2020年12月20日
小型軽量ながら良質な光を、充分な光量で発光できることで人気のProfoto Aシリーズ。まさにロケ撮影に持ってこいのライティングツールだ。今回はその最新モデルとなる「A10」の性能と、Aシリーズに同社OCFライトシェーピングツールを装着できる「OCF アダプター」による拡張性を撮影テストで検証した。
Profoto A10
最大出力:76Ws
リサイクルタイム:0.05〜1.0秒
発光回数:フル出力で最大450回
寸法:10.8✕16.5✕7.5cm
質量:560g(バッテリーを含む)
詳細:https://profoto.com/jp/
Profoto OCFアダプター
対応ライト:Profoto A1、A1X、A10
寸法:120✕280✕90mm
質量:750g
詳細:https://profoto.com/jp/
小型軽量の装備を実現
ミラーレスカメラとA10のお陰でロケに使用する機材がコンパクトになった。OCFアダプターも軽量でコンパクトなので持ち運びに便利だ。
高精度な角度調整が可能
OCFアダプターはスタンドアダプターがB10と同等の物が付属。ライティングの角度を高精度に変えることができる。ライトシェーピングツールもしっかりと止まる。
OCFライトシェーピングツールとの組み合わせ
OCFアダプターを使用することでOCFズームリフレクターやOCFマグナムリフレクターを使用できるため、よりパワフルな光をつくれる。
Profoto Connectによるスマホ操作
Profoto Connectを使用することで直感的に撮影できる。スマートフォンと組み合わせればオフカメラで使用しているストロボの出力を楽に変更できる。
ロケに最適なライティング機材とは
ロケ撮影において軽量かつコンパクトなストロボは重要だ。特に取材や公共交通機関での移動が多いフォトグラファーにとっては、機材のサイズと重さは重要なファクター。機動力があれば少人数での撮影も楽にこなせる上、ライティングの自由度が増す。
ただ、機材のサイズが小さくなっても性能はできるだけ求めたいというフォトグラファーも多いはずだ。
スタジオライトで世界的に有名なスウェーデンのライティングメーカーProfotoからも機動力を活かしたバッテリーストロボが多く発売されている。筆者もProfotoの機材を長年使用しており、特にバッテリーストロボは驚くほど進化しコンパクトになっている印象だ。10年以上前になるが以前ロケ撮影で使っていたのは、大きく重いProfoto Pro-B2やAcuteB 600などが主体でとてもひとりで移動するのは大変だった。リチウムイオンバッテリーが主流になりバッテリーの性能がアップし、性能、重量ともに飛躍的に進化した。Profotoからもロケに使えるバッテリーストロボがここ数年で何種類も発売されてきた。発売される毎に筆者も導入している。
現在発売されているロケに最適なバッテリーストロボは大光量のB1X、機動力と光量のバランスのよいB10&B10 Plus、そして今回解説するオンカメラとオフカメラで使用可能な最小のスタジオライトA10といったラインアップだ。
ロケ撮影の強い味方Profoto Aシリーズ
Profoto Aシリーズは、これまでA1とA1Xが発売されており、多くのフォトグラファーが導入している印象。今回発売されたのはA1Xの後継となるA10だ。A10にはProfotoのBluetoothテクノロジー、Profoto AirXが内蔵されている。それによりスマートフォンとの接続が可能になりProfotoのアプリケーションからファームウェアアップデートやスマートフォンを使ってのストロボ撮影が実現された。
Aシリーズは世界最小のスタジオライトと言うだけあって、クオリティー的にもパフォーマンスにおいても高いレベルだ。最大の出力は76Wsで9段分の調整が可能。リサイクリングタイムは最大発光量の時に1秒とテンポ良く撮影できるのもポイント。ロケ撮影においては使用する光量が大きくなるので、リサイクリングタイムが短いほどテンポ良く撮影できる。LEDのモデリングを備え、バッテリーひとつで最大450回のフル発光ができる。
海外での撮影も多い筆者は基本Profoto B10をベースにA1と組み合わせて使用している。取材などでとにかく機動力を求められる場合はA1だけで勝負することもある。A1であればカメラバッグにカメラ一式とA1を2セット入れることができるので、装備を最低限に抑えることができる。
念願のOCFアダプターが発売
ただし、A1は他のProfoto製品と違い、簡単でスピーディーに使用する目的で作られていることもあり、これまで専用のアクセサリーは使用できるが、Profotoのライトシェーピングツールの多くを取り付けることができなかった。そのためライティングは直当て、サードパーティのホルダーを使ってアンブレラを使用したり、バウンスといった使い方が多かった。
