2020年01月17日
コマーシャルフォト2020年1月号の表紙撮影。以前からソニーα7シリーズを使っているという八木さんには、9月に発売された6100万画素の高画素機α7R IVで、表紙を含めたカラーとモノクロのビューティポートレイト、そしてスティルライフを撮り下ろしてもらった。
Ph:八木 淳/SIGNO ST:Kosei Matsuda/SIGNO Hair:Takayuki Shibata /SIGNO Make:Ken Shiroma Model:中島沙希/TOMORROW TOKYO STUDIO:スタジオギア 衣装協力:XANADU TOKYO(赤のポンチョ/参考商品) α7R IV+FE 85mm F1.4 GM 1/125s f11 ISO100
Interview八木 淳(フォトグラファー)
コマーシャルフォト2020年1月号
──今回の撮影のコンセプトは?
八木 今年の6月に開いた個展「Y-EN」で、円の内側だけをメイクしたビューティフォトを発表したのですが、そのテーマは今後も続けていきたいということがあって、モデル撮影では同様に円のメイク、表紙では黒バックに赤の衣装で1月号らしいイメージを作っています。
表紙は黒バックに赤の衣装。レンズはFE 85mm F1.4 GM。その後、レンズをFE 135mm F1.8 GMに換えて、中ページのアップを撮影。
──八木さんからは「モノクロも撮ってみたい」というリクエストがありましたが。
八木 α7R IVという新しいカメラを使うにあたって、カラー写真は赤一色のコーディネイトで生地感による色の違いをどう再現するか、対してモノクロは白バックでレザーを重ね着した黒一色のコーディネイト。色の要素をなくしてレンズのシャープさ、モノクロの力強さを見てみたかったんです。
──使用したレンズは?
八木 G Masterの85mm(FE 85mm F1.4 GM)をメインに、アップの写真では、G Masterの135mm(FE 135mm F1.8 GM)も使っています。
α7R IV+FE 85mm F1.4 GM 1/125s f11 ISO100
──すべて手持ち撮影でしたが、例えば動きのないアップのビューティ撮影でもいつも手持ち撮影なのですか?
八木 ビューティフォトでも数ミリの顔の向きで見え方が違ってくるので、そこをモデルに指示するのか、自分で動くのか。僕は自分で動いた方が早いというタイプなので、基本、手持ち撮影です。今回はモデルにも動いてもらい、僕自身も動きながら撮っていますが、そんな時「リアルタイム瞳AF」は助かりますよね。ファインダーに表示されるフォーカスのフレームがちゃんと顔、瞳を追い続けていることを確認しながら撮っていけた。
α7R IVを構える八木さん。ファッションでもビューティでも、手持ちで撮影をする。α7R IVはボディサイズが大きくなった分、ホールド感は良くなったと言う。
──仕上がりはいかがでした?
八木 カラーの方はライティングによる髪のディテールだったり、服の発色、肌感も白塗りなのでディテールが出にくいかなと思っていたのですが、繊細に写っていますよね。α7R IVの解像度が高いことはわかっていたのですが、この描写はレンズの性能も大きく影響しているのだと思います。高解像度に耐えられるレンズの良さというのかな。特にモノクロはモニターで確認した時「ここまでレザーのディテールや金具の質感を再現してくれるのか」という感動がありました。
──実際にスタジオでは、ティザー撮影の写真がモニターに表示されると、スタリストさんやメイクさんからも声が上がっていましたよね。
八木 「え、こんなに写るの?」みたいな(笑)。僕自身、かなり驚いたけれど、誰が見ても驚く描写力、画力というのはあらためて凄いんだなと思います。
スタジオティザー撮影での定番ソフトCapture Oneもα7R IVに早々に対応。撮影した画像を拡大して「リアルタイム瞳AF」の精度を確認する。
今回使ったレンズもそうですが、ソニーのレンズの特徴として少し絞った時のピントの深さが気に入っていて、例えばネックレスなどジュエリーをつけた女性のポートレイト広告では、ジュエリーもシャープに撮りたいし、モデルの顔にもピンが欲しい。そうした時、ちょっと絞ると両方にきちんとピンがくる。わざわざ別撮りして合成する必要がないんですよね。
