製品レビュー

【解析特集】世界最小のコードレスオフカメラ・フラッシュ Profoto B10 AirTTL

解説・撮影:上田晃司 / モデル:高取祐司

昨年11月1日にProfotoから発売されたバッテリータイプのモノブロックストロボ「B10 AirTTL」。小型軽量をコンセプトに設計された本機は、全長175mm、重さ1.5kgとコンパクトながらも最大出力250Wsを実現。クリップオンタイプのスタジオライト「A1 AirTTL」とロケ撮影に特化したモノブロックストロボ「B1X 500 AirTTL」の間を埋める製品となっている。本機の性能をスペック検証と実写テストで解析していく。

Profotoのストロボラインナップが拡張

ストロボメーカーの中でも攻めた製品を出し続けているスウェーデンの老舗ストロボメーカーProfotoから、2018年11月1日に発売された「B10 AirTTL」(以下B10)。Profotoは、ここ数年バッテリー搭載型ストロボに力を入れており、「B1X」、「A1」、「B2」などあらゆるニーズに合わせて商品を開発してきた。個人で所有しているユーザーもとても多い印象だ。筆者も多くのProfoto製品を使用しているユーザーであり、その使いやすさや性能は、さすがだと感じている。

今回は「B10」を使用する機会を得たので、本機の魅力を細かくインプレッションしよう。

■Profoto B10 AirTTL

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Profoto B10 AirTTLの主なスペック

最大出力:250Ws(10f-stop)
最高発光回数:400回
LEDモデリングライト色温度:3,000~6,500K(±500K)
LEDモデリングライト演色性:90~96
LEDモデリングライト最大出力:最高2,500ルーメン
LEDモデリングライト最大利用時間:最長75分
バッテリー充電時間:1.5時間
寸法:175×110×100mm(スタンドアダプター含む)
重量:1.5kg(バッテリー、スタンドアダプター含む)
価格:〈1灯キット〉195,000円(税別) / 〈2灯キット〉390,000円(税別)


img_products_profoto_b10air_rev_02.jpg 最大の特徴は、全長175mm、重さ1.5kgというコンパクトさ。また、「A1 AirTTL」では互換しなかったProfotoの豊富なライトシェーピングツールにも対応する。背面操作パネルは、これまで同様シンプルで直感的な操作を可能としている。


小型軽量でシンプルな操作性Bluetoothにも対応

まずは、「B10」の外観を見てみたいと思う。初めて「B10」を手にした人は、その小型軽量さに驚くことだろう。サイズは幅110mm、長さ175mm、高さ100mmで500mlのペットボトルよりも一回り大きいくらいだ。カメラバックなどにも入るので、ロケ撮影や取材の多いフォトグラファーにはとても重宝されるはず。重さはバッテリーとスタンドアダプターを入れて1.5kgだ。バッテリーは新型の物で、驚くほど小さく軽い。「B1X」と比べると重さは約半分になっている。「B1X」は3kgだったため、大きめのスタンドを使用することが多いが、「B 10」であれば小さなスタンドでも全く問題ない。マンフロットのナノスタンドを始め、最近増えてきたカーボン製のライトスタンドとも相性が良い印象だ。

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小型軽量による機動性
今までのモノブロックストロボからすると革新的にコンパクト。カメラリュックにも入り、1.5kgなので小さめのスタンドに載せることが可能だ。

デザインはProfotoらしくシンプルだが、さらに洗練された印象だ。ボタンやダイヤルなどの操作系は今までとほとんど同じだが、メニューの構成は新しくなっている。メニューユーザーインターフェースが進化し、より直感的な操作が可能。「A1」などではアイコンを選んで設定をしていたが、「B10」ではメニューがまとまっており、設定項目を見つけやすくなった。説明書を見なくても操作できる点は、さすが操作性にこだわったProfoto製品だ。

さらに革新的だったのはBluetoothを搭載した点だ。それによりProfotoのアプリと連携が可能になった。iPhone対応のアプリを使用することで、遠隔で出力の調整やモデリングライトの調整が可能。また、設定した出力値もリアルタイムで確認できるようになった。今までは、「Air Remote TTL」を使って遠隔で出力を調整できたが、設定した数値がリモートで確認できないため少し不便だった。このアプリでは最大で3灯の「B10」を同時にコントロール可能。これにより多灯ライティング時も楽に設定が可能だ。

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専用アプリを使用した遠隔操作
Profotoアプリを使用するとリアルタイムでストロボに出力やモデリングライトの調光や色温度設定が行なえる。最大で3灯の「B10」を接続できる。

また、ファームウェアのアップデートもBluetooth経由で行なえる。「B10」との接続も簡単でiPhoneのBluetoothをオンにして、「B10」側のBluetoothをオンにする。後はProfotoアプリを立ち上げて接続したい「B10」を選択するだけだ。驚くほど簡単に接続と操作が行なえるため、余計なことにストレスを感じずに撮影できるだろう。


最大出力250Wsで高演色のLEDも搭載

次はスペックを見てみよう。「B10」の最大出力は250Wsとなっている。出力の調整は10段分に対応、0.1段毎に調整が可能だ。リサイクリングタイムは0.05〜2秒となっている。最大出力でも2秒のためストレスはなく、テンポ良く撮影できるだろう。出力の安定は0.2段ととても安定している。「B2」に近いスペックではあるが、完全コードレスのため取り回しのよさは圧倒的だと感じられる。もちろん現在ProfotoのトレンドになっているTTLやハイスピードシンクロにも対応している。

img_products_profoto_b10air_rev_06.jpg 完全ワイヤレスのメリット
「B10」は完全ワイヤレスなので、狭い場所や人が多い場所などでもコードがないため安全に撮影できる。小型軽量なので、手持ちで撮影することも可能なのが嬉しい。