しかし、この度念願のOCFアダプターが発売され、ライティングの幅が大きく広がった。OCFアダプターはProfotoのOCFライトシェーピングツールをA1に装着させることができるアダプター。B10と同様のスタンドアダプターもしっかりできており、ライトの角度を自由に決められるのもポイント。アンブレラホルダーも備えているのでProfotoのアンブレラXLまで装着ができる。
また、OCFアダプターはAシリーズ全てに使用できるので初期のA1から現行のA10まで使用できるのも嬉しい。
リフレクターでパワーを増長させる
A10の最大発光量は76Wsとパワフルだが、逆光のシーンなどでは設定によっては少し光量が足りないこともある。そういったときは、OCFアダプターを使い、ハードリフレクターを装着することで解決する。より強い光が必要な場合、OCFマグナムリフレクターを使用すると良い。OCFマグナムリフレクターは最大で2段分の光量をアップできるので、光量が少し足りない場合などに最適だ。コンパクトさ重視の場合はOCFズームリフレクターがおすすめ。OCFマグナムリフレクターほどではないが、最大で1.2段分の効果を得られる。
OCFアダプターを使うことで今まで使用できなかったハードリフレクターが使えるようになった点はロケ撮影においては大きなアドバンテージになるはずだ。
OCFマグナムリフレクターとの組み合わせ
A10✕1灯(出力10+OCFマグナムリフレクター)
カメラ:Hasselblad X1D
レンズ:Hasselblad XCD 2.8/65mm
夕日をバックに日中シンクロ撮影。通常では絞って撮影するかNDフィルターが必要なシーンだが、レンズシャッター1/2000秒で背景の明るさをイメージ通り調整できた。OCFマグナムリフレクターを組み合わせることにより最大で2段分の光量を得られる。OCFマグナムリフレクターは照射角度が狭いので被写体から2mほど離してウエストアップに光が当たるように調整。その結果、シャープでコントラストの高い光を実現できた。
機動力のあるOCFソフトボックス
OCFアダプターを使うと上記で紹介したリフレクター類の他に、様々な形状をしたOCFソフトボックスも使用できる。OCFソフトボックスの魅力は撮影中に時間を掛けずに組み立てができること。耐久性や堅牢性に優れたスタジオ用のRFiソフトボックスなどはロッドのテンションが高く組み立てなどには少し時間が掛かってしまっていた。そのため、ひとりで組み立て、撮影、分解をやっていると思いの他機動力がない。しかし、OCFはスピード重視。ロ ッドはRFiなどと比べると細く、組み立ては数十秒。ロッドやディフューザー類は予めセットされているので、スピードリングに取り付けるだけで撮影が行なえる。筆者の印象だが、組み立てに1分も掛かることはないのがOCFソフトボ ックスの魅力だ。
ただし、サイズはコンパクトな物が多いので大きな被写体や人物の全身撮影などでは工夫が必要となる。
ロケ撮影においてソフトボックスは風を受けやすく転倒し易いので、サンドバッグは必要だがA10とOCFソフトボックスの組み合わせであれば軽量なので5kgほどのウエイトで充分固定できる。今回、千葉の海岸で撮影した際は風速が5m/sほどあり、中々大変だったが、OCFアダプターがしっかりしていたので、ライティングの角度が変わったりすることはほぼ無かった。スタンドも機動力重視でCスタンドなどは使わず、一般的な軽量のアルミのスタンドを使ったが問題無く撮影することができた。
OCFソフトボックス 60cm Octaとの組み合わせ
A10✕1灯(出力9.0+OCFソフトボックス 60cm Octa)
カメラ:Hasselblad X1D
レンズ:Hasselblad XCD 1.9/80mm
風の強い海辺だったので風の影響が長方形型よりも少ないオクタ型を選択。直径は60cmと使い勝手よくモデルの上半身を写すには使いやすい。光の当て方にもよるが男性モデルの顔に少しシャドウを入れたかったので画面右側からライティングしている。光の広がり方も美しくロケ撮影では便利な組み合わせだ。
OCFソフトボックス 60✕90cmとの組み合わせ
A10✕1灯(出力8.5+OCFソフトボックス 60✕90cm)
カメラ:Hasselblad X1D
レンズ:Hasselblad XCD 1.9/80mm
OCFソフトボックス 60✕90cmは使い勝手抜群の長方形型のソフトボックス。オクタ型よりも面積があるため、より均一にライティングできる。今回は男性モデルなので少し陰影をつけるために被写体から2.5mほど離してライティング。その結果、柔らかさの中にメリハリのあるライティングができた。画面右側から少しサイド目に光が当たるように調整し、立体感も表現。オクタに比べ、衣装には均一に光が当たっているのでしっかりと質感や色を確認できる。
A10とOCFアダプターを組み合わせて多灯ライティング
今までAシリーズで多灯する際は、基本直当てで硬めのライティングが多かった。もちろんAシリーズの綺麗な光の広がり方によりイメージ通りライティングはできていたが、今回のOCFアダプターのお陰で、メリハリをつけた様々なバリエーションが組めるようになった。
