製品レビュー

【解析特集】高解像度・高速連写を両立させたオールマイティなフラグシップ機 SONY α7R lll ②

解説・撮影:中村雅也(凸版印刷 TICフォトクリエイティブ部)

前回行なったスペックの機能検証を踏まえ、高画素ミラーレス一眼、ソニー「α7R lll」のスタジオ撮影を想定した実写テストで本機の魅力にさらに迫る。

前回 「高解像度・高速連写を両立させたオールマイティなフラグシップ機 SONY α7R lll ①」

Test 1 画質の検証

空気感まで写し撮るαの実力

ストロボを使用してのポートレイト撮影。レンズは「FE 85mm F1.4 GM」を使用。絞りはF1.4の解放。カメラ上からオパライトを1灯(プロフォトの「Softlight Reflector White」を使用)と、背景のグラデーション用に1灯の、計2灯での撮影。

img_products_sony_a7R3_rev_12.jpg ※画像をクリックすると別ウィンドウで本データを表示
レンズ:FE 85mm F1.4 GM 1/125s f1.4 ISO100
モデル:Julien Nettersheim ST:中薗亜矢(WiZ) HM:関 大輔(WiZ)


瞳AFの精度

少ない灯数での撮影のため、環境光は非常に暗い。(カメラ上のオパライトも、グリッドと、ディフューザーを装着させ、なおかつ光が回りすぎないようにライト下部をフラッグでカット)。このような状況下でも、「瞳AF」はモデルの瞳を検出してくれた。うつむいたり、手で顔の半分を隠しても、しっかりと瞳を捉え続けてくれる「瞳AF」。一度使ったら最後、ポートレイト撮影ではなくてはならない存在となる。

img_products_sony_α7R3_rev_13.jpg コントラストの高いまつ毛ではなく、「眼球」をしっかり捉えてくれる「瞳AF」。そのため、まつ毛までしっかりフォーカスを稼ぎたい場合は多少絞り込むことをおすすめする。

ダイナミックレンジの広さ

フォーカスの性能も勿論であるが、描写性能も優れている。16bit画像処理からの14bit RAW出力対応により、向かって左側シャドー部の瞳のデータも残っている。背景のグラデーションの境目にもトーンジャンプなどが起こらず、ダイナミックレンジの広さを伺い知ることができる。

img_products_sony_α7R3_rev_14.jpg 光のあたりが弱いシャドー部も、データが完全に無くなることなく、ダイナミックレンジの広さを感じさせる。レタッチの耐久性もあるため、作品制作においても活躍してくれそうだ。

ボケ味の良さ・肌色再現性

F1.4の解放での撮影でも、ボケのきいた箇所に色にじみが発生することがなかった。フォトグラファーの意図を見事に反映してくれる「α7R lll」。モデルの個性や、場の雰囲気をさりげなく切り取り、空気感をしっかり写し出してくれる、頼もしいパートナーだ。

img_products_sony_α7R3_rev_15.jpg 35mmフルサイズセンサーにより、のびのびとしたボケ味が魅力的である。また、画像処理エンジンの改良により、肌色の再現性も向上した。α特有の「青みがかった肌色」が払拭された感がある。


Test 2 高速性能の検証

機動力を備えた高画素機

最高約10コマ/秒の高速連写対応となった「α7R lll」。ストロボ撮影時においても、その性能を活かすことが可能だ。ストロボは世界最速のプロフォト「Pro-10」を使用。レンズは、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」を使用。高速性能を発揮する土台は整った。

img_products_sony_a7R3_rev_16.jpg ※画像をクリックすると別ウィンドウで本データを表示
レンズ:FE 70-200mm F2.8 GM OSS 1/200s f5.6 ISO400
モデル:Julien Nettersheim ST:中薗亜矢(WiZ) HM:関 大輔(WiZ)


瞳AFの追従性

フォーカスモードはコンティニュアスAF。フォーカスエリアはワイドに設定。回転しながらコートの裾を翻すモデルを高速連写で撮影。有効画素数4240万画素の高画素機にしては、小気味好くシャッターを切ることができた。「瞳AF」も黒いコートに迷うことなく、瞳にフォーカスを合わせ続けてくれ、撮影のテンポもまずまず良好である。高速性能、操作性の向上により、「α7R ll」のウィークポイントをほぼ改善してきており、実用性は申し分ない。

img_products_sony_α7R3_rev_17.jpg 顔が小さく写っている場合でも、手前にコントラストの高いものや、服などの障害物があっても、迷うことが少なく瞬時に瞳を検出し、追い続けてくれる「瞳AF」は、ポートレイト撮影ではかかせない機能となった。

