2017年09月25日
ソニーから5月に発売されたフルサイズミラーレス一眼「α9」。高速連写を売りにしていることから、スポーツや報道といったジャンルに注目されがちだが、プロのコマーシャルの現場でもその性能は発揮される。今回はストロボ使用時のブツ撮影を検証してみた。
新次元に突入したミラーレス一眼の登場
ミラーレスカメラの進化が著しい。ミラーレスカメラは、様々なジャンルで活動するあらゆるフォトグラファーたちから、画質はいいかもしれないが「仕事ではちょっとね」、「操作性がね」と懸念され、あえて使用される機会は少ない。しかし、この意識が大きく変化する時がきたようだ。
有効約4240万画素という高画素を誇るソニーの「α7 R II」や、最高ISO感度409600(拡張ISO設定時)と超高感度性能を備える「α7S II」。ここ数年でソニーのフルサイズミラーレスαシリーズがフォトグラファーの興味をじわじわと刺激し始めている。両機種とも単に画素数や、感度数といったスペック数値が高いだけではなく、数値以上のポテンシャルを持っていることは、一度でも使用したことのあるフォトグラファーであれば、体感されたことだろう。
そんなαシリーズから新たなフルサイズミラーレス機が発売された。最高20コマ/秒の高速連写、ファインダー像消失時間ゼロのブラックアウトフリー連続撮影、撮影領域のほぼ全面となる約93%をカバーする693点像面位相差検出AFセンサーの配置など、想像を超えた驚異のスペックをまとい、彗星のごとく出現した「α9」。高速性能の実現には、回路部を画素領域とは別の層に配置した積層型「Exmor(エクスモア)RS」CMOSセンサーの搭載や、画像処理エンジン「BIONZ X(ビオンズ エックス)」の進化が要因だ。画素数は2400万画素とハンドリングもよい。ローパスフィルターは搭載されているが、集光率の高いフルサイズ裏面照射構造型センサーにより、被写体の細かいディテールや質感表現、高感度性能といった画質の肝となる部分にも大いに期待が持てる。
高速性能であるがゆえ、スポーツカメラマンには多大なメリットがありそうだが、「コマーシャルフォトグラファーもそのうまみを味わってみたい。」と思い、スタジオにてブツ・モデルを被写体とし、その驚異の性能に迫ってみた。
■SONY α9
レンズマウント | ソニーEマウント |
---|---|
有効画素数 | 約2420万画素 |
撮像素子 | 35mmフルサイズ(35.6×23.8mm) Exmor RS CMOSセンサー |
ISO感度 | 〈メカニカルシャッター時〉ISO100~51200
〈電子シャッター時〉ISO100~25600 |
測光方式 | 1200分割ライブビュー分析測光 |
露出補正 | ±5.0EV(1/3EV、1/2EVステップ選択可能)
〈ダイヤル操作時〉±3EV(1/3EVステップ) |
シャッター形式 | 電子制御式縦走りフォーカルプレーンシャッター |
シャッター速度 | 〈メカシャッター時〉1/8000~30秒・バルブ
〈オート時〉1/32000~30秒・バルブ 〈電子シャッター時〉1/32000~30秒 〈連写メカシャッター時〉1/8000~30秒 〈連写オート時〉1/32000~1/8秒 〈連写電子シャッター時〉1/32000~1/8秒 |
連写速度 | 〈オート/電子シャッター時〉Hi(最高約20コマ/秒)・Mid(最高約10コマ/秒)・Lo(最高約5コマ/秒)
〈メカシャッター時〉Hi(最高約5コマ/秒)・Mid(最高約5コマ/秒)・Lo(最高約2.5コマ/秒) |
フォーカス検出方式 | ファストハイブリッドAF (位相差検出方式/コントラスト検出方式) |
手ブレ補正 | イメージセンサーシフト方式5軸補正 (補正方式はレンズ仕様による) |
モニタ | タッチパネル式7.5cm(3.0型)TFT駆動 |
ファインダー | 1.3cm(0.5型)電子式ビューファインダー |
質量 | 約588g(本体のみ) |
外寸 | 約126.9×95.6×63.0mm |
【TEST 1】 ストロボ使用時のブツ撮影
撮影協力 P=中島孟世・森泉祥之(ティエイチエス) ST=鈴木俊哉(BOOK.inc)
レンズ:FE 90mm F2.8 Macro G OSS ISO:200 露出モード:マニュアル シャッター:1/200s 絞り:f11 ※画像をクリックすると別ウィンドウでオリジナル画像を表示
決定的な瞬間を楽々とキャッチ
レスポンスの良いカメラだ。グラスから舞い上がる水流の表情を狙いながらそう感じた。
世界最高速の閃光速度を放つプロフォトの「Pro10」を使用し、スタジオでのスチルライフフォトにトライしてみた。スチルライフの中では、この手の撮影は時間も労力もかかり、難易度が高い。
「α9」はストロボ使用時、メカシャッターとなるため、自慢の20コマ/秒も、5コマ/秒となってしまう。水しぶきなどの一瞬を切り取るためにはレリーズタイムラグの短さが必要だ。正式な数値は未公表だが、スタジオワークでの水の流れを止めるような撮影では充分な短さだ。背面液晶に画像が送られてくるのも速く、まるで水の動きを、こちらでコンロトールしているかのような感じで、ストレスなく撮影ができた。
マニュアルフォーカスは、ピントを合わせたいところを拡大してくれる「ピント拡大」機能の使い勝手が良い。背面液晶の解像度も高く、グラスの表面にも素早くフォーカスを合わせることができた。緻密さが求められるスチルライフの撮影でも充分使えると実感した。
■高速レスポンス撮影
データの液晶モニターへの表示がとにかく速い。シャッターボタンの反応も良く、素早い「水しぶき」の動きにもタイミングを合わせやすかった。メカシャッター使用時でも快適な撮影が可能だ。■高画質
有効約2420万画素のフルサイズセンサー。裏面照射型構造CMOSセンサーと、「FE90mm F2.8 Macro G OSS」の組み合わせにより、水の入ったガラス越しのアクセサリーの緻密なディテールや質感なども、しっかりと描写することができた。■ダイナミックレンジ
■ストロボとの連携
ホットシューにプロフォト「Air Rimote TTL-S」を取り付けて、手元で露出をコントロール。直観的な操作ができる。チャンネルも細かく設定することができ、シビアなライティングを求められるブツ撮影でも、ストレスない撮影が可能だ。■マルチセレクター
「α7」シリーズには無かった、マルチセレクターが搭載された。各種メニューの操作も行いやすい。「ピント拡大」機能使用時の、細かい箇所のピント合わせなども素早く行なうことができ、より使い勝手が向上した。■USB給電
【ストロボ使用時のブツ撮影 メイキング映像】
凸版印刷TICフォトクリエティブ部
1977年生まれ。2000年中央大学文学部卒業。2007年凸版印刷株式会社入社。トッパンアイデアセンターフォトクリエティブ部所属。コマーシャルフォトを中心に活動中。静止画のみならず、動画制作も手がける。
※この記事はコマーシャル・フォト2017年8月号から転載しています。
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