2017年12月13日
ソニーEマウント対応レンズの中で最高クラスの性能を持つG MASTERレンズ。7月に開放F2.8の広角ズームが発売されたことで、標準ズーム、望遠ズームと合わせてF2.8通しのズームレンズが揃った。高い解像力と美しいボケ味を実現した3本のズームレンズの性能に迫る。
いよいよ待望の大三元が揃ったG MASTERシリーズ
G MASTER(以下GM)シリーズもついにF2.8通しのズームレンズ3本が揃った。いわゆる大三元と呼ばれるレンジだ。近年、ソニーは後発だったEマウントレンズの拡充に力を入れ、軽く小さいF4のラインを揃えてきた。カールツァイスブランドということもあり小型で解像感は抜群。フルサイズのミラーレスはプロというよりもハイアマチュア層から受け入れられてきたこともあり、小型なのに良く写るという評判はこのF4カールツァイスがあったからだろう。
プロユーザーがソニーを使い始めたのはここ数年だが、F2.8の大三元は当然の要望。他社の後を追う形となっているが、後発であるが故のメリットはライバルを上回る性能を出せる点だ。3本のレンズは全て、この1、2年以内に発売されたもので、解像感と美しいボケという相反する性能を高次元で両立させている。
ソニーEマウント系は話題の「α9」で高速AF秒20コマ、そして高解像度の「α7R II」、高感度の「α7S II」とそれぞれ尖った性能のカメラを有す。それは、そのカメラの性能を最大限に活かせるレンズが必要になることを意味する。解像感を追求すれば大きく重くなるが、高速AFするには軽量なレンズの方が有利だ。このように相反する課題をクリアしたのか確かめるために「α9」を使用して検証した。
開放からの描写が素晴らしい絞れる広角レンズ
広角ズームレンズ
FE 16-35mm F2.8 GM対応撮像画面サイズ:35mmフルサイズ
焦点距離:16~35mm
レンズ構成:13群16枚/画角(35mm判換算):107゚~63゚
開放絞り:F2.8
最小絞り:F22
絞り羽根枚数:11枚円形絞り
最短撮影距離:0.28m
最大撮影倍率:0.19倍
フィルター径:82mm
寸法(最大径×長さ):88.5×121.6mm
質量:約680g
「FE 16-35mm F2.8 GM」で、モデル撮影をしてみたが、開放からの描写が素晴らしい。ボケがきれいで広角でボカした撮影ができる。その上100%拡大してみてもピントの合っている部分の解像感は開放で撮っているとは思えないほど。カポエィラの撮影では動き回るパフォーマーの顔をAFが追い続け、きっちりとピントを合わせてくれる。
モデル:腹筋王子KATSUO(カポエィラ・テンポ)
カポエィラのパフォーマンスを撮影した。激しい動きの中AFで、顔を追いかけての撮影ができる。
F4 1/200s ISO100 26mm
Profoto「B2」ストロボを使用
「α9」のようにAFが優れたカメラでも、その機能を100%活かすことができる。精度やスピードでは今までの開放F4のレンズとは次元が違う。これは体感できる差でそう感じられる。さらに「フォーカスホールドボタン」がGマスターには付いているので、これに慣れると他のレンズは使えなくなる。「α9」のAFが凄いといっても完璧ではない。ロストすることもあるし、他の対象を追いかけてしまうこともある。
そんな時に瞬時に他の方法でフォーカスさせることができるのがこの「フォーカスホールドボタン」だ。筆者はこれに「再押しAF/MFコントロール」を設定している。これによりAFとMFが押すごとに換えられる。設定はかなり広範囲なので使い方次第で自分に合った1本にできる。
F2.8 1/640s ISO100 35mm
この焦点距離のレンズだと、風景や建築にも使いたくなるが、驚いたのは商品撮影に使ったときだ。広角でパース感を強調したイメージカットにこのレンズを使ったが、最小絞りのF22まで絞ってもそれほどの回折現象が出なかった。ボケのきれいな明るいレンズだと絞って使えないことが多く、モデル用と物撮り用の2つのレンズが必要になるところなのだが、絞れる広角レンズとしても価値がある。
ほとんどのシチュエーションで活躍できる万能ズームレンズ
標準ズームレンズ
FE 24-70mm F2.8 GM対応撮像画面サイズ:35mmフルサイズ
焦点距離:24~70mm
レンズ構成:13群18枚
画角(35mm判換算):84゚~34゚
開放絞り:F2.8
最小絞り:F22
絞り羽根枚数:9枚円形絞り
最短撮影距離:0.38m
最大撮影倍率:0.24倍
フィルター径:82mm
寸法(最大径×長さ):87.6×136mm
質量:約886g
筆者が常用しているレンズがこの「FE24-70mm F2.8 GM」だ。それまでは単焦点レンズを良く使っていたが、このレンズを買ってからは、ほとんどこれ1本で仕事ができている。