ライトは1灯でも効果は絶大だが、2灯になればさらに細かなディテールまで表現できるようになる。OCFソフトボックスにはグリッドが装着可能。光の広がりの制御やコントラストの調整まで行なうことができるので多灯ライティングを組みやすい印象だ。
また、OCFアダプターはライトの角度を上下に自由に変えて、トップライトやレンブラントライト、サイドライトなど様々なライティングに挑戦することができるのもポイントだ。さらに、OCFソフトボックスとOCFズームリフレクターやOCFマグナムリフレクターを組み合わせればメリハリをつけたライティングも可能だ。
OCFシリーズだけでロケでもスタジオのようにライティングできるようになったので、Aシリーズの出番は増えそうだ。
OCFソフトボックスと組み合わせる際の注意点
OCFアダプターを使用してAシリーズとOCFソフトボックスを組み合わせる際、細かいことではあるが注意点がある。一般的にソフトボックスはライト中央から周辺まで均一な光を作ることができる。しかし、Aシリーズは光源が小さいことと、ホットスポットができる場合がある。そういった場合はライトの芯を少し外すと良いだろう。
できるだけ均一にライティングしたい場合はA10の上位機種B10など光源の大きなライトを使うことでより美しい光を得られるはずだ。
OCFライトシェーピングツールを組み合わせた多灯ライティング
A10✕1灯(出力8.0+OCFソフトボックス 60cm Octa)
A10✕1灯(出力8.5+OCFズームリフレクター)
カメラ:Hasselblad X1D
レンズ:Hasselblad XCD 2.8/65mm
太陽が思い通りの場所に無かったので、OCFズームリフレクターを使って逆光を演出。メイン光には上半身にメリハリをつけてライティングできるOCFソフトボックス 60cm Octaを使用。ポイントは逆光の光。画面ギリギリにOCFズームリフレクターが入るように調整した。逆光のフレア感を強調するためにNiSiのフィルター、ブラックミスト1/4をレンズに装着してふんわり感を強めている。A10が2灯あれば光も自由自在に操れるのでライティングの幅がグッと広がる。
A10✕1灯(出力6.5+OCFソフトボックス 60✕90cm)
A10✕1灯(出力6.0+OCFソフトボックス 30✕90cm)
カメラ:NIKON Z 7II(サンプル機)
レンズ:NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
夕日が沈み背景が暗くなり始めたのでトップライトをキーライトにして、画像右後からフィルライトを当て立体感を表現。OCFアダプターはヘッドが可動式のためトップライトも楽々つくることができる。ただ、キーライトだけだと背景に被写体が同化してしまうため、OCFソフトボックス 30✕90cmを使い、フィルライトとして使っている。エッジとモデルの左頬にライトを入れ立体感を感じさせた。
A10✕1灯(出力7.0+OCFソフトボックス 60✕90cm)
A10✕1灯(出力5.3+OCFソフトボックス 30✕90cm)
カメラ:NIKON Z 7II(サンプル機)
レンズ:NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
OCFは基本機動力を重視したライトシェーピングツールが多い。そのためサイズもソフトボックスで長辺90cmと小さめなので、全身を撮影するには被写体からライトを離す必要がある。撮影できなくはないが光源を被写体から離すと光が硬くなるので、今回はキーライトにOCFソフトボックス 60✕90cmを使い、光の足りない部分のフィルライトとしてOCFソフトボックス 30✕90cmを縦組みで使用。そうすることで大きなボックスのように扱えるので便利だ。
機動力のあるロケ撮影を実現
今回、Profoto A10とOCFアダプターを使い様々なライティングで撮影テストを実施した。結論としては、ロケ撮影においてこの組み合わせは最強と言えるだろう。特にOCFアダプターの発売により、OCFライトシェーピングツールが使えるようになったことで、Aシリーズだけで表現力が大幅にアップできたことは大きなメリットだと感じている。
機動力を求めている移動の多いフォトグラファーには是非Profoto A10とOCFアダプターの組み合わせを試してもらいたい。
解説・撮影:上田晃司
米国サンフランシスコに留学し、写真と映像を学ぶ。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファーとして活動開始。現在は雑誌、広告を中心に活動。ライフワークとして世界中のドラマチックなシーンを撮影。写真教室の講師や講演、書籍の執筆活動も行なっている。
※この記事はコマーシャル・フォト2021年1月号から転載しています。
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