2019年08月28日
有効画素数約1億200万という圧倒的な画素数で大きな話題を呼んだ富士フイルム「FUJIFILM GFX100」(以下GFX100)。今回はGFX100の実力を最大限引き出すべく、広告撮影の第一線で活躍するフォトグラファー南雲暁彦氏に、実際の広告撮影を想定してファッションポートレイトとスチルライフ、ふたつのシチュエーションで撮影してもらった。
プロフェッショナルの魂に火をつけるカメラ
撮影協力:中島孟世(THS)・一山菜菜海(THS)・川俣麻美(THS)・松谷亮志
ヘアメイク:タテノ マサシ(pep)
デコレーション:Kyon(Resona+)
スタイリング:小池あずさ(WiZ)
衣装:SOMARTA
モデル:ANASTASIYA S.(WILD FLOWER MODEL AGENCY)
機材協力:アガイ商事
フジノンGF250mmF4 R LM OIS WR 1/100s f9 ISO100 ACROS
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FUJIFILM GFX100
主なスペック
撮像素子:43.8×32.9mm ベイヤーCMOSセンサー・有効画素数約1億200万画素
撮影感度 標準出力感度:AUTO1/AUTO2/AUTO3 /ISO100~12800(1/3ステップ)
拡張モード:ISO50 / 25600 / 51200 / 102400
手ブレ補正:センサーシフト方式 5軸補正5.5段
連写 高速連写CH:約5.0コマ / 秒・低速連写CL:約2.0コマ / 秒
外寸:156.2×163.6×102.9mm(EVF装着時)
質量:約1,155g(バッテリー、メモリーカード含まず)
メーカー直販サイト価格:1,323,000円(税込み)
詳細:fujifilm.jp/personal/digitalcamera/gfx/fujifilm_gfx100
開発発表時から注目していた富士フイルムの1億画素モデルGFX100。このボディの色使いやシャープなデザインは超高画素機の迫力を無理やり演出したりせず、クールなインテリジェンスを感じる佇まいを纏っている。初めてモックアップを見たときからそこに魅力を感じていた。兄弟機であるGFX50SやGFX50Rにも非常に好感を持っているがGFX100のこのさらっとしたスタンスに何かもう一段、頂点の余裕を感じるのだ。ならばとこちらも本気の作品制作を行ないそのポテンシャルを感じてみた。
フジノンGF50mmF3.5 R LM WR 1/125s f8 ISO100 PROVIA
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メインのビジュアルはSOMARTAのBone Butterflyという真っ赤なドレスに身を包んだモデルを俯瞰で撮影、フィルムシミュレーションはPROVIA/スタンダードだ。ドレスや周辺にあしらった植物のディテール再現は言わずもがなで、素晴らしいというより凄まじい。
レンズの解像度もセンサーに負けていないし全体の色のりもよくトーンがリッチなのでシルクや髪の艶、ビーズの立体感もよく再現されている。高画素化によるメリットは多々あれど弊害は感じない。これは大きく伸ばしてみたい気持ちがふつふつと湧いてくる高画質だ。
フジノンGF110mmF2 R LM WR 1/125s f7.1 ISO100 Velvia
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画像拡大:目元とヘッドアクセサリー
メイクのディテールまでリアルにわかる画質を保っているのがわかる。また赤いビーズの刺繍も球体の立体感を損なわずに見事に再現している。
画像拡大:つま先のレース
靴と一体化した全身ニットの美しいディテールもこの衣装のこだわりだ。そういう作り手のこだわりをしっかり受け止めて表現することが出来るのは嬉しい。
ひとつの撮影スタイルの幕開けを感じさせる
フジノンGF250mmF4 R LM OIS WR 1/125s f7.1 ISO100 PROVIA
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モデルの撮影はポージングやストロボチャージのタイミングに合わせてテンポよくシャッターを切っていくことが重要で、それがモデルの表情や衣装の動きをうまく捉えるコツとなる。そういった意味で大きく重く、被写界深度も浅く、ブレが目立つ大きなセンサーの高画素機でファッションの撮影をすることは容易なことではなかったのだが、GFX100ではそういった欠点がほとんど払拭されている。
ただし、ストロボでの撮影ではモデリングランプだけだと撮影時の明るさが足りずAFが迷うこともあるので、撮影に影響しないレベルでAF用にサービスライトを入れて撮影するとテンポ良く1億画素でファッションポートレイトを撮影することができた。
写真というのは二次元で表現するものだが、このカメラが描き出す画にはまるで立体で捉えたかのような迫力がある。今回のような最高レベルのディテールを持つ衣装を撮影する場合や大きく伸ばす仕事などでは心強い武器となるだろう。モアレも全く出なかった。
フジノンGF250mmF4 R LM OIS WR 1/125s f4.5 ISO100 Velvia
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五感を刺激するほどの描写力も魅力
フジノンGF110mmF2 R LM WR 8s f14 ISO100 PROVIA
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コーヒーをモチーフにしたデスクトップという筆者の得意技で物撮影を行なった。生豆からイタリアンローストまで色の違う豆のグラデーションで微妙なトーンを作り、さらに細かく引いた粉、金属、ガラス、木目、布、クレマ(コーヒーの表面にできる細かい泡)など見どころ満載のビジュアルに仕上がった。
画像拡大:泡
今回の画像の中で一番細かいディテールを持った部分だが、呆気なくリアルに表現。性能が肉眼を越えているので、拡大してみて泡の厚みがよくわかるという現象が起きる。コーヒー好きなら匂いも感じるはずだ。
画像拡大:豆
コーヒー豆というのは割と表情が豊かで、ここではそういう一粒一粒の個性が見えてくる。焙煎が深くなってくると艶と透明感が出てくるのだが、それも見事に描写され、触ると指に脂がつく感じまで伝わってくる。
画像拡大:布
生地の織りがわかるのは当然として、この生地の特徴は絶妙な色合いと光沢感、それをしっかりと捉えている。それどころかさらに飛び出た糸まで見えてしまう。生地物はモアレが怖いが全て解像してしまうので杞憂かもしれない。
画像拡大:粉
エスプレッソ用に細かく挽いた粉だが、この程度の細かさでは粉の一粒一粒まで見えてしまう。通常解像度の175線印刷にするにしても元の画像がしっかりとデータを持っていれば、より粉は粉っぽく再現されるので、これはこれで重要なことである。
細かいところまで解像しているとか、していないとか、そういうレベルの話ではなく、金属は冷たさや硬さ、豆やクレマは香りが、生地を触ざらざらという感触が、木の天板に物を置く「ことん」という音が、各々感じられる描写力を持っていた。
この力をどう使うかはクリエイター次第だが明らかに5000万画素クラスとは持っている情報量が違う。それによってコミュニケーションのレベルが変わってくる。ぜひとも原寸でプリントしてテーブルの上においてみたい。結構リアルにわからないかもしれない。
※この記事はコマーシャル・フォト2019年9月号から転載しています。
南雲暁彦 Akihiko Nagumo
凸版印刷 ビジュアルクリエイティブ部 チーフフォトグラファー
1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。世界約300都市位上での撮影実績を持つ。日本広告写真家協会(APA)会員。多摩美術大学、長岡造形大学非常勤講師。
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