも使いやすく感じる。ファンクションボタンのカスタマイズも自由度が高く、手の大きさや撮影スタイルに合わせて設定できるだろう。

ただ縦位置グリップについては、その薄さやラバーがないこともあり、フィット感は今ひとつに感じてしまった。また、再生時のピントチェックがコマンドダイヤルの押し込みであることや、P/A/S/Mの切替スイッチがなく、シャッタースピードのオート/マニュアルの切替ボタンがあるのみということに違和感があったが、どちらも使っていくうちに慣れるだろう。

興味深く感じたのは、背面液晶やEVF上での露出ゲージが初期設定では非表示であること。あくまで液晶の見た目で撮影することが想定されているのだろうか。

後ほど作例を紹介するが、中判とは思えない身軽さで、まして1億画素超のデータを動かしているとは思えないほど「普通に」使えた。カメラが無理をしていないと感じられることに、素直に「すごいな」という印象を持った。


背面サブモニターと天面サブ液晶
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サブモニターとサブ液晶、いずれも表示カスタマイズが可能。設定情報をメインモニターには出さずにサブモニターのみで表示するなど、欲しいときに欲しい情報が得られるよう設定できる。サブ液晶は、電子ペーパーのように電源を切っても表示が保持されるのが特徴的。バックライトボタンを押すと白黒反転され、暗所では光って見える。

EVFは脱着可能
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面白いギミックなのが脱着可能なEVF。外してスッキリさせておいても良いし、別売アダプターを装着してチルトEVFにもできる。EVFは広く精細で見やすいが、その広さゆえ、AFを取りにいく瞬間に絞り込む動作がチカチカして見えることや、フレームレート優先モードにしないとチラツキを感じる場合があるなど、少し気になる点もあった。

メモリーもバッテリーもダブル
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メモリーカードスロットはSDカードのダブル。奇をてらわない、安心の仕様だ。防塵防滴のシーリングも確認できる。バッテリーも2個装着できる仕様で、1個だけでも駆動する。購入時付属されるバッテリーもしっかり2個だ。

メインモニターはタッチパネルでチルト式
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メインモニターは3.2インチで、静電式のタッチパネルになっている。チルトは上に90度、下に45度、右に60度動き、ハイ・ローアングル、縦位置に対応。MF時にもタッチAFが作動し、三脚に固定しての物撮時にも便利に使える。

1灯天バンでポートレイト撮影

作例
img_products_fuji_gfx100_rev_19.jpg レンズ:GF32-64mmF4 R LM WR 1/125s F4 ISO100 モデル:ネリ


会議室での取材を想定し、ストロボの1灯天バンでポートレイト撮影を行なった。

上の作例はAdobe Camera RAWで、中判ネガカラーのプリントをイメージして現像している。

中判らしい、しなやかで繊細な描写と、滑らかで豊かな階調性を感じた。無理なく、嫌味なく、髪の毛1本1本まで描写されている。そして、露出を上げていってもなかなか飛ばない、ハイライト側の懐の深さが印象的。ハイライト領域のみで肌のトーンを表現する場合など、この懐の深さが効いてくる。肌の透明感表現に繋がる重要なポイントだ。

一般的な中判カメラを使う場合にあるような、AFの速さやフォーカスエリア(ポイント)の大きさに目をつむらなければならないようなこともなく、35mm判のカメラを使う感覚でアグレッシブに撮影ができた。

現場の室内灯はストロボのモデリングランプのみであったが、顔認識や瞳AFもしっかり作動した。

レンズは、32-64mm F4、110mm F2、120mm F4マクロを使用。32-64mmは、広角寄りのズームということもあるのか、他の単焦点と比べると描写が若干ソフトで、ポートレイトに合うように感じた。個人的に広角のポートレイトが好きなこともあり、3本の中で最も撮りやすいレンズであった。

110mmは3本の中で最も性能の高さを感じた。絞り開放で顔に寄って撮影すると「睫毛にはピントが合っているが眼球には合っていない」という状況も起き、ピントは相当シビアである。フォーカスロックも基本的にはすべきではないと感じた。

