製品レビュー

中判サイズのイメージセンサーを搭載したハイエンドミラーレスの実力を検証 FUJIFILM GFX 50S

解説・撮影:三井公一

富士フイルム初の中判ミラーレスカメラ「GFX 50S」が、2月28日に発売された。中判サイズの撮像素子によるアドバンテージを存分に発揮し、ミラーレス構造による小型軽量化も実現したハイエンドなカメラとなっている。その実力を検証してみた。

img_products_review05_01.jpgFUJIFILM GFX 50S

  • 有効画素数:約5140万画素
  • 記録メディア:SD(~2GB)・SDHC(~32GB)・SDXCメモリーカード(~256GB) UHS-I/UHS-Ⅱ対応
  • レンズマウント:FUJIFILM Gマウント
  • ISO感度:〈標準出力感度〉ISO100~12800(1/3ステップ)
    〈拡張モード〉ISO50・25600・51200・102400
  • 測光方式:TTL256分割測光
  • 露出補正:-5.0EV~+5.0EV・1/3EVステップ
  • シャッター形式:電磁制御式縦走りフォーカルプレーンシャッター
  • シャッター速度:4秒~1/4000秒(メカニカルシャッター・Pモード時)・バルブ(最長60分)
  • フラッシュ同調速度:1/125秒以下
  • 連写:約3.0コマ/秒
  • 液晶モニター:3.2型タッチパネル式3方向チルトTFTカラー
  • ファインダー:0.5型有機ELファインダー・約369万ドット(視野率100%)
  • 動画:〈FULL HD(1920×1080)〉29.97p/25p/24p/23.98p(36Mbps)
  • 〈HD(1280×720)〉29.97p/25p/24p/23.98p(18Mbps)
  • 外寸:147.5×94.2×91.4mm
  • 質量:約920g(EVF、バッテリー、メモリーカードを含む)
img_products_review05_02.jpg 液晶モニターは、3.2インチ、約236万ドット、視野率100%のタッチパネルだ。上90°、下45°、右60°に可動するチルト式。
img_products_review05_03.jpg 着脱可能なEVFと標準レンズ「GF63mmF2.8 R WR」を装着した状態。この状態で質量約1325gとなる。

ハイスペックな性能と驚きの軽量ボディ

ついに登場した富士フイルムの中判ミラーレス機「GFX 50S」。メーカーにはAPS-C機の「X-T2」や「X-Pro2」を使用するユーザーから「フルサイズ機は出ないのか?」という要望が多く寄せられていたそうだが、富士フイルムからの回答はフルサイズフォーマットを飛び越してのミディアムフォーマット機であった。

「GFX 50S」は、ミラーレス構造を採用することでボディの大幅な小型軽量化を図ると同時に、ミラーショックによる微細なブレからの解放を目指した。手にするとその収まりの良さに驚く。ニコンやキヤノンのフルサイズフォーマットフラッグシップ機を使っているユーザーならば、すんなりと手に馴染み「軽い!」とさえ感じてしまうほどである。ボディサイズは幅147.5mm×高さ94.2mm×奥行き91.4mm。バッテリー、メモリーカードを含む本体重量は約825g。付属のEVF装着時は約920gと手軽に携行できるサイズ感で、手持ちでの撮影も問題ないレベルだ。マグネシウム合金を採用したボディは本体に58点のシーリングを施し、防塵防滴かつ耐低温構造になっているのが嬉しいところ。

注目のセンサーは有効約5140万画素。35mmフルサイズフォーマットの約1.7倍となる43.8×32.9mmという大きさだ。センサーは富士フイルム独自の「X-Trans CMOS III」ではなく一般的なベイヤー配列となる。中判フォーマットで約5140万画素ということで、1ピクセルあたりの受光量が同解像度の35mmフルサイズフォーマットより大きくなり、階調や解像感、感度やボケ味の点で大きなアドバンテージとなっている。

イメージセンサー img_products_review05_04.jpgイメージセンサーは43.8×32.9mmの「FUJIFILM G Format イメージセンサー」。有効画素数約5140万の大型CMOSセンサーとなる。35mmフルサイズフォーマットの約1.7倍のサイズとなり、豊かな階調と鋭い解像力を発揮。APS-C機の「X-T2」や「X-Pro2」とは異なり、「X-Trans CMOS IIIセンサー」ではないが、定評のある「フィルムシミュレーション」などが可能になっている。

