2020年01月09日
DaVinci Resolveのコラボレーションモードによる共同作業で効率化
2019年10月〜12月にTBS系で放映されたドラマ「左ききのエレン」(毎日放送制作)。漫画家かっぴーによる同名漫画を原作とした実写版である同作は、グレーディングにDaVinci Resolve Studioが使用された。グレーディングを担当した株式会社デジタル・ガーデンでは、2人のメインカラリスト、石山将弘氏および芳賀脩氏がDaVinci Resolve Advanced PanelおよびMini Panel、ならびにMicro Panelを使用し、DaVinci Resolveのコラボレーティブ・ワークフローによって効率的に作業を行なった。
石山氏と芳賀氏は、過去と現在の異なる時間軸のシーンをそれぞれが担当。カット数も多くタイトなスケジュールの中、DaVinci Resolveを使った共同作業により、難しいグレーディングをこなすことに成功した。
デジタル・ガーデンはCM作品のグレーディングが多く、「左ききのエレン」のようなドラマ作品を手がけることは稀である。普段はCMの撮影を手がけるカメラマン・吉田明義氏は、CMと同等のクオリティでドラマ作品を作りたいと、同社にグレーディングを依頼した。吉田氏はシーンによってトーン分けしたい要望があり、画角も過去のシーンは4:3で、現在のシーンでは2:1で撮影していた。そこで石山氏がドラマの現在の時間軸のシーンを、芳賀氏が過去のシーンを担当し、それぞれ違ったトーンを作り出した。
「私が担当した現在の部分は、オフィス内のシーンが多く、リアリティがありつつ、暗部がしっかりある世界観を作り上げました。カメラマンが美術など総合的にこだわっている方なので、美術のクオリティも素晴らしく、なるべく素材の良さを生かして、上質なトーンを作るようにしました」(石山氏)
「過去のシーンは楽しかった思い出として、現在のシーンと対比するような、より明るく色がたくさんあるようなパステルトーンで仕上げました。目の白眼の部分だけ明るくするなど、Power Windowを細かく切ったりキーを抜いたり、1カットでもかなり細かく調整しました。たまに現場で作業する場合はDaVinci Resolve Mini PanelやMicro Panelを使うことがありますが、普段はAdvanced Panelを使って作業をしています。パネルを使うことによって直感的にすばやく作業できるので、これがないとグレーディングできない、と言ってもいいくらいです」(芳賀氏)
「Advanced Panelを使うことでグレーディングのスピード感は変わってきますが、Mini PanelやMicro Panelでも、トラックボールを触った感じはAdvanced Panelと変わりません」と石山氏は付け加える。
本作のような連続ドラマでは、試写を含め1話につき3日間の作業時間が必要となる。そのため、タイトなスケジュールの中、いかに効率的に作業を行なうかが重要視されていた。そこで同社はDaVinci Resolveのコラボレーションモードで共同作業を行なったという。
「マッチングだけでも1話100カット以上あるので、メインのカラリストがベースのルックを作った後にアシスタントがMini PanelやMicro Panelでそのルックを全ショットに割り当てていく作業をしました」(石山氏)
ドラマの試写中には、石山氏がAdvanced Panelを使って再生し、その間にカメラマンやディレクターから出た意見をアシスタントがDaVinci Resolve Mini PanelやMicro Panelで修正しておく。そのため試写の終わる頃には修正作業が終わっているのだ。
「今回のワークフローのメリットは3つあります。営業的な観点から、ドラマのような長尺ものの仕事が入った場合でも、部屋の稼働率を上げられることがメリットの1つです。2つめは、カラリストがクリエイティブな作業に集中できること。3つめは、アシスタントがクライアントやメインのカラリストが同席する中、実践で学べる点です」(石山氏)
ドラマ「左ききのエレン」は2019年10月〜12月に毎日放送・TBS系にて放映。高校時代、運命的に出会った朝倉光一と山岸エレン。才能の限界に苦しみながら大手広告代理店のデザイナーとして働く光一と、気鋭の画家としてNYを拠点に活動するが、圧倒的な才能に恵まれたゆえの孤独や苦悩を抱えるエレンの2人を軸に物語は進む。実際に広告代理店でアートディレクターとして働き、才能の限界を感じ転職したという原作者の経験をもとに、アートや広告業界の人々、そして現場の様子がリアルに描かれる。光一役を神尾楓珠、エレン役を池田エライザが務めた。
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