製品レビュー

SIGMA & FUJI FILM コンパクトで高画質シネレンズで広がる映像表現 ②

シグマと富士フイルムから50万円前後のシネレンズが発売された。購入可能な価格のレンズの登場で映像の表現はどう変わるのか。今回は、既に映像作品として発表されている、シグマのシネレンズを使用した事例について検証する。

【作例】シグマ/SIGMA 18-35mm T2 SIGMA 50-100mm T2

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WEAVER 「Shake! Shake!」


dir/camera:林響太朗(DRAWING AND MANUAL) CL:A-Sketch 制作:DRAWING AND MANUAL 監督+撮影+編集:林響太朗 撮影:渡邊哲 照明:土井立庭 INTERIOR Crd:岡本真由美 HM:宮本由樹・sara・坂東佳奈 ST:甲斐修平 Pr:飯野圭子

映像制作会社DRAWING AND MANUALではシグマのシネレンズ(18-35mm T2、50-100mm T2)を2本購入。キヤノンEOS C300 Mark II、ソニーα7S II、ソニーα7R II、ソニーFS7など、様々な機材で映像作品を制作している。上の映像はロックバンド・WEAVERのMV。路地や屋上、繁華街など街を歩く3人の女の子とメンバーの演奏シーンが混在している。FS7 3台で撮影。演奏シーンは50-100mm T2を三脚でフィックス撮影にして、18-35mm T2は手持ちで寄りを撮影している。



s-ken 「酔っ払いたちが歌い出し、狼どもが口笛を吹く」


dir:菱川勢一(DRAWING AND MANUAL) CL:World apart ltd. 制作:DRAWING AND MANUAL 監督:菱川勢一 Assistant Dir+撮影+編集:辻本和夫 撮影:渡邊晢 Pr:飯野圭子・河村瑞英

70年代からTOKYOストリートシーンの先駆者、s-kenが夜のニューヨークで25年ぶりに歌い、踊る。2本のレンズをソニーα7S IIと同α7R IIにつけた2カメ体制。すべて手持ちで歌うアーティストを追いかけながら撮影。ハーレムのロケでは地元の人がどんどん勝手にカメラの前に入ってきたが、そのまま回している。夜のニューヨーク、黒い衣装、モノクロ撮影という厳しい条件での撮影だったが、ノイズもなくディテールも表現されていた。菱川氏のお気に入りは冒頭の信号のショット。



KEN THE 390, KOHEI JAPAN, DEJI, K DUB SHINE
「The SAGA Continues...」


dir/camera:渡邊 哲(DRAWING AND MANUAL) 制作:DRAWING AND MANUAL 監督+撮影+編集:渡邊哲 撮影:林響太朗 Technical engineering team:radix inc. HM:坂東佳奈 (MILL) Hair(wig):細野一郎 ST:コダン PM:飯野圭子

明治維新150年に向けて、幕末維新期の佐賀藩の歴史をテーマにした楽曲を使ったPR動画。4人の歴史好きラッパーと武田真治扮する侍とのコラボレーションが繰り広げられる。夜のシーンは22時から翌3時まで佐賀で撮影。1万ルーメンのプロジェクターの光だけで収録している。EOS C300 Mark II 2台にシグマシネレンズをそれぞれつけて手持ちとショルダーリングで同時撮影。夜中で曲をかけながら演技ができなかったので、無音で撮影した。同じカメラで設定も揃えて寄りと引きを撮ったことで編集も短くて済んだ。



INTERVIEW  菱川勢一(DRAWING AND MANUAL代表)

img_products_review_sigma02_02.jpg s-ken 「酔っ払いたちが歌い出し、狼どもが口笛を吹く」撮影時の様子。右端が菱川氏。©ADC, Inc.