記録フォーマットはRAW(圧縮/非圧縮)とJPEG(圧縮比3種類)で、4:3、5:4、7:6、1:1、3:2、16:9、65:24のアスペクト比が選択可能。ISO感度はISO100~12800で、拡張設定によってISO50、25600、51200、102400まで記録できる。またISO感度AUTOも設定可能で任意の露出にあわせて感度可変による露出コントロールが行なえる。

シャッターはフォーカルプレーン方式を採用。フラッシュ同調速度は1/125秒以下となる。最高1/4000秒が設定可能なほか、電子シャッターによって1/16000秒を使用できるので、晴天時での絞りを開けての撮影が容易になっている。

連写は約3コマ/秒で、連続記録枚数はJPEG無制限、可逆圧縮RAW13枚、非圧縮RAW8枚という仕様。メディアはSD/SDHC/SDXCカードで、デュアルカードスロットを備える。両スロットともUHS-IIに対応し、JPEG、RAW、ムービーの振り分け保存も可能だ。

Xシリーズユーザーには違和感のない操作感

富士フイルムの「X-T2」や「X-Pro2」などを使ったことのあるフォトグラファーなら、設定などのメニュー体系が同様なので何の違和感もなく使い始めることができるだろう。

まずシャッターボタンと同軸に設けられた電源スイッチをオンにしてEVFをのぞくと、369万ドット、視野率100%を誇るファインダーの広大さと見やすさに誰もが驚くはず。その広い画面一杯にオートフォーカスエリアが敷き詰められている様は壮観だ。最大425点の測距点は液晶モニター横に設けられたフォーカスレバーで縦横斜めと8方向に自在に選択ができ、ストレスのないフォーカシングが可能である。

EVF img_products_review05_05.jpgファインダーは、EVF(電子ビューファインダー)だ。視野率100%、369万ドットの着脱式EVFを標準装備する。倍率0.85倍となるがメガネをかけているとやや四隅が確認しにくい印象を受けた。別売りの「EVFチルトアダプター EVF-TL1」を装着すると、縦方向と横方向にスイングすることが可能になる。
フォーカス機能
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オートフォーカスエリアの測距点は、最大425点。TTLコントラストAFによるシングルポイント・ゾーン・ワイド/トラッキングを選択可能。フォーカスエリアのサイズは、6種類用意されている。液晶モニター横に設けられたフォーカスレバーは、スティック操作で縦、横、斜めの8方向に移動させることができる。

またリアコマンドダイヤルをワンプッシュすると、測距点を拡大表示ができ、さらにダイヤルを回すとより大きくフォーカスを確認することができるので、スピーディーな撮影が可能である。これはライブビュー時にも同様で、EVF非装着時でも厳密なフォーカシングができる。コントラストAFながら動作はなかなか軽快で、中判カメラとは思えない精度と快適さで撮影が可能だった。

顔検出や瞳AF機能も搭載しているのでポートレイトは楽に撮影できそうだ。なお瞳AFが左右のどちらの目を優先するかも設定できる。カメラの細かい設定は液晶モニターで行なうが(EVFでも確認できる)、撮影モードや露出の設定はアナログなダイヤルで行なう。


液晶モニター img_products_review05_08.jpg液晶モニターは3.2インチ、約236万ドットのタッチパネルで、上90°、下45°、右60°に可動する3方向チルト式となっている。スマートフォンのように指先での操作ができ、AFエリア選択やタッチAF、再生時のコマ送りや拡大縮小などを直感的に行なうことが可能だ。

ボディ正面にあるシャッタースピードダイヤルと感度ダイヤルは大型で視認性も高く指がかりもよく、それぞれロックがダイヤル中央部に設けられているので不意に動いてしまうことがない。シャッターダイヤルは1段ごとの表記になっているが、リアコマンドダイヤルで1/3段ごとの設定もできる。各種設定はボディ正面のサブ液晶モニターでも確認可能だ。サブ液晶モニター照明ボタンを押すことにより点灯されるので、夜間や暗いスタジオ、劇場などアナログダイヤルで設定しづらいシチュエーションでも確実な設定を行なえる。

富士フイルムの意気込みを感じさせるカメラだった

「GFX 50S」は35mmフルサイズフォーマットフラッグシップ機とさほど変わらないフィーリングで、中判フォーマットを文字通り振り回すことができるのが新鮮だ。写りも伸びやかな描写と薄いピント面を味わえるし、富士フイルムが信条としている「撮って出しJPEGで使えるカメラ」を実現している。

