2018年05月16日
前回行なったスペックの機能検証を踏まえ、高画素ミラーレス一眼、ソニー「α7R lll」のスタジオ撮影を想定した実写テストで本機の魅力にさらに迫る。
Test 1 画質の検証
空気感まで写し撮るαの実力
ストロボを使用してのポートレイト撮影。レンズは「FE 85mm F1.4 GM」を使用。絞りはF1.4の解放。カメラ上からオパライトを1灯(プロフォトの「Softlight Reflector White」を使用)と、背景のグラデーション用に1灯の、計2灯での撮影。
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レンズ:FE 85mm F1.4 GM 1/125s f1.4 ISO100
モデル:Julien Nettersheim ST:中薗亜矢(WiZ) HM:関 大輔(WiZ)
瞳AFの精度
少ない灯数での撮影のため、環境光は非常に暗い。(カメラ上のオパライトも、グリッドと、ディフューザーを装着させ、なおかつ光が回りすぎないようにライト下部をフラッグでカット)。このような状況下でも、「瞳AF」はモデルの瞳を検出してくれた。うつむいたり、手で顔の半分を隠しても、しっかりと瞳を捉え続けてくれる「瞳AF」。一度使ったら最後、ポートレイト撮影ではなくてはならない存在となる。
ダイナミックレンジの広さ
フォーカスの性能も勿論であるが、描写性能も優れている。16bit画像処理からの14bit RAW出力対応により、向かって左側シャドー部の瞳のデータも残っている。背景のグラデーションの境目にもトーンジャンプなどが起こらず、ダイナミックレンジの広さを伺い知ることができる。
ボケ味の良さ・肌色再現性
F1.4の解放での撮影でも、ボケのきいた箇所に色にじみが発生することがなかった。フォトグラファーの意図を見事に反映してくれる「α7R lll」。モデルの個性や、場の雰囲気をさりげなく切り取り、空気感をしっかり写し出してくれる、頼もしいパートナーだ。
Test 2 高速性能の検証
機動力を備えた高画素機
最高約10コマ/秒の高速連写対応となった「α7R lll」。ストロボ撮影時においても、その性能を活かすことが可能だ。ストロボは世界最速のプロフォト「Pro-10」を使用。レンズは、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」を使用。高速性能を発揮する土台は整った。
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レンズ:FE 70-200mm F2.8 GM OSS 1/200s f5.6 ISO400
モデル:Julien Nettersheim ST:中薗亜矢(WiZ) HM:関 大輔(WiZ)
瞳AFの追従性
フォーカスモードはコンティニュアスAF。フォーカスエリアはワイドに設定。回転しながらコートの裾を翻すモデルを高速連写で撮影。有効画素数4240万画素の高画素機にしては、小気味好くシャッターを切ることができた。「瞳AF」も黒いコートに迷うことなく、瞳にフォーカスを合わせ続けてくれ、撮影のテンポもまずまず良好である。高速性能、操作性の向上により、「α7R ll」のウィークポイントをほぼ改善してきており、実用性は申し分ない。
注意したい点は、やはり高画素機であるため、「α9」ほどの超高速性能は発揮できないということ。「瞳AF」も、「α9」に比べるとやや追随性能が落ちているような気がしないでもない。それでも「α7R lll」も充分に追随するのであるが。
α7R lll 瞳AF
α7R ll 瞳AF
プロフォト製品とのマッチング
RAW+JPEG設定で連続撮影する際はUHS-ll対応のSDカードの使用をおすすめしたい。リサイクルタイムの速い、プロフォト「Pro-10」との組み合わせにより、一層のパフォーマンスの発揮が期待できる。
α7R lllとプロフォトPro-10 0.02~0.7秒の高速リサイクルタイムを誇るプロフォト「Pro-10」。ライトシェーピングツールも充実しており、メインライトには、「Giant Reflector 240」を使用。硬すぎず、ほどよいコントラストでモデルの立体感を演出してくれた。
秒間10コマの実力
Test 3 質感再現と「ピクセルシフトマルチ撮影」の実力
微細な質感再現に長けたRの底力
金属・植物・木材・布といったさまざまな質感を持つマテリアルを1枚の写真に写し込む。レンズは「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」を使用。有効画素数4240万画素以上の質感再現性には目を見張るものがある。アクセサリーの硬度、透明度。植物の繊細さ。木材の温もり。布のざらつき。など五感に訴えてくるような、表現性能は、他社高画素機の追随を許さないのではないだろうか。
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レンズ:FE 90mm F2.8 Macro G OSS 1/13s f11 ISO100
ST:鈴木俊哉(BOOK.inc)
画質の性能
金属の冷たさ、透明感、硬さ、などといったそのものの本質が伝わってくる画質性能は、高画質といった表現を飛び越え、質感再現性能というフレーズが適している。G MASTERレンズとの組み合わせ
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上記写真は「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」を使用した作例。口径食の発生を抑え、点光源も美しく再現できるレンズとの組み合わせは、質感再現性だけでなく、ボケ味を活かした空気感ある表現にも適している。
ピクセルシフトマルチ撮影の効果
さらに「α7R lll」から、イメージセンサーを1画素ずつずらして計4枚の画像を撮影し、解像感の優れた1枚の画像を生成する「ピクセルシフトマルチ撮影」機能を搭載。この機能により、被写体が持つ、感触、湿感、温度まで写し込んでくれる。4枚撮影時に、各画素でR・G・Bの全色情報を取得してくれるため、偽色の発生を最小限に抑えつつ、より忠実な色再現性も実現可能となる。飽和しやすい赤や、表現しづらいゴールドなどの色味を持ち合わせる被写体の撮影にも、積極的に使用を試みたい機能だ。4枚撮影した後、専用のソフトウェア「Viewer」で約1億6960万画素分のデータから、約4240万画素(7952×5340)を生成してくれるので、ハンドリングもしやすい。
ピクセルシフトマルチなし
ピクセルシフトマルチあり
ガラスの盤面越しの数字も、ピクセルシフトマルチ撮影機能で撮影することより、輪郭がよりシャープになる。ハイライト部のデータも持ち上がり、画像全体に重厚感が生まれてくる感覚だ。
高精細な表現に長けた「α7R lll」。超高速性能を備え持つ「α9」。αの進化にはこれからも目が離せない。シーンや、被写体により機種を使い分けることで、写真表現における新たな価値を創造してくれるだろう。αシリーズの今後にますます目が離せない。
1977年生まれ。2000年中央大学文学部卒業。2007年凸版印刷入社。トッパンアイデアセンターフォトクリエイティブ部所属。コマーシャルフォトを中心に活動中。静止画のみならず、動画制作も手がける。
※この記事はコマーシャル・フォト2018年2月号から転載しています。
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