製品レビュー

【新製品インプレッション】ソニー α7S Ⅲ × YUMIKO INOUE

ソニーから新しく発売されたフルサイズミラーレスカメラ「α7S Ⅲ」。高感度と動画性能が特徴の「α7S」シリーズの最新モデルだ。前機種「α7S Ⅱ」の発売から5年の時を経て大幅なアップデートがなされている。今回はこの「α7S Ⅲ」を使用し、ハウススタジオで自然光のみ(天候は雨)のシチュエーションで、ダンサーを静止画・動画ともに撮影した。

MODEL:Mina Kobayashi(K-BALLET COMPANY) ST:Naoko Tsuji HM:KOUTA(GLASSLOFT) FE 35mm F1.8/1/160s f4 ISO2500
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AFは、コンティニュアスモード(AF-C)を使用して撮影。「α7S Ⅲ」は、像面位相差AFに対応したセンサーを採用しており、動きの中でもしっかりとフォーカスしてくれている。

Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA/1/160s f2.8 ISO1250
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雨の日の自然光のみという環境下でも、骨と筋肉の陰影を美しく描写してくれた。高感度耐性、ダイナミックレンジの広さに特徴を持つ「α7S Ⅲ」ならではの魅力。


ドキュメンタリータッチでバレエダンスを撮影

4K24pと120pで記録して、FHDで編集。絞り、シャッタースピード、ISOは全てAUTOで撮影している。手ブレ補正効果を向上させる動画専用の「アクティブモード」を使用して、手持ちで挑んだ。もちろん三脚を使用した時ほど滑らかではないが、安定感はあるのでそれを活かしてドキュメンタリータッチの映像に仕上げている。また、AF性能も優れていて、ダンサーの激しい動きにも付いていけた。


Interview YUMIKO INOUE

撮影がよりアクティブになるカメラ

今の状況として、もちろんクライアントワークもあるのですが、自分が運営しているサイトや、自ら企画した作品の撮影を増やしています。そうなると、予めしっかりと準備をして撮影に臨むというより、思い立った時にすぐ撮影に入れる機動力と、汎用性の高さが重要になってきます。そういったカメラを探している中で今回「α7S Ⅲ」をテストさせていただいて、まさに理想のカメラだと感じました。
スチル、ムービー両方の撮影に高いクオリティで対応し、ミラーレスならではの小型軽量のボディ、AFや手ブレ補正といった機能面も充実しているので、アクティブな撮影スタイルにぴったりです。実際撮影中、ずっと手持ちでしたし、自然と自分の撮影スタイルが軽くなっていく感覚がありました。

高い高感度耐性とAF性能による安心感

高感度が一番の魅力のカメラだと聞いていたので、撮影環境は、雨の日のハウススタジオでライトなしの撮影にしました。さらに被写体はダンサーさんです。いじわるな条件にも関わらず、仕上がりは流石といった感じですね。スチル撮影では、ISO感度もかなり上げて(撮影データ参照)撮影したのですが、ばっちり写し撮ってくれました。画素数が低いことがこのカメラの弱点なのかもしれませんが、WebやSNSといった今主流の媒体をターゲットに想定するならば、全く問題ないと思います。描写力や色味といった画質の面よりも、使い勝手の良さを評価してあげるべきカメラですね。
AF性能も評判通りの追従でした。実際は写真よりも薄暗い中での撮影で、一枚目の写真はダンサーもかなり激しい動きをしています。AFモードは、コンティニュアスモード(AF-C)を使用し、高速連写で撮っているのですが、きちんと動きを捉えてくれています。このあたりの性能は、撮影時の安心感に繋がりますよね。それ以外の部分で集中できるのが大きなメリットです。

カメラ一台で完結するムービー撮影機能

今回は、スチルだけではなく、ムービーも試してみました。やはりスチル、ムービーどちらにも使えることが魅力のカメラですから。結論から言うと、慣れなくてはいけない部分はありつつも使いこなせれば、カメラ一台でクオリティの高い映像が撮れる素晴らしい性能だったと思います。
動画撮影専用の手ブレ補正「アクティブモード」を使用してみたのですが、これがかなり効きます。三脚は使用していません。もちろん固定しているわけではないので、ある程度のブレはあるにしろ、それを活かしてドキュメンタリータッチにしました。これは自分の中で大きな発見で、今後こういったタッチの映像をどんどん撮っていきたくなりました。ただ、このモードを使用すると、撮影画角が10%狭くなってしまいます。この感覚を身に着けておかないと、撮影後の映像を見て大切な部分が切れてしまっていた...というトラブルが怖いですね。実際に今回私が経験しました。
また、プロキシー動画をHD解像度で同時記録可能なのが嬉しいです。4K動画はデータが重いので、編集作業をするときは、変換作業で時間がかなり取られてしまいます。今の時代、納品までのスピード感はかなり早くなってきているので、撮影して即編集、即アップといったワークフローがスムーズにできるのは、とても助かります。
スケジュールの関係で、「CFexpress Type Aカード」を試すことはできなかったのですが、組み合わせることでよりスピーディーな作業になると思います。


ソニー α7S Ⅲ


撮像素子:35.6×23.8mm Exmor R CMOSセンサー
有効画素数:1210万画素
感度:ISO80〜102400(拡張:ISO40〜409600)AUTO(ISO80〜12800、上限/下限設定可能)
AF:ファストハイブリッドAF(位相差検出方式/コントラスト検出方式)リアルタイム瞳AF、リアルタイムトラッキング
手ブレ補正:イメージセンサーシフト方式5軸補正5.5段
連写:AF/AE追随連写最高約10コマ/秒
動画記録:4K120pカメラ内記録、16bitRAW出力(HDMI出力した対応外部レコーダー使用時)、プロキシー記録に対応
記録メディア:SD、SDHC、SDXC、CFexpress Type A
液晶モニター:バリアングルタイプ3.0型タッチパネル液晶
外寸:約128.9×96.9×80.8mm
質量:約699g(バッテリーとメモリカードを含む)
市場推定価格:税別410,000円前後
スペックの詳細:sony.jp/ichigan



ユミコ・イノウエ
VOGUE JAPANを中心に積極的にダンサーを撮影。世界のトップダンサーとコラボレーションするバイリンガルのWebマガジン「Alexandre」の編集長も務める。

コバヤシ・ミナ
熊川哲也Kバレエカンパニーのプリンシパル・ソリストとして数々の作品で主演を務めている注目のバレエダンサー。12月『くるみ割り人形 』(東京/オーチャードホール)に出演予定。

※この記事はコマーシャル・フォト2020年11月号から転載しています。


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