開放F値2.8で撮っている。他社の同クラスレンズだと、開放で使うのをためらうときもあるが、このレンズではむしろ積極的に使っていきたいと思わせる。解像感もそうだが、ボケ味はズームとは思えない。
F2.8 1/640s ISO100 70mm
とにかく開放から使えるというのがうれしい。F2.8のレンズでも開放では柔すぎて使えないというレンズが結構ある。ポートレイトではむしろ柔い描写が好まれることも多いので、それで良いという人は多いが、それではポートレイト専用レンズになってしまうし、単焦点レンズを開放で撮った方がもっときれいだろう。やはりそこはF2.8から使えるズームレンズというだけでも存在価値があるのだ。
顔認識AFや、瞳AFを使っていると、このように瞬時に倒立されてもAFは顔にピントを追従してくれる。
Profoto「B2」ストロボを使用 F4 1/200s ISO100 34mm
ポートレイトでは85mm/1.8や55mm/1.8のレンズを良く使うが、時間のないタレントを撮る時など、短時間でアップも引きのカットも、縦位置も横位置も欲しいというオーダーをされたら、このズームレンズ一択だろう。そこでボケもきれいだったらいうことはない。そんな夢のようなレンズがこの「FE 24-70mm F2.8 GM」だ。ピントが合ったところの解像感は開放とは思えない。
デメリットといえば、大きさと重さが少し気になる。しかし、スペックを比較してみればわかるように他社の同クラスレンズとの差はそれほどではない。そう感じるのはボディがミラーレスで小型軽量だからなのだ。ボディが小さいのでレンズが異様に大きく感じるのはデメリットかもしれない。
美しいボケを出しつつ最速の連写にも対応可能な望遠レンズ
望遠ズームレンズ
FE 70-200mm F2.8 GM OSS対応撮像画面サイズ:35mmフルサイズ
焦点距離:70~200mm
レンズ構成:18群23枚
画角(35mm判換算):34゚~12゚30’
開放絞り:F2.8
最小絞り:F22
絞り羽根枚数:11枚円形絞り
最短撮影距離:0.96m
最大撮影倍率:0.25倍
フィルター径:77mm
寸法(最大径×長さ):88×200mm
質量:約1480g
70~200mmのF2.8ズームレンズは最もポピュラーな望遠レンズといえるだろう。スポーツや報道だと短いかもしれないが、一般的な雑誌、広告分野のフォトグラファーだと望遠レンズの比重が少ないのでこれ1本で済ますことが多い。最初に買う望遠ズームでもありながら、最も使用頻度が高い望遠という位置づけだ。
そんな背景もあって、このレンジは各社、数年ごとにリニューアルされる頻度が高く、しのぎを削っているレンズとなる。ソニーの発売は去年、筆者も何度か使ってみたことがある。「α9」が出たことによって、このレンズの価値は更に高まったといえるだろう。AFしながら最高20枚/秒の連続撮影が可能となる望遠レンズはこれを含めて数本だからだ。
テスト撮影として、AF-Cで毎秒20枚の連続撮影を試してみた。踊り続け、走り続けるモデルを追いかけるシチュエーションだ。なんの台本もリハーサルもない撮影で、そこから良いカットが撮れればいいという、セッションのような撮影だったが、結果はご覧の通り。いくら良い動きや表情をされても、そこにピントが合っていない写真は使えない。
バレエができる女優を撮影した。飛べるというので飛んでもらったカットだ。ピントを追いかけ続け、秒間20コマで撮影した。瞬間を切り取れる「α9」ならではの写真となった。
F2.8 1/3200s ISO1000 74mm
踊りながら顔のアップを狙ってみた。こんな状況でも瞳AFが効く。髪の毛の一本一本までシャープなのに背景はこのボケ。信じられない。
F2.8 1/3200s ISO1000 117mm
「α9」と「FE 70-200mm F2.8 GMO SS」の組み合わせは、その時の躍動を止めることなく写真に写し取っていく。しかも、ボケという表現をしながら。
※この記事はコマーシャル・フォト2017年10月号から転載しています。
湯浅立志 Tatushi Yuasa
1981年東京写真専門学校卒業。広告写真スタジオの社員カメラマンとして15年勤務。独立後は雑誌、広告、WEB媒体でモデル撮影から商品撮影まで幅広く活動。2004年(有)Y2設立。日本広告写真家協会会員。「ADOBE PHOTOSHOP LIGHTROOM 2 ハンドブック」(コマーシャル・フォト2008年10月号付録)を始め、デジタルフォトに関する原稿執筆多数。 http://tatsphoto.air-nifty.com/
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