2019年06月19日
コマーシャルフォトグラファーの間でもなにかと話題にのぼる、ソニーのフルサイズミラーレス一眼カメラ「α9」、「α7R III」、「α7 III」がメジャーアップグレードにより、さらなる進化を遂げた。瞳AF機能、フォーカス性能の向上を中心に、操作性能の快適化、新機能搭載という、惜し気もないアップデートの実力を、ファッションビューティ、スチルライフ撮影を通して検証してみた。
α9 Ver.5.00
α9+FE 85mm F1.4 GM 1/100sec F4.5 ISO100
Stylist:Azusa Koike(WiZ Ltd.) Hair & make-up:Daisuke Seki(WiZ Ltd.) Model:Cera(enve)
瞳を捉えると、モデルがうつむいても、目の前に手や、髪の毛、またはメガネなどの障害物があっても、ひたすら瞳をフォーカスし続ける「α9」の瞳AF。その瞳AF機能がVer.5.00へのアップデートにより、より一層粘り強くなった。モデルに動き続けてもらい、後方からブロアーで瞳に髪の毛がかかるような強めの風を送りながらも、AFの枠は瞳を追い続けてくれた。モデルの膝下まで入れての撮影のため、瞳の面積は画面内では非常に小さいにも関わらず、見事なまでの追従性能を発揮してくれた。
α9 Ver.5.00 瞳AF
また、アップデートによりMENUの撮影設定AF2に[顔 / 瞳AF設定]が配置されたので使い勝手が非常に向上している。前バージョンまでは、カスタムキーに割り振り、そのボタンを押しながらシャッターを切っていたが、Ver.5.00からは、シャッターボタンを半押しするだけで瞳AFが作動してくれるため、撮影により集中することが可能だ。
被写体との距離、模様、輝度などの空間情報を高速処理する最新の物体認識アルゴリズムが搭載されたため、AFの速度のみならず、精度も抜群に向上している。ストロボを使用した秒間5コマでの連続撮影で、1シークエンス30枚~50枚程度の撮影を行なったが、フォーカスが外れている(ガリピンではなく甘い程度)写真は1枚、2枚あるかないかのレベルであった。
一瞬の1コマを逃すことができない、プロのコマーシャルフォトの現場においては、心強い相棒となること間違い無いであろう。
[顔 / 瞳AF設定][右目 / 左目選択]機能の検証
右目にフォーカスを設定して撮影。今回のアップデートで新たに搭載された[右目 / 左目選択]機能。[右目]か[左目]を合わせたい目の方に選択しておくと、モデルの顔が動いても、目の前に花などが来ても、選択した目を優先的にフォーカスし続けてくれた。
切り替えのスピードも非常に速い。動いているモデルの撮影時に、奥の目にピントが合ってしまうこともあるが、この機能を使用するとそんな残念な状態も少なくなりそうだ。
[カスタムキー]設定で、AF-ONボタンや、AELボタンなどに割り当てておくと、モデルの動きに合わせ、スムーズに左右の目の切り替えができるので、重宝する機能のひとつである。
左右選択の切り替えは、各ボタンに割り当て可能。
α9 Ver.5.00 瞳AF[右目 / 左目選択]
リアルタイムトラッキングの追尾性能 使い勝手が向上したタッチパッド機能
狙いたい被写体にフォーカスを合わせ続けてくれる被写体追尾機能。[フォーカスエリア]の[トラッキング]で、モデルの持つ花にフォーカス枠を設定することで、花が動いても、カメラが動いても、花を追い続けてくれる。
また、[カスタムキー]に[押す間トラッキング]を割り当てておくと、合わせたいタイミングで被写体の追尾を初めてくれるので、より直感的にトラッキング機能を発動させることも可能だ。
モニターを指でなぞるだけで、合わせたいポイントにフォーカス枠を移動できる機能も新搭載された。こちらの機能を使用し、モデルの持つショールから、モデルの顔にフォーカスを移動、を何度か繰り返したが、[フレキシブルスポットS]に設定をしておくと、細かいショールの柄や、瞳などへもダイレクトに、よりスムーズにフォーカスを合わせることが可能だ。
手前の花にフォーカスを設定。
フォーカスが合わせた被写体を追い続ける。