──スティルライフも撮ってもらいましたが、これがまた一癖ある被写体で、細部の描写とダイナミックレンジが要求される。
α7R IV+FE 24-70mm F2.8 GM 1/125s f16 ISO100
八木 そうですね(笑)。僕にとってもカメラにとってもチャレンジなブツ撮りでした。被写体は氷に埋まったグラス。自分がブツ撮りで求める光の入り方だったり、グラデーション、コントラストによるカット面の美しさ、少し氷が溶けた部分の滑らかさまで文句のない再現をしてくれました。レンズはG Masterの24-70mmです。写真の上に配置した氷と水滴は別撮りで、落ちる水滴を高速連写。タイミングが合ったカットを合成して1枚の写真に仕上げています。こうした偶然のシズルカットも、秒間10コマの連写ができれば、ジャストタイミングで撮れる確率は高い。でも考えてみれば、1台のカメラで6100万画素の高画素撮影とこの連写が両立するのは、凄いことですよね。
被写体はグラスを沈めたまま凍らせたアイスブロック。レンズはFE 24-70mm F2.8 GM。
──これまでカメラバックタイプの中判デジタルカメラとα7R IIIを使ってきたとのことですが、使い分けは?
八木 どちらかと言えばαはビューティよりもブツ撮りに使うことが多いですね。レンズの特性とか、自分の中では一番ブツ撮りにしっくりくるので。それに今回の撮影もそうですが、背面液晶のタッチフォーカスでピント位置を指定できるのは、ブツ撮りでは本当に便利です。
──そのα7R IIIの後継機、α7R IVを使ってみてどうでしたか?
八木 まず操作感から言えば、グリップやボディが少し大きくなりましたよね。自分にとっては嬉しい点で、α7R IIIではカメラを持った時、小指があまってしまうんです。少しの差ですがずっと手持ち撮影をしていると疲れてしまう。縦位置グリップはつけたらつけたで重くなるし。それも人物撮影ではあまり使ってこなかった理由なのかな。α7R IVはボタンのサイズも大きく押しやすくなって、その辺の操作性が断然よくなりましたよね。
タッチスクリーンでフォーカス位置をアイスブロックからのぞくグラスの縁に設定。
──ストレートにお聞きしますが、α7R IVはこれまで中判デジタルで撮影していたビューティなどの撮影でも使っていけそうですか?
八木 中判サイズでの表現や、今まで中判を使ってきた感覚もあるから、「全ての撮影をα7R IVで」と言ったら嘘になりますが、解像度や描写のシャープさはもう問題ないですよね。これまで35ミリタイプでは解像度がもの足りないこともありましたから。だけど6100万画素ならば広告の大きなポスターやサイネージにも使っていける。しかも今回のように手持ちで動きながら表情を追う撮影での「リアルタイム瞳AF」は強力ですし、中判にはない機動力で、例えば野外でも6100万画素で撮れる。その際には手ブレ補正の機能も有効でしょう。このフットワークの軽さとレンズ性能も含めての解像感、描写力というのは、撮影の幅を広げてくれる、言い換えれば撮影のアプローチを変えてくれるカメラだと思います。
ソニーα7R IV
35ミリフルサイズカメラで、2019年12月時点最高の有効画素数6100万画素の解像度を誇るαシリーズ最新機。最高約10コマ/秒の高速連写、人物撮影ではリアルタイムトラッキング機能によりAFが顔/瞳を追い続ける。
協力:ソニーマーケティング株式会社
ソニーα Universe https://www.sony.jp/ichigan/a-universe/
八木 淳(やぎ・あつし)
1977年宮城県生まれ。2001年エガリテスタシオン勤務。2003年富田眞光氏に師事。2006年渡英。2007年帰国後から本格的にキャリアをスタート。ビューティを中心にファション、ポートレイト、スティルライフなど幅広いジャンルを手がけ、活躍の場も広告、雑誌、ムービーと多岐にわたる。 2019年6月、初の個展「Y-EN」「A sense of Hong Kong」を開催。
※この記事はコマーシャル・フォト2020年1月号から転載しています。
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