同社の定評あるフィルムシミュレーションも搭載。「PROVIA」、「VELVIA」、「ASTIA」、「CLASSIC CHROME」、「PRO Neg.Hi」、「PRO Neg.Std」、「ACROS」、「MONO CHROME」、「SEPIA」の色再現と階調表現を簡単に演出することができる。これらは「フィルムシミュレーションブラケティング」によって3種類の同時記録が可能。他にも「AEブラケティング」、「ダイナミックレンジブラケティング」、「ISOブラケティング」、「ホワイトバランスブラケティング」に対応している。

ブラケティング機能 img_products_review05_09.jpg1回のシャッターで異なる設定の画像を複数記録できるブラケティング機能を搭載。「AE」、「フィルムシミュレーション」、「ダイナミックレンジ」、「ISO」、「ホワイトバランス」の5種類を選択できる。また、JPEGだけではなく、RAWでの記録にも対応している。

またフィルム調の粒状感を出す「グレインエフェクト」や、彩度が高く階調を表現しづらい部分に深みのある効果を出す「カラークロームエフェクト」など、フィルム時代から培った色作りのノウハウが惜しみなく投入されている。

レンズは「GF63mmF2.8 R WR」を使用。ナチュラルでクセのない描写でオールマイティーに使える印象だ。前群繰り出し方式のためフォーカス時に鏡筒が繰り出すが、オートフォーカスの精度とスピードは信頼できるものであった。重量はわずか405gながら、防塵防滴でマイナス10度までの耐低温構造を有するので過酷な条件下でのロケでも安心だ。「GFX 50S」は発売と同時にレンズ3本をラインナップし、1年以内にさらに3本のレンズを追加投入するとのこと。

システムとしてHマウントレンズを装着できる「H MOUNT ADAPTER G」や、4×5ビューカメラを使用するための「VIEW CAMERA ADAPTER G」を用意するなど、コマーシャル市場に再度チャレンジする姿勢が素晴らしい。テザー撮影は別売りの「Tether Shooting Plug-in PRO for Adobe Photoshop Lightroom」などが必要になるが、簡単なワイヤレス撮影ならば、スマートフォンやタブレットに「FUJIFILM Camera Remote」を導入することで可能。

Gマウント専用レンズ img_products_review05_10.jpg 「GFX 50S」に対応する「フジノンGFレンズ」は、ボディと同時に3本リリースされた。標準レンズの「GF63mm F2.8 R WR」、標準ズームレンズの「GF32-64mm F4 R LM WR」、マクロレンズの「GF120mm F4 R LM OIS WR Macro」だ。2017年6月には、中望遠レンズの「GF110mm F2 R LM WR」、超広角レンズの「GF23mm F4 R LM WR」が追加される予定だ。また、「GF45mm F2.8 R WR」も2017年中の発売を目指しているという。どれも防塵防滴仕様となる。

富士フイルムの色と描写を中判フォーマットで味わえる「GFX 50S」、スタジオやフィールドで目にする日も近そうだ。

img_products_review05_11.jpg レンズ:GF63mmF2.8 R WR f8 1/160s
ハンドヘルドで圧倒的な解像感と精細感を撮影できるのが「GFX 50S」だ。工場の鉄扉をマルチアスペクトを活かして16:9で撮影したが、錆の浮き出たリアリティ溢れる描写が中判ならでは。等倍で確認するとため息が洩れるほどである。 ※画像をクリックすると別ウィンドウで元データを表示


img_products_review05_12.jpg レンズ:GF63mmF2.8 R WR f2.8 1/200s
中判フォーマットの余裕のある描写と薄いピントを、大きく見やすいEVFと確実なオートフォーカスで撮影できるのは仕事上大きなアドバンテージとなる。松ぼっくり先端にピントを合わせたが、そこからシルキーにボケていく描写が実にいい。イヤな収差も少なく、レンズも開放から安心して使える。 ※画像をクリックすると別ウィンドウで元データを表示

三井公一 Koichi Mitsui

有限会社サスラウ代表。コマーシャルおよびネットメディアでの撮影を精力的にこなしている。シグマ公式サイトで「シグブラ」の連載や、ニコンブランドサイトの撮影、監修なども行う。またiPhoneでの撮影のパイオニアで写真集「iPhonegrapher」など著書も多い。
www.sasurau.com

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