今回の大幅な進化といえるのが、モデリングライトだろう。実はLEDに高演色性能のLEDを採用している。最大出力は2,500ルーメンと非常に明るく、モデリングだけではなく動画撮影用のライトや撮影のメインライトとしても使用できる。筆者がセコニック「C-700」を使って演色評価数を測ったところ、Ra94-97.5くらいだった。被写体の発色も良く、実用に問題ない光源と言えるだろう。また、色温度の調整も、3,000~6,500K(±500K)の間で調整が行なえる。モデリングライトの光量も10~100%で微調整できるので本格的に使えるだろう。モデリングの色温度や光量は本体のダイヤルからも調整できる上、Profotoアプリからも行なえるのでとても操作しやすい。

バッテリーは新型を採用。手の平サイズのバッテリーは軽量ながら最大で400回のフル発光、または75分のモデリングライトの点灯が可能とのこと。充電は90分以下で完了する。細かな部分ではバッテリーの残量表示が5段階になっており、本体背面液晶やProfotoアプリ上でも残量が確認できる。

さらに注目の機能が、充電しながら撮影ができる点だろう。「B1X」などモノブロック系は充電しながら撮影はできなかったが、「B10」ではそれが可能になった。これによりワイヤレスでは無くなるが、長時間の現場や、モデリングライトを多用する現場などでは安心感が増すはずだ。充電器も良く考えられており、ライトスタンドに取り付けられるようになっている。「B10」は細かな所まで配慮されている印象だ。

img_products_profoto_b10air_rev_05.jpg 充電しながらの撮影
バッテリーの外側には充電用の穴が空いている。そこに電源を繋ぐことで撮影しながら充電ができる。長時間の撮影やモデリングを点灯させながらの撮影ではとても安心だ。


実写での検証でも申し分ない性能を発揮

最後に実写テストを行なう。まず、筆者の得意な日中シンクロ撮影を事務所の屋上で行なった。狭い場所だったが、スタンド1本に「B10」1台を付けただけのシンプルな撮影。背景は逆光だったが、ハイスピードシンクロにより思い通りの明るさに調整できた。250Wsでは、さすがに全身撮影は辛いが、ウエストアップくらいのシーンであれば1灯でハイスピードシンクロが可能だ。全身であれば2灯あると安心だろう。直当てにも関わらず、光の質が良いのもProfotoらしい。光にムラがなくナチュラルだ。硬い光ながらグラデーションが美しい。テンポ良く撮影しても、光量、色温度が安定しており、非常に使いやすい。

img_products_profoto_b10air_rev_08.jpg ハイスピートドシンクロの性能
ハイスピードシンクロで背景を少し落として撮影してみた。シャッター速度1/3200秒で撮影することで、逆光のシーンでもいい具合に背景を落とすことができた。

また、「B10」はProfotoの魅力でもある豊富なライトシェービングツールに対応している。光の質を変化させて撮影できるのもProfotoの魅力だ。今回は筆者の好きな「OCF ソフトボックス オクタ型(八角形のソフトボックス)」を使って撮影。夕日をバックに撮影したが、同調速度内であればハイスピードシンクロ時よりも、光が柔らかく光量も充分に確保できた。

img_products_profoto_b10air_rev_09.jpg ライトシェービングツールとの組み合わせ
「OCF ソフトボックス オクタ型」を使い、夕日バックで撮影。十分なパワーがあるため、OCFと組み合わせても全く問題ない。光もコントロールしやすく綺麗だ。

また、他のProfoto製品との相性も良い。筆者の愛用している「B2」と組み合わせて多灯ライティングで撮影してみたたが、「Air Remote TTL」を両方に使うことで問題なく使用できた。すでにProfoto製品を使っているユーザーは「B10」を手に入れても違和感なく使えるだろう。

img_products_profoto_b10air_rev_10.jpg Profoto他製品との多灯ライティング
「Air Remote TTL」を使えば「B10」と「B2」などProfoto製品を自由に組み合わせることができる。作例は2灯ライティングで、トップは「B2」、メインは「B10」にしている。

モデリングライトはメイン光としても使える。光量が2,500ルーメンと明るいためトランスルーセントの傘を活用し、柔らかい光を作れた。演色性が非常に高いため、色鮮やかでナチュラルな写真を撮影できる。色温度も微調整が行なえるため、画作りも自由自在。 

img_products_profoto_b10air_rev_07.jpg 高演色性LEDの性能
モデリングライトは高演色性でRa値はRa97前後。色の発色が良く濁りのない写真や映像を撮影できる。作例はトランスルーセントの傘を使いLEDだけで撮影している。

ストロボの性能はもちろんのこと、モデリングの性能も最高レベルのため動画撮影に使えるのもフォトグラファーにとってはありがたい。機材もミラーレス機が増えてきている現在、ストロボも小さく出来るようになったことで移動が楽になり、撮影できる可能性も広がっていくに違いない。

上田晃司(うえだ・こうじ)
米国サンフランシスコに留学し、写真と映像を学ぶ。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファーとして活動開始。現在は雑誌、広告を中心に活動。ライフワークとして世界中のドラマチックなシーンを撮影。写真教室の講師や講演、書籍の執筆活動も行なっている。

※この記事はコマーシャル・フォト2019年2月号から転載しています。


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