120mmマクロはAFスピードが若干遅く感じ、ポートレイトでは撮影のリズムが掴みにくいという感想を持った。


フィルムシミュレーション

PROVIA
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Velvia
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ASTIA
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CLASSIC CHROME
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PRO Neg.Hi
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富士フイルムの強みが生きるフィルムシミュレーション機能。同じRAWデータからカメラ内現像で比較。やはりPROVIAが最もバランスの取れた、使いやすい仕上がりであると感じた。いずれもカラークローム・エフェクトを「強」で適用している。


カラークローム・エフェクト

カラークローム・エフェクト「強」
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カラークローム・エフェクト「なし」
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左がカラークローム・エフェクトを「強」で適用。右は適用なし。スリッパや椅子の色で差がわかりやすい。デジタルカメラは「明るく・鮮やかに」という方向性が一般的だが飽和しやすい。カラークローム・エフェクトは飽和しがちである鮮やかな色に深みを与えるものだ。中判の描写力を活かしたい場合や、印刷入稿を前提とした撮影であれば、常にONでも良いのではないかと感じた。


上作例のカメラ内現像
img_products_fuji_gfx100_rev_18.jpg 上の作例の撮って出し画像。フィルムシミュレーションはPROVIA。カラークローム・エフェクトを「強」で適用。

中判ならばやっぱりブツ撮り

作例
img_products_fuji_gfx100_rev_21a.jpgレンズ:GF120mmF4 R LM OIS Macro 1/30s F11 ISO100 スタイリング:砂坪将司(DNPメディア・アート)

夏ということで爽やかに、バーをイメージしてジントニックを撮影した。

上の作例はピクセル等倍で切り出したもの。ライムの皮のシズル感や、そこから今にも零れ落ちそうな炭酸水の滴、さらにはグラス表面の水滴、飛び散る炭酸の細かな泡までをもしっかりと描写されている。ぜひ下のフルトリミング画像をクリックして、原寸の画像を確認してみてほしい。

作例のノートリミング状態の画像を下に示しているが、背景のボケ味や点光源の玉ボケ、中間調~シャドーのグラデーションも美しく、見応えのある画が得られている。

撮影はCapture One Proを用い、テザーで行なった。カメラの認識、データの転送も素早く、ストレスなく進められた。

作例のトリミング前画像 ※画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示
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作例のフルトリミング。このサイズでも、グラデーションの美しさと繊細な描写を感じ取れる。


レンズは、ブツ撮りでまず選択されるであろう120mmマクロを使用。

解像力は申し分なく、使いやすい。富士フイルムのレンズの特徴である絞りリングを、テザー撮影時は「C」の位置にすることで、絞り値をPCから制御できるようになる。

Capture OneのカーブにはGFX100のフィルムシミュレーションも搭載されており、カメラ内現像と同等の仕上げにすることができる。作例では、CaptureOneでPROVIAのカーブを使って現像している。

なお、今回の作例は全てスタジオでの撮影であったため、別途、1段ずつ感度を変えて高感度ノイズの出方を確認した。

ISO400まではノイズを感じられない高画質で、そこから徐々にノイズが増えてくる。輝度ノイズはISO12800まで気にならないレベルなのだが、カラーノイズによる色ムラの方が気になる傾向にあり、ISO6400までは実用レベルであると感じた。中判の裏面照射センサーに相応しい、驚異的な高感度耐性だ。


ISO50で飛ぶハイライト

ISO50
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ISO100
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ISO200
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定常光にて、感度のみを変えながら、露出が同じになるようにシャッタースピードを変えて撮影。拡張感度のISO50のみ、ハイライト側が飛び気味になっていることがわかる。スタジオではなるべく感度を下げたくなるが、あくまで拡張である。


芳田賢明(よしだ・たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。DNPメディア・アート所属。写真集やアート分野を中心に「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行なっている。撮影ではポートレイトや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。


※この記事はコマーシャル・フォト2019年8月号から転載しています。


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