映画、CM、MV、ショートフィルム、大河ドラマのタイトルバック、プロジェクションマッピングなど、様々な映像を制作するDRAWING AND MANUALでは、今年シグマのズームレンズを2本(18-35mm T2、50-100mm T2)を導入。ディレクターで代表の菱川勢一さんに聞いた。

使い勝手のいいシネズームレンズの登場を待ち望んでいた

───今回、シネレンズを購入するまでの経緯を教えてください。

会社で使いたいという機材があったら誰でも投稿できるスレッドがあって、「これ欲しい」と書き込めるんですよ。まあ遠まわしに僕にアピールしてるんですけど(笑)。それ見てこれは確かに必要だなと思ったら即導入するんです。

ただ、シグマのシネレンズに関しては僕の方から「買う」と言いました。若いディレクターはアナモフィックなどオールドレンズの方が新鮮に感じるみたいなんですけど、僕らの世代はオールドレンズからスタートしてさんざん経験してきているので、むしろ最新のシグマの綺麗でしゃっきり映るレンズの方が楽しいですね。「こんなの今まで撮れなかったよ」みたいな新鮮な感覚があります。

もともとシネレンズはカールツァイスのコンパクトプライムが会社にあります。ただし、実際に現場にコンパクトプライムをワンセット持って行っても、ロケだとだんだん時間が押してくるのでズームで撮っちゃうことが多いんですね。

今までは一眼用のズームレンズを何かと使い回してきました。そこで、もっと高額なズームレンズを買おうかとも思っていたんですけど、それを買うなら,その予算でもっといろんなレンズを買えた方がいいのになと考えていたところでした。そういう意味でもシグマのシネレンズの発売はタイミングが良かったですね。シグマのレンズが好きでしたし、使い勝手のいいズームレンズが出るとアナウンスされた段階で「これは買おう」と思いました。値段もびっくりするほど高額ではなかったので、一気に2本買いました。そのうちサイトにいくつか作例が出始めて、ナイトショットでもこんなに撮れるんだとわかって、早く使ってみたいなと。

───実際に使ってみてどのような印象でしたか。

最初はニューヨークのs-kenのMVで使いました。シビアなフォーカスはない仕事でしたけど、明るいというのはいいですね。ナイトショットは後処理でどうこうしようとしても必ずわかります。撮っている時の粒子と後で増感して粒子が出るのとではまるで質が違いますから。編集時に黒締めていますけど、もともと黒つぶれせずレンジが撮れているから編集の時に変な調整をしなくていい。綺麗にちゃんと撮れるのが一番です。解像度の良さみたいなものをレンズの特性の演出みたいにバキッと見せてしまう。そういう変な無理がない気がしました。

───ほかに要望はありますか。

レンズ自体の不満はないですね。重いという者もいますけど、その重さがちょうどいい者もいる。レンズメーカーとしてちゃんと考えられている感じがあります。あとは35-50mmぐらいをカバーできるレンズがあるといいなと思っています。ゆくゆくは単玉のシネレンズシリーズも揃えたいですね。

最近NDを筆頭にフィルターワークを使うようになっているんですよ。でもシュナイダーやティッフェンのフィルターが手に入らない。シグマがフィルターも充実してくれると痒いところに手が届くなという感じがします。

SIGMA CINE LENSで座談会

今回紹介した3本の映像で監督・撮影・編集を担当した若手スタッフ(林 響太朗・渡邊 哲・辻本和夫)にシグマのシネレンズを使ってみた印象を語ってもらった。

渡邊 今回掲載した映像3本とも撮影に関わりましたが、全て手持ちだったので重かったですね。長時間の撮影だと厳しい。

辻本 ただし重い分、安定感がある。手持ちなのでフォーカス操作は難しかったですけど。

 重くても綺麗に撮れる方がいいです。実際に使ってみるとメモリが蓄光なのがいいんですよ。デザインがかっこいいだけではないんだなとわかったというか。

辻本 今回のように暗い中で撮影することが多い現場では役に立ちます。一工程違うだけでも大きいですよ。

 実際に使ってみると被写界深度が浅くて明るいのが嬉しいです。

渡邊 暗いところで撮ることが多かったんですけど、それでも明るいなという印象があります。

 ズームレンズって伸ばしていくとどうしても暗くなるんですけど、シグマのシネレンズは全域T2なので設定を変えずに撮れるのがすごいなと思います。今まで暗い場所で寄りと引きが撮れない時にはレンズを変えるしかありませんでした。特に50-100mmは奥にフォーカスが合って使いやすいですね。今までシグマのレンズはコントラストの強い印象があったんですけど、肉眼で見ているよりもライトに撮れる瞬間があって、それが編集のしやすさにもつながっている気がします。



※この記事はコマーシャル・フォト2017年6月号から転載しています。


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