モニター上のフォーカス枠をなぞるだけで移動が可能。
α9 Ver.5.00 リアルタイムトラッキング
その他操作性の向上
AF機能だけでなく、細かい操作なども向上している。セレクト時の効率化につながる5段階[レーティング]機能や、誤消去を防ぐ[プロテクト]機能も搭載された。再生[カスタムキー]登録で、それぞれC3ボタン、Fnボタンに割り振っておくと操作もスムーズだ。
モニター上部のマークで5段階のレーティングが可能。プロテクトするとカギマークがつく。
[フォーカスエリア]の、[トラッキング]は、AF-C設定時にセレクトすることができる。 [記録メディア自動切替]にも対応したため、容量オーバー時に、もう一方のスロットに自動的に記録先が切り替わるので、長時間の動画撮影時などでも安心して使用することが可能だ。
フォーカスエリアの設定でトラッキングをセレクト可能。
容量オーバー時に記録メディアが自動で切り替わる機能も追加。
Profotoとのマッチング
ストロボはProfoto「Pro10」と、「RFiソフトボックス」を使用。「α9」との相性もよく、瞳の潤い、メイクの色彩も素直に写し出してくれた。
モデルと距離が離れていても、瞳AFはしっかり作動してくれた。
α7R III Ver.3.00
α7RⅢ+FE 135mm F1.8 GM 1/100sec F1.8 ISO100
Stylist:Azusa Koike(WiZ Ltd.) Hair & make-up:Daisuke Seki(WiZ Ltd.) Costume coordination:MIYAO Model:Cera(enve)
有効約4240万画素数の、高画素機「α7R III」もリアルタイム瞳AFに対応した。高画素機でありながら、最高約10コマ/秒の高速撮影をなし得る。Ver.3.00へのアップデートにより、瞳へのフォーカス速度が向上し、より高速な連写撮影を活かすことが可能だ。
レンズは新製品の「FE 135mm F1.8 GM」を使用。ピントピーク時の破壊力と、色収差のないボケ味なども非常に美しく、開放F1.8でも積極的に使用できる。
Imaging Edge 1.4.00
α7RⅢ+FE 90mm F2.8 Macro G OSS 4.0sec F8.0 ISO100
Stylist:Toshiya Suzuki(BOOK.inc)
「α7 RⅢ」とPCをUSBケーブルで接続して撮影。
ソニー純正の画像アプリケーション「Imaging Edge」も着実に進化を遂げている。カメラとの接続も素早く、画像の閲覧、編集の速度も向上しており、実践で使用する機会も増えてきた。
「α7 RIII」を使用して、「Imaging Edge」を検証。4枚のRAW画像を合成するピクセルシフトマルチ撮影は、被写体の質感、存在感を一層浮き出させてくれるため、ブツ撮影では有効な機能だ。
「Remote」:微細なフォーカス調整が簡単に
「α7 RⅢ」とPCをUSBケーブルで接続して撮影。
「Viewer」:効率的な画像セレクト
サムネイル表示、プレビュー表示、比較表示の3つの表示形式で撮影画像の確認がしやすい。コレクションフォルダ機能も追加され、精度の高いセレクトが可能だ。
「Edit」:高精度なRaw現像調整が可能
「α7 RⅢ」の密度の高いデータ作成が可能だ。クリエイティブスタイルの変更や、調整前後を比較できるバージョンスタック機能は積極的に使いたい。
「Imaging Edge Mobile」
モバイル機器と接続できるアプリケーション。ライブで画像が確認できるため、PCやカメラが覗きづらい状況下で小道具の調整などが行ないやすい。
Imaging Edge 1.4.00
凸版印刷 TICビジュアルクリエイティブ部。1977年生まれ。2000年中央大学文学部卒業。コマーシャルフォトを中心に活動中。静止画のみならず、動画制作も手がける。日本広告写真家協会(APA)会員。
※この記事はコマーシャル・フォト2019年6月号から転載しています。
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