2023年05月12日
今回は蒲生ヒロマサ氏(UN)の協力の下3月に発売されたAputure社の新型ライトリフレクタータイプのamaran 60x S、100x S、200x S、チューブタイプのamaran PT 1c、PT 2c、PT 4cを使い、スタジオでのスチル&ムービー撮影の検証を行なった。
Cut 01:スチル撮影
撮影データ カメラ:Sony α7R IV/f32 1/4秒 ISO400
左右から乳白アクリルボード越しに❶❷、ミニズーム(従来製品)❹でトップ奥から文字盤に光を入れ、長さ60cmのPT 2c❸でガラス面のハイライトを作る。
使用ライト:amaran 100x S×2灯(❶❷)/amaran PT2c(❸)/Lightstorm 600d pro+Spotlight Mini Zoom(❹)
それぞれのライトの光を見る
左サイドからのライト❶。乳白アクリル越しのリフレクター光で、バンド部分にハイライトのグラデを作る。
右サイドからのライト❷。バーンドアを付けて光の照射範囲を絞り、右のバンドにハイライトを入れる。
時計上にチューブタイプのライト❸を翳し、ガラス面に直線的なハイライトを入れる。定常光のため、角度などの微妙な調整も、実際の光を見ながら手軽に行なえる。
ズームスポット❹を文字盤中心にあてる。このズームスポットは新製品ではないが、スポット範囲やエッジのぼかしなどの調整がとてもやりやすい。
Cut 02:スチル撮影
腕に時計をはめたカットの撮影。針だけ色を残したモノトーンに仕上げた。ライトの構成は左から乳白アクリル越しに100x Sを2灯。Cut 01とほぼ同位置からミニズームで文字盤に光を入れ、ガラス面には60cmのPT 2cと30cmのPT 1c。腕の下からさらにPT 1cをあてている。
十数年ぐらい前までは、デーライトタイプの定常光と言えばHMIライトが定番だったが、高熱を発し、またUV光も含まれるHMIライトでは、人物近くにライトを設置することが不可能だった。LEDならば近い位置でより繊細なライトコントロールができる。
チューブライトのPTは、円筒半分が覆われていて、発光面のセンターが明るく側面がやや暗い。向ける面によって、シャープなハイライトにもグラデーションにもなる。
スマホやタブレットのアプリを使いワイヤレスで一括管理。カメラ位置からセット全体を見ながら光の状態を調整すれば、それが即、仕上がりと同じ。定常光撮影の最大の利点だ。
Cut 03:ムービー撮影
定常光のためスチル撮影からすぐに動画撮影に移行できる。Cut 03はCut 02と同じライト構成で撮影した動画から、コマを切り出したもの。時計上のPTをスライドしてハイライトを上下に動かしたり、腕の角度を若干変えるだけでハイライトがきらめく。
amaran 60x S、100x S、200x S 解説 黒川隆広
AputureのLEDライト「Sシリーズ」は60Wの「60x S」、100Wの「100x S」、200Wの「200x S」の3機種。最大の特徴は演色性の向上。SSI(スペクトル類似性指数)という評価値で太陽光を100として90近い数値となっている。x Sシリーズはバイカラー仕様で2,700K〜6,500Kまでの色温度調整が可能だ。
標準装備の鏡面リフレクターでは光に芯が出るが、乳白アクリルでディフューズする小物のブツ撮影には、むしろその方がグラデーションを作れるので良いだろう。光の芯を嫌うなら、梨地リフレクターに変更すると解決される。
【出力による色の変化】 出力(明るさ)はパーセントで表示される。カメラの絞りをf16に固定、シャッター速度を変えて撮影したが、広い調光範囲の中で色の差はほとんどない。上げ下げできる安定した50%を基準で撮影するのがよいだろう。
【出力と絞り(段数)】 上と同様に絞り固定で撮影。シャッター速度の変化を見ると1%と100%付近でやや誤差があるものの、出力(%)が倍になると、ほぼ1絞り(1段)分の変化があることがわかる。1〜100%で6段強の調光が可能ということだ。
【リフレクターを外すとシャープな影ができる】 Aputureはボーエンズマウントを採用しているので、リフレクターなど同規格のアクセサリーを装着できる。上の写真は標準の鏡面リフレクターとリフレクターを外した状態の比較。リフレクター有りは影の周辺が滲み、通常のストロボとほぼ変わらない光質。リフレクターを外すと太陽光直射のようなシャープな影ができる。
【スチルライフ撮影にはバーンドアキットがお薦め】 アクセサリーの中でもお薦めなのが、Aputure純正のグリッド、フィルターホルダーがセットになったバーンドア。グリッド、フィルターホルダーはマグネットで装着する仕組み。バーンドアはスチル撮影の現場では馴染みがなく、これまでは他に回る光をフラッグでカットしたり、ブラックアルミで光を狭めたりしていたが、これは便利なアイテムだと感じた。
蒲生ヒロマサ
1986年 (株)ハヤサキスタジオ入社。1989年(株)アーバンパブリシティ(現amana)入社。2001年 (株)アン設立。人物、商品、料理、飲料、それぞれの魅力に合わせたスタジオライティングを得意とする。
黒川隆広
amanaにて30年間、商品撮影を中心に活動。2016年退社後、アライアンス社員として連携。現在は大手ECサイトの商品撮影講座開催、写真の学校特別講師他、セミナー、イベントで写真の学びの場を提供。個別レッスンも開催。
株式会社 アン
今回、撮影協力をお願いした蒲生ヒロマサ氏が代表を務める「UN」(アン:UN.inc)は、2001年4月設立。広告を中心とするビジュアル制作会社として培った技術と経験を活かし、現在、プロデューサー3名、フォトグラファー8名、レタッチャー2名の体制。 「欲しくなる、触れたくなる、心に響く写真映像をめざす」をモットーに、商品から人物まで静止画・動画の撮影を行なっている。
東京都港区芝大門2-11-4
URL www.un-photo.com
Mail contactsuru@un-photo.com
※この記事はコマーシャル・フォト2023年5月号から転載しています。
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