注意したい点は、やはり高画素機であるため、「α9」ほどの超高速性能は発揮できないということ。「瞳AF」も、「α9」に比べるとやや追随性能が落ちているような気がしないでもない。それでも「α7R lll」も充分に追随するのであるが。

α7R lll 瞳AF

α7R ll 瞳AF


プロフォト製品とのマッチング

RAW+JPEG設定で連続撮影する際はUHS-ll対応のSDカードの使用をおすすめしたい。リサイクルタイムの速い、プロフォト「Pro-10」との組み合わせにより、一層のパフォーマンスの発揮が期待できる。

α7R lllとプロフォトPro-10 0.02~0.7秒の高速リサイクルタイムを誇るプロフォト「Pro-10」。ライトシェーピングツールも充実しており、メインライトには、「Giant Reflector 240」を使用。硬すぎず、ほどよいコントラストでモデルの立体感を演出してくれた。


秒間10コマの実力

img_products_sony_α7R3_rev_19.jpg ストロボ使用時でも最高約10コマ/秒で撮影可能な「α7R lll」。連写撮影中もファインダーや背面液晶への表示タイムラグも少ない。スタジオ撮影だけにとどまらず、フィールドなどといった幅広い分野で活躍が期待できる機種である。


Test 3 質感再現と「ピクセルシフトマルチ撮影」の実力

微細な質感再現に長けたRの底力

金属・植物・木材・布といったさまざまな質感を持つマテリアルを1枚の写真に写し込む。レンズは「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」を使用。有効画素数4240万画素以上の質感再現性には目を見張るものがある。アクセサリーの硬度、透明度。植物の繊細さ。木材の温もり。布のざらつき。など五感に訴えてくるような、表現性能は、他社高画素機の追随を許さないのではないだろうか。

img_products_sony_a7R3_rev_20.jpg ※画像をクリックすると別ウィンドウで本データを表示
レンズ:FE 90mm F2.8 Macro G OSS 1/13s f11 ISO100
ST:鈴木俊哉(BOOK.inc)


img_products_sony_α7R3_rev_21.jpg

画質の性能

金属の冷たさ、透明感、硬さ、などといったそのものの本質が伝わってくる画質性能は、高画質といった表現を飛び越え、質感再現性能というフレーズが適している。

G MASTERレンズとの組み合わせ

img_products_sony_a7R3_rev_22.jpg ※画像をクリックすると別ウィンドウで本データを表示
上記写真は「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」を使用した作例。口径食の発生を抑え、点光源も美しく再現できるレンズとの組み合わせは、質感再現性だけでなく、ボケ味を活かした空気感ある表現にも適している。



ピクセルシフトマルチ撮影の効果

さらに「α7R lll」から、イメージセンサーを1画素ずつずらして計4枚の画像を撮影し、解像感の優れた1枚の画像を生成する「ピクセルシフトマルチ撮影」機能を搭載。この機能により、被写体が持つ、感触、湿感、温度まで写し込んでくれる。4枚撮影時に、各画素でR・G・Bの全色情報を取得してくれるため、偽色の発生を最小限に抑えつつ、より忠実な色再現性も実現可能となる。飽和しやすい赤や、表現しづらいゴールドなどの色味を持ち合わせる被写体の撮影にも、積極的に使用を試みたい機能だ。4枚撮影した後、専用のソフトウェア「Viewer」で約1億6960万画素分のデータから、約4240万画素(7952×5340)を生成してくれるので、ハンドリングもしやすい。


ピクセルシフトマルチなし img_products_sony_α7R3_rev_23.jpg

ピクセルシフトマルチあり img_products_sony_α7R3_rev_24.jpg
ガラスの盤面越しの数字も、ピクセルシフトマルチ撮影機能で撮影することより、輪郭がよりシャープになる。ハイライト部のデータも持ち上がり、画像全体に重厚感が生まれてくる感覚だ。


高精細な表現に長けた「α7R lll」。超高速性能を備え持つ「α9」。αの進化にはこれからも目が離せない。シーンや、被写体により機種を使い分けることで、写真表現における新たな価値を創造してくれるだろう。αシリーズの今後にますます目が離せない。



中村雅也(なかむら・まさや)
1977年生まれ。2000年中央大学文学部卒業。2007年凸版印刷入社。トッパンアイデアセンターフォトクリエイティブ部所属。コマーシャルフォトを中心に活動中。静止画のみならず、動画制作も手がける。


※この記事はコマーシャル・フォト2018年2月号から転載しています。


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